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29:お泊りですか?変態さん

夕食を済ませ、獅子神さんと湊は帰った。

現在、我が家に居るのは俺・妹・綾館姉妹の4人。時刻は夜9時を過ぎているにもかかわらず………


「ユキ、良い湯加減だった!」

「ユキ、明日の朝食の下準備は済ましておきましたわ」


綾館妹は勝手に人ん家の風呂を浴び、綾館姉メイドは、勝手に台所で下準備を済ませている。

明らかに、帰るつもりは無いらしい………さて、明日も学校だが、どうしたものか?


「………先輩、何故勝手に風呂に入った?そして何故、俺の私服とおぼしきジャージを着ている??」

「着替えを持って来ていないからだっ!!!!」


吠えるほどの事じゃないと思うのは俺だけだろうか?だいたい、さも当然といった雰囲気を醸し出されてもこっちが困る。


「まぁユキがどうしてもというのであれば……」


お、やっと帰る気になったか?


「そんなに私の裸を見たいとは―――」

「有り難く俺のジャージにくるまれてて下さい!!」


そうだった!奴(美雪先輩)は変態だ、思考回路が常人とは違うのだ。


「ユキ、お風呂いただきました〜」


いつの間にっ!?つかなぜにリリナ先輩も俺のジャージを!?


「凜ちゃんから借りました」

「………貸した」


敵は身内に居た。姉妹共々、完全に泊まる気だ。


「ユキ、夜も深いのに女の子を外に放り出すのは、男として最低な事だと思う。もちろん、私の兄であるユキは、そんな事をしないだろうと私は確信してる」

「うっ!?」


妹君は遠回しに“お前はそんな非人道的な事はしないよな?”と言っているのだ。今までは妹を論破せず、先に折れる形をとっていた俺だが、今回は話が別だ。論破出来ないのだ。妹が正論だから………。


「「ユキ」」

「………手狭ですが、泊まってって下さい………」











午後11時。

俺のように家事全般を一人で熟す人間にとって、睡眠時間というのはとても重要なものである。

しかし―――


「ユキ、ユキ!今度は―――」


美雪先輩が、眠る事を許してくれない………。

我が家ではあまり使用しない家庭用ゲーム機“P〇3”で対戦ゲームにハマっている美雪先輩。こういうTVゲームを全くといってした事が無いらしいから、無理もないのはよくわかる。だが、時間帯を考えてほしい………。


「美雪、あまりユキを困らせてはいけませんよ?」

「むぅ………」


ありがたい!リリナさんから助け舟が!!


「土曜日にでも、ゆっくりゲームをすれば良いではないですか」


つまり、土曜日にまたお泊りだと?


「うむ、姉様の言う通りだ!ユキ、土曜日の午後から宿泊を希望する!!」

「あいにく当館は予約の受け付けは致しておりません。ってか、こっちの都合は無視か?」

「ええっと………ユキはこの先一週間の間に、家を空ける、もしくは外泊・旅行のご予定は無いみたいですが?」


俺のプライベートが筒抜けだとぅ!?!?そしてどこからメモ帳を取り出したんだリリナさぁーん!!!!


「私が教えた」


やっぱりお前かマイ・シスター!!!!!!











午後11時30分。

さて、いつも10時くらいで寝る俺にとっては、けっこう遅い就寝時間にな―――


「なぜ俺のベッドに居る!?!?」


音も無くマイベッドに潜んでやがった、言わずもがなの美雪先輩。


「ユキの匂いがする………はぁはぁ……」

「出ていけド変態があっ!!!!」


流石だ。やっぱり変態は言う事が違う!!………って、俺ってそんなに臭うのかっ?


「だいたい客間にお蒲団敷いてたじゃないですかっ!」

「馬鹿者!好きな男の子の部屋に忍び込んで一緒にイチャイチャするのはお泊りの定番じゃないかっ!!」

「そんな定番無ぇっ!!」


………あぁ、誰だこの変態に余計な事を吹き込んだのは。


「減るものでは無いじゃないか!!」

「減るわっ!俺の精神と理性がっ!!」


いくら変態であろうと、美雪先輩は美人である。これは認める。美人であるからこそ“間違い”が起きる可能性だってあるわけだ。

口では先輩の告白に対して否定ばかりを並べる俺だって、好きだと言われて嬉しくないはずはない。

だからこそ、理性が本能に負ける可能性だってある。朝起きて「昨晩は激しかった」なんて言われた日にゃ、俺は全責任をとらなければならない。


「ほぅ、少しは私も女として意識してくれている………と?」

「そりゃ、ね」


悔しいが、それも認める。俺が先輩に対して踏み留まっている理由が、彼女のぶっ飛んだ思考。これがもし、品位も恥じらいも良識も備えた思考性であったなら、俺は間違いなく、美雪先輩を彼女に迎えていただろう。


「やれやれ、今回ばかりは退散しよう」


おっ?意外にもあっさりと退いてくれたな!珍しい事もあるものだ。


「ふふっ、珍しい事もあるものだ…………なんて思っているような顔だな」


あれ〜?俺って顔に出やすいっけか?


「ユキに意識してもらえた、そんな他人には些細かもしれない事が、私は嬉しいのだ。強引にでも一緒の寝間で共に一夜を過ごしたいという気持ちはあるが、不粋な事で、せっかくの幸せな気持ちを壊したくないからな」


「おやすみ!また明日」と、美雪先輩は言葉を添えて部屋を出た。

不覚にも美雪先輩に見惚れたのは、秘密の事。己の理想に“妥協はしない”と言った。けど、破天荒で言動や思考がぶっ飛んだ美雪先輩が時々見せる“まともな言葉や表情”は、俺の意志を揺るがせる。


拒み続け、早く先輩にも俺以外の好きな男が出来ないかな?なんて今までは思っていたけど、その行動自体が、間違いだったんじゃないのか?なんて考えている内に、意識は薄れていった――――――

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