41:バレーボールが凶器に変わる!
「悪い!待たせ………」
別荘前のビーチには、俺以外のメンバー全員が揃っていたんだが―――
「おっせーぞっ相澤!」
「どうだユキ!お前好みのスタイルを自負してるだけのことはあるだろう?」
う、うぅむ………。
獅子神さんはオレンジの、美雪先輩は黒地に赤いハイビスカスの刺繍の入ったビキニ姿……。
「にゃ?アッキー真っ赤っ赤にゃ!」
「お、お前!露出し過ぎだっ!!」
「うにゃ!?アッキーえっちにゃ〜!!」
おーぉバカップル。結城はピンクのビキニでパレオ(腰巻き)付き。河南はサンライト・イエローのハーフパンツ。
「ち、ちょっとくっつき過ぎじゃない!?」
「………………ふふ」
湊に密着されて引き攣った表情が継続中の如月は藍色の競泳水着、ポーカーフェイスの百合っ娘湊は、胸元に白い羽根の刺繍をあしらった青いビキニ。ちなみに如月とは対称的に、嬉しそう…………。
「水着の女の子がいっぱい………ふふ……」
り、凜………お前まさか………。スクミズ姿の我が妹君は女性陣を一望し、ご満悦の表情。
「ふふ、私も満更ではないでしょう?」
う、うぉっ!!??
真打ち登場とでもいうべきか、リリナさんの格好は黒・グレー・白と一見して地味そうな配色でありながら、日頃はメイド服姿で徹底ガードされた肌を惜し気もなく披露した、まさかの紐ビキニ!つか、む、胸が…………でけぇ!!
「お、俺は………今日ほど神様に感謝したことはない!神様ありがとぉーーっっ!!!!」
バカ健一、周りの目を見てみろよ………。
「な、なんかあいつ目が正気じゃねぇ………」
「うーむ、いくらユキの学友とはいえ………」
「キモッ!」
「にゃ!?ケーチ(健一)が怖いにゃ!!」
「…………(ブルブル)……」
「ユキ、お友達も選んだほうがよろしいかと……」
女性陣の健一を見る目が、変態を見るような感じになってる。
「あの野郎………皐月を変な目で見てやがる……“狩る”か―――」
河南やめて!スプラッタ(血まみれ)になったら“R(指定)”が付いちまう!!ただでさえ美雪先輩の言動が“R―15”ギリギリなのに!
◇
「…………………」
さて、バカ(健一)は砂に埋めたし、これでスプラッタな事にならないで済むだろ。
ただ、まぁ……
「ユキ、早くこいっ!」
「んだ?アタシに見惚れたか?アッハハハ!」
ビーチバレーをしようって事になったわけだが、男は俺を含めて河南と二人。女子率高しで、目のやり場に困る………。
「お゛、俺をわ゛ずれるなぁ………」
ちっ、結構深く埋めたつもりだったんだがな。早くも復活しやがった。
「ユキは私とペアだなっ!」
「なんでそうなる?ここはアタシとペアだろ!」
………お?もしかして、俺モテてる!?
「美雪、ここは公平にユキに聞いてみればいかがですか?」
うおぃ!一番プレッシャーな言葉キター!!
リリナさん余計なことを………って、なんでニヤニヤしてんの!?まさかSに目覚めたとかっ!?!?
「ユキ、当然嫁である私を選ぶよな?」
「はぁ?やっぱ大人の色気漂うアタシを選ぶだろ!なっ、相澤!!」
「間をとって私とペアを組んでみてはいかがですか?」
余計な火種を増やさないでリリナさんっ!!!!
結局、公平なじゃんけんの結果、俺は獅子神さんとペアに。美雪先輩はリリナさんとペア。他は河南・結城ペア、湊・凜ペアになって…………
「この際如月でもいいっ!!」
「こっちは願い下げだ変態があぁっっ!!!!」
どごぉっ!!!!
「あびゃあぁーーーっっ!!??」
「へぇ、きれいな左上段蹴りだ!」
うん、そんな情報要らないよ獅子神さん。
頭から砂にダイブした健一はほっとくとして、如月は審判に。既にネットも張ってあるという用意の良さに感心しつつ、遊びだと思っていたビーチバレーは始まった。
⇒
「いっくにゃー!」
ドフッ!
「甘い。お姉様」
「………(コクッ)」
「……それ」
ドガァッ!!
「うぉっ!」
俺にとって、ビーチバレーというのは“楽しみながら”するスポーツであって、ポンッ!と弾むビニール製のボールが破裂せんばかりの音をあげて飛び交うものじゃないと思う。
既にボールは三つ目、前の二つは衝撃に耐え切れず破裂した。
どうやら俺の周りの女子って、腕力も男以上のようだ………。
湊・凜ペア対河南・結城ペアの試合(死合)を傍観している俺だが、既にやる気は失せている。
結果だけ説明しておく。凜の空手仕込みのアタックが河南の前頭部に直撃し、試合続行不可。
河南、すまねぇ!!
「いよっし!いくぞ相澤!!」
「へいへい………」
「んだよやる気ねぇなぁ……こ〜んな美人のお姉さんがペアなんだぜぇ?まちっとやる気だそうぜ!」
ち、ちょっと!あんま密着し、む、胸がっ!?胸が当たって!!
「貴様ぁ!ユキに色気を使うなぁっっ!!」
「ヘっヘ〜ん!恨むならじゃんけんで負けた事を恨めよ〜!!」
「ぬあぁ〜〜〜!!!!絶っっ対負けん!!!!!!」
売り言葉に買い言葉ってやつだ……年齢にそぐわない幼稚な口喧嘩。そ、それよりもいい加減に離れて獅子神さん!
「死ねヤンキー女あぁぁっっ!!!!」
ドゴオォォォォオン!!!!
「ぬるいぜ生意気女!っと相澤ぁ!!」
「おっと!」
「よっしナイストス!喰らえやあぁぁぁああっ!!」
チュドオォォォォオンッッ!!!!
もうバレーじゃねぇ!!ボールを叩く音が!音が!!砲撃並じゃねぇかっ!!!!
さっきの湊ペア対河南ペアの比じゃねぇし!こんなのまともに喰らったらタダじゃ済まねえし!!!!
ドゴオォァァァア!!
「相澤危ねぇっ!!」
「え?ぐあぁっ!?!?!?」
あぁ…………河南もきっと、こんな感じで意識を飛ばしたんだろうなぁ………なんて考えながら、俺も真っ白になった視界の中に意識を飛ばしていた―――――――――