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34:凶刃紅雨を降らす……

内容がシリアスになってきました。ちょっとコメディ要素が減ってきます。

今回はユキ→獅子神→ユキの視点です。では、どぞ!

俺が不良連中から奪取した角材(木製)を振り回しながら、チラッと美雪先輩に目を向ければ、メットをガンガンと振り回し、連中をバッタバタと薙ぎ倒している美雪先輩。

ありゃ頭を保護する為のものであって、武器に使うもんじゃない。

メットの外殻は、ボロボロ。ちょっとばかし血が付着してるのが、見てとれる………。


え、えげつねぇ………。


俺だって角材を木刀代わりに使っちゃいるが、あくまでも防護用である。それでも抵抗してくる相手には、足を狙って一撃!

足っていうのは、人体を支える為に必要不可欠な部位だから、ここさえダメージを与えれば、言わずもがな、戦闘能力は著しく低下するのだ。


「ユキ、大丈夫かっ!?」

「むしろ美雪先輩の周りで屍々累々と化した連中の方が、俺は心配ですがね」

「む?正当防衛だ!」


きっと過剰防衛だと言われてもフォロー出来ないっす。


「さて、後少しですね」

「ヤンキー女は気にくわんが、女一人に多勢で向かっていく連中は、もっと気にくわんな。………不本意だが、助太刀しよう!」


うん、俺は美雪先輩のメット(凶器)攻撃で被害に遭わないように気をつけよう!










「ックク!アッハハハ!!もう終わりかぁ!?」

「く、ぐぅ………」


流石に、素手でエモノ(凶器)を持ってる10人弱の連中を相手にするのは辛ぇ………。とはいえ、あの二人を巻き込んだアタシが、弱みを口には出来ない。

腹に角材からの一撃を受けたのが、結構効いたな。足腰ガクガク、立ってる事すらキツイ………


…………ただ…………


「ハンッ!テメェらの力じゃ、この獅子神の“紗姫”は倒れねぇよ!」

「んだとコラぁ!さっさとくたばれこのアマぁっっ!!!!」

「っっ!!!!」


力任せの拳が空を切った………掴まれた腕、ハゲ野郎が手にしていた鉄パイプは、的確に私の頭上から振り下ろされた……………


ガギィッ!!!!


「……………?」


―――はずだった。


「ダメっすよ、女性に手をあげちゃ!」

「な、テメェはっ!?!?」


金属が、何かとぶつかった、高くもなく低くもない音。痛みを感じない頭。そして、みょうに廃工場に響いた年下の男の声と、驚くハゲの声――――


「ぐぁっ!」

「ぎゃあっ!!」

「ゲフッ!?」

「おふぁっ!?!?」


周りで悲鳴をあげる屍神の連中…………


「大丈夫っすか、獅子神さん?」

「ヤンキー女、助太刀するぞ!!」


閉じた目を開ければ、振り下ろされたはずの鉄パイプは角材に遮られ、私の背後には相澤が、周りで悲鳴をあげ、ピクピクと痙攣しながら地べたに転がる屍々累々の連中の真ん中で、私が貸したメットを振り回す生意気女。


「あぁ!メットがボロボロじゃねぇかっ!!」

「言うに事欠いてそれかよヤンキー女!!!!」


だって買ったばっかしだったんだぜ!?まだ三日も経ってねぇんだよ!!


「………さて、もうあんた独りだけど?まだやりますか?」

「く、くそがぁっ!!」


カランッ!!


今、この場で立っている屍神の残党はハゲ野郎のみ。手にした鉄パイプが地面に接吻し、音を立てた。


「………終わったな」

「ああ。帰りますよ、獅子神さん」


………決着はついた。屍神の思惑とは裏腹に。


「ありがとう、相澤……綾館……」

「む?面と向かっ「まあまあ美雪先輩、さっさと帰りましょ!!」


きっと、相澤は察してくれたんだろうな。今のアタシは照れ臭くて、顔を上げられないことを。嬉しくて、涙が零れてることを…………。


ごしごしと目元を擦りながら、アタシは立ち上がる。会社で着る事務服はボロボロ、空はドシャ降りの雨なのに、心はなぜか、晴れ晴れとしてる。

おおよその確信は無い、が、私を心配してくれている人がいる。憎まれ口を叩きながらも、私を助けてくれた奴がいる。

嬉しい――――


ウーー!!ピーポーピーポー!!


「ゲッ、警察!?」

「リリナ姉様が呼んだのだ。心配する必要は無い!綾館の名を出せば、如何様にも改ざんできる!!」

「「………」」

「な、なんだその目はっ!?」


きっと相澤も私とおんなじ気持ちになったんだろうな。



“これだから金持ちはっ!!!!”



「さて、余計な詮索をされる前に帰りましょうか」

「ああ」

「そうだな」













サイレンの音が徐々に大きくなってくる。ま、美雪先輩絡みならば、大して余計な詮索をされる心配も無いだろうが、やっぱり警察ってのはなぁ………。


「ユキ、帰ろう!」

「ですね。帰りましょう、獅子神さん!」

「うん」


工場を出ようとしたその時、地面に膝をついていたスキンヘッドがいない事に気付いた。

まさか―――――


「獅子神さん危ないっ!!!!」

「えっ――――?」

「ヒ、ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ――――――――!!!!」


ドスッッッッ!!!!





間に合わなかった………けど………


「あ、相澤………?」




獅子神さんが、大丈夫だったから………




「ユキィィィィッッ!!!!!!!!」




ま、いいか――――

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