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55:母の交渉

 申し訳ありません。文面グダグダです(謝)

「ほぉ……新しい化粧品のCMモデルですか」

「うん、けどさぁ……中々イメージするようなモデルの子がいなかったわけ」


 皆が泊まる事を前提に、母を含めて晩酌中。現在の話題は、母が経営している化粧品会社の新製品について。


「という事は、見つかったわけですね?」

「そうなのよリリナちゃん!考えてみたら、わざわざモデルの子の中から探す必要なんてないじゃない?ちょっ〜と視野を変えてみたら、見つけたのよ!」


 なんともテンションの高い母。よほど嬉しかったんだろうな。


「へぇ、どんな人なんだろ?」

「どんなって、目の前に居るじゃない!ねぇ、獅子神ちゃん?」

「ぶふぁっ!?」


 事前通告無しだったんだな。派手に古酒(泡盛)を噴き出してるし。


「な、なんすかいきなり!?」

「え?言ってなかったっけ??」

「聞いてないっすよ!」

「まぁまぁいいじゃん!でさ、やってみない?CMモデル!!」

「ケホッ、ゴホッ、無理無理無理無理!絶っっ対無理です!!」


 獅子神さんの拒絶反応がすげぇ!よっぽど嫌なんだろうな。咳込みながら、ブンブン手ぇ振ってるし。


「えぇ〜、いいじゃん!それなりの《お礼》は弾むよ!?」

「無理ですって!だ、だいたいアタシなんかモデルなんてガラじゃないし、第一モデルってスタイルが良くなきゃ出来ない仕事ですよ!?」

「大丈夫だって!獅子神ちゃんって並のモデルよりスタイル良いし、顔だって美人!なにより私の求める《ワイルド系美人》そのものなのよ!!」


 さて、カーヴ(地下室)での母とリリナさんのような感じで、俺・綾館姉妹・凜は会話の外にいる。ようはほったらかし状態。


「お義母様は仕事熱心でいらっしゃる」

「その《お義母様》はやめれ」

「凜様、お代わりは如何ですか?」

「もらおう」


 あ、やばい!凜は既に酔ってんな。言葉が《気難しそうなオッサン》口調になってる。


「しかし、義母様には悪いが、交渉は難航しそうだな」

「《お》を取れば良いって問題じゃないっつーの。まぁ、多分……軍配は母さんに挙がりますよ」

 母と獅子神さんの様子を交互に見ていた美雪先輩はそう言う。たしかに、獅子神さんは「モデルなんか絶対無理!」の一点張りで、一向に折れる気配を見せてはいない。

 しかしながら、獅子神さんが母に言いくるめられる様子を比較的簡単に想像できたのは、母が交渉に長けた人だということを知っているから。


 俺の話はさておき、それでは母と獅子神さんの様子をご覧いただこう。







「どうしてもダメ?」

「無理です!」

「どーしても〜?」

「ダメです!だいたい、アタシなんかじゃなくても他にいっぱいいるじゃないですか」

「そうは言うけどさ、なんかこう……見えたのよ!《ビジョン》が!」

「びじょん?」


 ビジョンってのは、たしか《画面》とか《映像》って意味だったっけ?


「そう!スクリーンに映し出された獅子神ちゃん、大売れで鳴り止まない出荷要請の電話!」

「で、でもアタシじゃ………」

「もちろん、無理強いはしないけどさ……でも、どうしても私は獅子神ちゃん……いや、紗姫ちゃんにモデルをやってほしいの!」

「……ホントに、アタシなんかにこんなお話をしてもらって、女性としては嬉しいんですが―――」



美雪:「なぁ、やっぱり無理っぽいぞ?」

俺:「これくらいで諦めるような人じゃないですって」



「そっかぁ……じゃ、この新製品のCMは無かったことになるなぁ……」

「え?でも、アタシ以外のモデルさんを起用してCMを作るんじゃ……」

「ダメなのよ、私は化粧品の口紅一本作るのもCMを一本作るのも、常に全力でいたいの!常に納得したものを作りたいのよ!私が獅子神ちゃんを化粧品モデルに起用したいのは、私が貴女なら納得出来るCMを作れる、私が作った化粧品を1番使いこなしてくれると思ったからなの……」



美雪:「これは……私なら一も二もなく引き受けるだろうな。ヤンキー女も、ぐらついてるみたいだ」

俺:「母は仕事熱心ですからね。でも、まだまだ押してくるはずですよ」



「でも、ダメね……私は、納得出来ないと世には出さないの。このままだと、CMも新製品も、世には出せないわ……」

「そんなっ……」

「社運を賭けた商品だったんだけど、このままじゃ社員にお給料も払えなくなるかもしれないわね……」



美雪:「これは―――」

俺:「何も言わないで下さい。言わんとする事は把握出来てますので……」


 母、最後の作戦………それは《脅迫》。手段を選ばないところは、我が親ながら恥ずかしい!!



「社員のために妥協するべきだとは思うの。適当に宣伝して、可も不可もない売り上げさえ出してれば、たしかに会社はやっていける。けど、それじゃ私のプライドが許さないのよ!私は私が納得出来なきゃ、何も世には出したくないの……」

「………」

「あ、アハハ!ごめんね暗い話して、ホントに、獅子神ちゃんに化粧品モデルをやって欲しかったんだけどなぁ……でも、叶わないか。でも仕方ないよね、無理強いはいけないもの……あーぁ、これで明日から皆路頭に迷うはめになるなぁ……」



美雪:「エグい……」

俺:「恥ずかしい……」



「わ、わかりました!!」

「え?」

「ア、アタシなんかにそこまで期待をしてくれるのであれば、不肖、獅子神紗姫!ど素人ですが、菜々子さんのお役に立てるよう頑張ります!!」

「ホントに?CMに出てくれる?化粧品モデルをやってくれるの?」

「アタシも妥協なんて言葉は嫌いだし、口にした以上は引っ込めるわけにはいかねぇ……CMだろうがモデルだろうが、全力でやらせてもらいます!!」

「いやっほーい!ありがとう獅子神ちゃん!!」



美雪・俺:「「堕ちたな」」




 交渉は成立したようだが、息子(俺)の前で“出演料”とか“契約金”とか、リアルな《お金》の話はやめてくれ。


 あれ?そういや凜とリリナさんは―――


「ユキ、凜様はダウンされたようなので、お部屋のほうまでお運びしておきました」

「何から何まですみません!そういや、凜はどのくらい飲んでたんすか?」

「えぇと……“ドン・ペリニョン”が一瓶と、“灘の白鷹”を冷で5杯くらいでしょうか?」


 げっ!あいつ(凜)飲み過ぎ!!

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