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42:海で夕食といったら?

あ?なんか後頭部がふゃ〜んとした柔らかな“何か”に包まれ………そういや俺、たしかビーチバレーの最中に美雪先輩の殺人的スパイクをまともに喰らって――――


「…ぅ…」

「お、気付いたかユキィ〜!良かった!ホントに良かった!!」


目を開ければ、泣きそうな美雪先輩の顔が俺を覗き込むような…………あ、あれ?なんか体勢がおかしくない?ってか近っ!?


「おわっ!?」


ぷにょん♪


慌てて起き上がろうとした俺と、さらに俺の顔を覗き込もうとした美雪先輩が、接触。なんとも心地良い感触が顔面を覆ったのだが、これってまさか―――!?


「いやん!ユキのえっちぃ♪」

「うわぁぁ!ち、違っ!!ふ、不可抗力!!けしてわざとじゃ!!!!」


―――美雪先輩の豊かなむ、胸が当たっていたわけで――――


「あらあら」

「ユキ、大胆」

「羨ましい!羨やまし過ぎるぜ親友っ!!」

「あーぁ」

「皐月、お、俺も膝枕………」

「ハレンチNGにゃ!」

「………チッ」

「……(いいなぁ)…」


ギャラリーからは生温かい視線と様々な反応を頂戴した…。


「ふふん!ユキの顔が真っ赤だ。私の胸も、まんざらでもなかろう?もっと触ってみるか?ん?」


こんな状況でも、誰も俺に救いのフォローを差し出してはくれない…。

俺、一から友達作り直そうかなぁ――――











日はすっかり傾いていた。2、3時間くらい意識を飛ばしていた俺は、その間ずっと美雪先輩の膝枕で手厚い(過剰)介護を受けていたらしく、美雪先輩が余計な事をしそうになる度に、獅子神さんが咆哮したそうな(リリナさん談)。


長い時間、つきっきりで介抱してくれた美雪先輩に申し訳なさと嬉しさを覚えつつ、危うく“R指定”になりそうな美雪先輩の行動を止めてくれた獅子神さんにも、後でお礼を言っとくべきだな。




夏休み、海といえば――――


「やっぱバーベキューだな!」

「うむ、ベタではあるが一番盛り上がるのは、やはりバーベキューだ!!」


獅子神さんと美雪先輩って、普段は口論が絶えない仲なのに、時々妙にうまが合うんだよな……似た者同士っやつか?


「………うぅ……」

「リリナお姉様、どうしたの?」

「せっかく大勢なのに、腕を振るえなかったんですぅ………」


ああ、やっぱリリナさんは根っからのメイド気質なんだな。色々と今日のために材料用意してたっぽいが、結果バーベキューだし。ただ焼くだけだもんな。


「リリナお姉様、私アイスが食べたいわ」


うおぃ凜!リリナさん傷心だから!こんな時に女帝ぶりを発揮しないで!!


「でしたら!私腕によりをかけて作ります!」

「出来ればフルーツたっぷりのシャーベット系」

「お任せ下さい!このリリナ・F・ナイトロードに不可能はございません!!」

「お任せするわ」

「はいっ!」


おぉ!こんな時に凜の我が儘が使えるとは!

リリナさんの表情が一気に明るくなったし、喜々として巨大クーラーボックスから果物いっぱい取り出してる。

ま、今日はアイス作りで我慢してもらうとして、明日は目一杯、リリナさんに腕を振るってもらおう。


なんか最近、リリナさんに対する甘え癖が出てんな俺達兄妹………。


「あ、それは俺の肉だっ!」

「早い者勝ちだバーカ。皐月、ほら早く食わないとなくなるぞ」

「アッキーは過保護にゃ〜!」


バカとバカップルは相変わらずで――――


「……………」


ひょいっ!


「え、えーっと奏?」

「…………」


ひょいひょいっ!


「な、なんでお肉ばっか私の皿に乗せんの?」

「……“ない”……」


たった一言だが、湊は同時に如月のある“部位”を指差した。


「なっ!なっ!?き、気にしてるのにっ!!」

「……適度な運動…と、脂肪……バストアップ…」


ああ、胸か………たしかにペッタンコだもんな、如月は――――


「あんた、今、何考えた?」

「い、いや何も――」


危ねぇ……口にしなくてよかった!


「……誰かに、揉んでもらうのが……手っ取り早い………私が……揉む?」

「いいいいいや!遠慮するっ!!」

「…そう……残念……」


ノーマルだもんな如月は。アブノーマルな湊の行動が、よほど怖かったらしい。まぁ俺が同じ立場でも如月と同様に、だろうな。




ふぃー食った食った!満腹だ。

その後はバーベキューも終わり、花火は翌日しようという事になった(三泊四日の予定)ので、各自風呂ヘ。先に言っておくが、俺は健一のように風呂を覗く趣味はない!ま、まぁ勿論興味がないというわけじゃないが……。


ちなみに風呂は馬鹿でかい露天風呂で、急拵え的な仕切りで、男・女に分かれている。

となると当然………


「塀の向こうはパラダイス!いやっほーー!!」


健一がバカ丸出しで出撃。結果は先が読めていたが案の定―――


「貴様のようなバカに皐月の裸を見られてたまるかっ!」


ブスッ!


「みぎゃああぁぁぁあっ!!!!目が!目がああぁぁぁあっ!?!?!?」


あーぁ、言わんこっちゃない。


「由希……お前も覗きなんてするはずないよな…………?」

「も、勿論だ!バカと一緒にすんな!!」


目ぇ据わってる河南が怖ぇ……。


なんて恐怖に怯えている俺を余所に―――




「なんか向こう騒がしくないか?」

「まぁだいたいの見当はつくけど………」

「…………」

「にゃ?」

「アッハハハ!男はバカだかんなぁ!!」

「まぁそういう所も可愛いのですけどね?」


塀の隣からは、女性陣の暢気な声が聞こえていた。

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