23:走り屋と暴走族の違いがわからねぇ………
短めです。
多少強引ではあるが、俺は拾ってきた女の人を家に泊める事にした。
んで、あまりに汚れてたんで風呂に入ってもらう事になり、妹が着替えやら寝床の準備をする中、俺は食事の準備に取り掛かる。
彼女が家に泊まる事が決まった瞬間、これまたきれいに聞こえたんだよ、腹が鳴る音が。
「お風呂ありがとう」
「飯、出来てますよ」
買い出しに行ったばかりなので、材料には事欠かない。口に合うかどうかは定かじゃないが、とりあえず焼き豚チャーハンとワカメスープ、それにサラダを作ってみた。
「い、いただきます!」
お口に合うといいんだが………
「………美味い!」
よかった。あ〜ホッとしたよ。
よほどお腹が空いていたらしい。チャーハンを食べる手が止まらない。
ものの数分で―――
「ごちそうさま!美味しかった!!」
完食。お粗末様でした。
「ユキ、焼き豚を入れた分、塩はもう少し抑えたほうがいいと思う。ワカメは火を通し過ぎ」
凜、お前、1時間前に飯食ったよな?
「……次から頑張ります……」
「あ、アタシはちょうどよかった!」
妹君の酷評をフォローしてくれてんだな。でも、慣れてますから……。
飯を片付けた後で、女の人から自己紹介された。
名前は獅子神紗姫といって、年は18歳だとか。地元で30人ほどの仲間で“走り屋”をやっているとか、名字がそのままチーム名になってるとか。
んで、今日は隣町のチームと乱闘したとかで、背後から木刀で殴られて、その後は袋叩きにされたらしい。あの場所にいたのは無意識のうちに、だそうだ。
ちなみにだが、現在獅子神さんは、俺のTシャツとジャージを着ている。下着は凜から借りたが、服は妹のサイズが入らなかった。
だって、身長が176ある俺とあんまし変わらないから。汚れた顔の時は気付かなかったが、輪郭は逆玉子型で、目付きは鋭い感じの“キツメ美人”だ。風呂に入った後、綺麗に櫛で梳かれた栗色のショートカットな髪型が、実によく似合っている。
Tシャツ姿だからそこまでは感じないのだが、走り屋をやってるのが勿体ないくらい、スタイルが良い。
「いや、今日は本当に助かった。まだきちんと礼も言ってなかったな。本当に、ありがとう!!」
「あ、い、いやいや!」
さっきまでの強情っ張りが嘘のようだ。素直に感謝の意を言葉にした獅子神さんに、俺のほうが慌ててしまった。
◇
あまりに話し込んで(主に俺のお節介について)いたので、夜もだいぶ深くなってきた。
獅子神さんは妹が用意した寝床で寝るのだが、準備されたのが、妹の部屋だった。
「……ダブルベッドだから、広々安心」
「あ、アタシは寝相悪いから床で………」
「大丈夫、私のほうが寝相悪いから」
うん、理由になってねぇよ凜。とはいえ、凜は前から“お姉さん”をご所望だったから、一緒に寝たりしたいのだろう。綾館姉妹が来る時とかは、何となくご機嫌だったりするからな。
べ、別に悔しいとか、そ、そんなんじゃないんだからねっ!?
あぁ………自分で言って不毛だと気付かされた。