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47:最後のお泊り

夏休み海編の三日目です。最後のほうは、ちょっぴりシリアスです。

昨晩、あまりにも“刺激的”な女性陣のお姿を目にしたせいで、なかなか寝付けなかった男性陣一同。

俺自身、意識が遠のく前に目にした時間が、午前3時あたり。つまり、それ以後に眠りについたことになるわけで…


「――んぅ…」


ようやく目が覚めたのは、昼前の11時過ぎ…。おそらくだが、こんなに遅くまで起きていた…また、起きたのは初めてだ。

まだ寝足りないのは事実だが、かといって一日の時間には限りがある。早々にベッドから上体を起こし、大きく伸び。


コンコン!


と、規則的なノックが来訪者を告げている。


「…どうぞ」

「おはようユキ!…ん、どうした?」


来訪者は美雪先輩だった。というか、昨晩の今日である…あまりにも刺激的なお姿を目撃した手前、面と向かって顔を見る事が出来ない。


「あ、あ〜いやぁ…」

「?」


本人(美雪先輩)に自覚無しってのも、どうかと思う。現に俺は、その…は、裸を見たわけだし、み、見られたんだし…。


「ふむ、今日は男連中の寝起きが悪いのだ。ユキ、理由はわかるか?」

「あ、い、いや…」


い、言えねぇ…。


「まぁおそらく、昨日の温泉でのことだろう。たかが裸を見たくらいでなんとも不甲斐ない!…で、ユキよ…」

「な、なんすか?」

「見たいのなら遠慮なく言え!ほれ、見「出てけアホ痴女っ!!」


この女…知っててわざとからかいやがったな…。











変態痴女(美雪先輩)を部屋から追い出し、さっさと着替えを済ませて食堂(?)ヘ。


「おはようございますユキ」

「…お、おはようございますリリナさん」

「?…ふふ、私に何か付いてますか?」

「あ、いや…」


年上の“余裕”ってやつだろう。リリナさんはおそらく、俺の態度で察したようだ。


「目の保養になりましたか?」

「はい…あ、いやっ!?」

「ふふ、素直ですねユキは」


あしらい方も、流石でございます…。


さて、遅めの朝食とも早めの昼食ともいえる食事を堪能した俺。今日で綾館家の別荘に来て3日目。明日で帰ることになると、なんだか寂しい気持ちもある。


「相澤、おはよっ!」


どふっ!


「おわっ!お、おはようございます獅子神さん」

「どした?感慨深い顔して…あ、さては昨日のアタシの姿を思い出して、下半身おったてやがったか?」

「ち、違いますって!ってか下ネタ反対!!」

「んだよツレねぇなぁ」


ったく…。いきなり抱き着いてきて言うことそれかよ。


「今からサーフィンやんだけど相澤も来ないか?」

「ああ、いいっすけど…やった事ないっすよ」

「大丈夫大丈夫!既にメンバー集まってるし!!」


何が大丈夫なんだろうか?とはいえ、メンバーが揃ってるなら早く支度をせねば…。











「遅いぞユキ!待ちくたびれた!!」


昨日の今日で、ビキニ姿は目の毒だよ美雪先輩…。


「ふふ、サーフィンですか」


う、うーむ…。首からすねあたりまでのピッチリとした競泳水着姿のリリナさん。露出はほとんど無いのに、な、なんかエロい…。


「さぁって相澤も来た事だし、早速行くぞぉっ!!」


テンションの高い獅子神さんは、リリナさんとは違うタイプの競泳水着姿。スラッと伸びた足が艶めかしい…。

というより、なんで女性陣は美人ばっかりなんだろうか?


「…由希、寝不足か?」

「人のことは言えんだろ。クマがひどいぞ」


男性陣三人の中で一番の美形である河南だが、俺と同様に寝不足の疲れが目の下にクマとして浮き上がっている。


「そういや、結城は一緒じゃないんだな」

「…昨日の“アレ”以来、変態扱いだよ…」


ま、結城は普段から「破廉恥反対!」って言ってたからな。それに、昨日の壁大破の責任の一端は、河南だし。


「それにしたって…」

「あぁ…」


テンションの高い女性陣(美雪先輩・リリナさん・獅子神さん)をよそに、俺と河南は低いテンションのまま…


「「はぁ…」」


ため息を吐いた。











「ち、ちょっと待っ!あぶっ!?」


バッシャァーァン!!


「アッハッハ!だらしねぇーぞ相澤っ!!」


俺…サーフィンって聞いたはずなんだけど。


「ま、待ってリリおぶぁっ!?」


バッシャァーァン!!!!


「ふふ、ふふふ…」


リリナさんがドS化してる!?


さっきも言ったが、俺らはサーフィンをしに海に出てるはずだ。しかし、まともにサーフィンをやってるのは―――


「如月、もっと重心を前に傾けるんだ!」

「り、了解っと…うわわっ!?」

「湊、上手いぞ!」

「………」


美雪先輩を含め、如月と湊の3人。ちなみに健一は未だに部屋で爆睡中。凜はマイペースに―――


「獲った」


昨日、獅子神さんの使っていた一本銛で、一人、漁に勤しんでいた。ってかデケェなあの魚!!

結城に到っては―――


「釣りとは孤独な趣味なのだにゃ!」


という言葉を残し、別荘に到着した当日から気になっていたという潮通しの良い岩地で釣りをしてる。


…で、話は戻る。俺と河南はサーフィンと聞いて海に出たのだが、用意されていたのは水上バイクが2台と、足場を固定するタイプのボードが2つ。

いや〜な予感がしたんだが、そういう時の予感ってのは、大概は当たるもの。

俺と河南がやっているスポーツってのが、ボートとかで引っ張ってもらう“ウェイクボード”ってやつだった。


「相澤、もう一本行くぞっ!」

「う、うぃーす…」


「河南さん、もう一度いきましょう!」

「は、はぃ…」


小型船舶免許持ちの獅子神さんとリリナさんは、水上バイクで俺と河南を喜々として引きずり回す。

持ち手を離さないように踏ん張るだけでは足元が疎かになるし、なかなかハード。しかしながら、何回も経験を積み重ねれば、何とかなるというものだ。

波・スピード・重心をキチンと頭の中で計算し、後は馴れ…。


「っとと!」

「っは、上手くなったじゃん!まだまだへっぴり腰だけど」

「そりゃどうも…うわっと!?」

「気ぃ抜いてんじゃねーぞ!アッハハハ!!」


ちょっと誉められて、テンションが上がった瞬間、集中が途切れて海中ヘダーイブ!!

その後、俺も河南もコツがつかめたので、日が暮れるまで楽しんだ。











「なんで起こしてくれなかったんだよぉ…う゛わあぁぁん!」

「泣くなバカ!うっさい!!」

「同感だ」

「だっでだっで!秋斗とユキは、女の子達とイチャイチャじでだんだろぉ!?俺も混ぜろよぉ〜!!」


イラッときたのは、どうやら河南もらしい。目で合図したら、無言で頷いた。


「「逝ってこい!!」」


ドカッ!バキッ!!


「ぶべらぎゃ!?!?」


ふぅ、幾分かスッキリした!


さて、バカ健一も砂に埋もれた事だし、リリナさんの美味しい夕食でもいただこうかな。











スパイスからこだわった、リリナさんの特製カレー。辛いけど美味いから、ついついおかわり3杯目。やっぱ夏はカレーだな!

んで、凜が獲ったお魚は豪快に網焼きと刺身に。つか、兄の面目を潰さんばかりの大物ばっかだよ。

空気読め…。


食後、すっかり闇一色となった砂浜で花火大会。

赤・白・黄色・青・緑…。鮮やかな火花が、闇を明るく照らす。はしゃぐ健一や如月、二人で仲良く線香花火をする河南・結城、なぜか仲の良い凜と湊は、ロケット花火を打ち上げ、俺はのんびりと浜辺で、みんなを眺めていた。


「ユキ、お前は混ざらんのか?」

「…ええ。なんか昼に遊び過ぎたみたいで、ちょっと疲れてるから」


リリナさんお手製の果汁百パーのジュースを手に、美雪先輩がやって来た。

Tシャツにハーフパンツとラフな恰好だが、美人は役得。何を着ても似合うもんだ。


「…明日で、終わりなんすね」

「そうだな…楽しんでもらえたか?」

「ええ、とても…」

「それはなによりだ。私も嬉しいぞ!」


ホントに、美雪先輩は純粋な笑みを浮かべてくれる。飾り立てられた、貼付けられたような上辺だけの笑みじゃなくて、心からの笑顔を…。


「何を感慨深い顔をしてるんだ?」

「…さあ。自分でも、よくわかんないっす」

「なんだそれは?」


こうやって大勢でワイワイやりながら同じ時間を過ごすというのは、ホントに楽しい。だからこそ、明日でこの旅行が終わってしまうと思えば、なんとも寂しく感じてしまうのかもしれない。「わかんない」なんて言葉を濁らせたのは、気恥ずかしさからくる、自分なりの照れ隠しなんだろう…。


「明日からは、また普通の夏休みに戻るな…」

「…寂しいですね」

「…そうだな。だが、何も変わらない。皆で一緒に遊んだ事も、こうしてユキと話している事も、消える事の無い事実だ。たとえこの先、進学や就職で離れ離れになろうとも、私達が同じ時間を共に過ごしたという事実は変わらない。私はずっと忘れないさ―――」

「…そうですね」


きっと、俺の気持ちを察してくれたんだろう。寂しいと感じている自分を、慰めてくれるんじゃない…背中を押してくれるような、そんな温かい言葉―――。




ドーンッ!


「うおっ!?」

「ふふ、今夜一番のサプライズだ」


響く轟音と、夜の闇に咲いた大輪の花…。


「綺麗ですね」

「ああ」


砂浜に座り、どちらともなく縮めた距離は、肩と肩が触れそうで…。


「……」

「美雪先輩?」

「今だけ…今だけは、何も言わないでくれ―――」


ただ、それだけ言った美雪先輩は…静かに掌を俺に重ね、肩に頭を預けた…。






意識なんてしてない、俺に恋愛感情なんて無いはずなのに……美雪先輩の横顔を見た瞬間、俺の鼓動は速くなっていた―――

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