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31:不快な雨………

サブタイトルはあんまり関係ありません。ちなみに綾館姉妹も出ません。視点は前半が相澤由希、後半が獅子神紗姫となっております。

これといった不運的な要素も無く、学校は終わった。ほら、占いなんて当たらない!!……………なんて思っていた朝の俺、出来るならばぶん殴ってやりたい。そして、素直にリリナ先輩からピンクのリボンを借りればよかった。


今、俺は工場跡地らしき廃屋に居る。何故?俺が聞きたい。俺が把握出来ているのは、鼻につくシンナーの臭い・後頭部を襲うズキズキとした痛み・そして麻縄らしきロープで錆びた柱に括りつけられている、という事だ。


「よぉ、お目覚めか?」


背後から掛かる声は低く、男だという認識は出来た。だが、足音は一つじゃない………金属的な物が地面に擦れる音と共に、複数の足音が、水でべちゃべちゃに濡れた地面を叩く。振り向けないが、恐らく10人以上はいるようだ。


「お前にゃあ怨みは無ぇが、下手に暴れられちゃ困るんでなぁ、少々手荒になっちまったぁ。悪いねぇ」


一人の男が、俺の正面に回りこんでしゃがむ。スキンヘッドに眉無し、唇の端にはピアス、右肩には髑髏の入れ墨………見た目からして、不良だ。


「……あんたは?」

「んぁ?俺ぁ“屍神”の鎌池洋治ってんだ」


“屍神”………さて、どっかで聞いた事があるんだが、何だったかな?


「お前、“獅子神紗姫”って知ってるよなぁ?」

「……まあ……」


獅子神さんっていえば、たしか“走り屋”をやってるって聞いたな。てことは、喧嘩絡みだろうか?


「ほぉ、素直だねぇ……まあこっちとしちゃあ都合はいぃが」

「目的は?俺は獅子神さんとはあんまし面識無いんすが?」


だいたい付き合いも一昨日からだし。

つか、なんとなーく思い出したよ。今日は一日中雨だったから、傘を目深にして帰ってたら、背後からいきなりドンッ!!って殴られたんだよ俺。


「あぁ、まぁそうだろなぁ……つーかぁ面識さえありゃいいんだよ。俺らのチームはあいつらのせいでバラバラになっちまってなぁ……お礼しなきゃ気が済まねぇんだよぉ」

「………なおさら、俺は関係ねぇんじゃ……」

「いやいやぁ、充分役に立つんだよぉ?あの女は義理堅いからなぁ、ちょっとでも関わりのある人間が自分のせいで捕まったとなりゃあ、必ず来るんだよぉ!まぁお前も大人しくしてりゃあ痛い目は見ずに済むからよぉ」


成る程ね。俺は人質か…………げすい考えだ。


「まぁ目ぇつぶってりゃあボコボコにされるあの女を見ずに済むがぁ?耳だけは悲鳴がこびりつくだろうなぁ?」

『ギャハハハハハ!!!!』


下品な笑い………実に耳障りだ。考えはよくわかった、すなわち俺を人質に獅子神さんの動きを封じてボコボコ…………って事だろう。

さて、身動きが取れないうえに、獅子神さんの邪魔になっちまうが…………どうすっか……………あ!


















今日も今日とて平日営業。“あの人”が働いていた鉄工所で、私、獅子神紗姫は事務員として働いていた。主な仕事はコピーにお茶汲み程度だけど、最近は色々と仕事を教えてもらって、充実した日々を過ごしている。


ガチャンッ!!!!


突然、窓ガラスの割れる音がした。いきなりだから、作業をしていた手が止まり、数秒間、事務所と工場が静寂に包まれた。


「なんなんだ?」


坂巻さんが、事務所にやって来た。そして、窓ガラスを割ったであろう原因を、私の足元に見つけた。


「………なんだよこりゃあ!?」

「どうしたんすか?」


石を包んだ紙………おもむろに紙を広げた坂巻さんは、私と紙を交互に見遣った。

引ったくるように紙を取り、私は紙に書かれていた文面を見て、背筋が凍るような冷たさに襲われた―――――




“お前の知る男を預かっている。解放してほしければ、一人で廃工場に来い。もちろん、下手な行動は人質を苦しませると思え。屍神”


この前、私に不意打ちをした“屍神”の残党からの手紙だ…………。


「サキちゃん……」

「………すみません、早退させて下さい」

「待て!まさか行くつもりじゃ……」


止めないで下さい坂巻さん。この手紙には、思い当たるフシがあるから……。


「“屍神”の狙いはアタシです」

「だが!みすみすやられてしまうのを見過ごすわけには……!!」

「………“獅子神”の人間は、簡単にはやられません。私は、大丈夫です」


それだけを口にして、私は坂巻さんの制止を振り切り駆け出した………。

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