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番外編:素直になれない私の本音

旗沙織の視点です。

今日、相澤由希が店に来た。二人の美人を連れて―――


「やれやれ、押しが弱いねぇ、我が娘ながら……」

「もうっ!見てないで仕事してよ!!」


母親は、呆れながら私を見る。


そう―――冗談じゃない。私が由希に伝えたのは、私の本音。

けど、自らの言葉で冗談に変えたのだ。

我ながら、素直になれない自分に嫌気がさす。

あの日、あの時、あんな言葉を口にしなければ、私は今でも由希の“恋人”だったんだろうか………?






⇒⇒⇒⇒






あれは私が中学2年の夏休みだった。幼稚園から中学までを共に過ごしていく中で、私には由希よりも先に“恋人”が出来た。

容姿は学校一で、告白も引く手数多な先輩だった。

性格よりも容姿を第一にと考えていた当時の私も、例外に漏れず先輩に惚れていて、勇気を出して告白。玉砕覚悟だった私に返ってきた言葉は―――


「いいよ、僕もキミの事が気になってた」


OKの返事。

勿論、私は浮かれ調子になって、周りの友人から「遊ばれてんのよ」って言葉も、ひがみにしか聞こえなかった。

けど―――


付き合っていくうちに、彼氏の周りから感じる、女の影……。

ある日のデートをすっぽかされた私が、暇を潰す為に出掛けた街。偶然にも、彼氏が居た。私とは違う“女の子”と、楽しそうに――――


問い詰めた結果、私の他にも彼女がいる事が発覚。しかも、5人も!

悲しみよりも怒りが強くなっていく私を知ってか知らずか、そいつは「お前も遊びだと割り切れよ」って言いやがった!

沸点到達。「テメェのだらし無さを棚に上げてんじゃねぇっ!!!!」って言葉と共に、鳩尾に三行半みくだりはんのアッパーカットをお見舞いして、私は先輩と別れた。


その後、苛立ちも依然治まらない私を心配してくれたのが、相澤由希だった。

時間の長さってのは不思議なもので、私が悲しい時、辛い時には、決まって隣に由希が居た。

ぱっと見は目付きが悪い不良みたいなのに、根は優しくて、温かい。そんな由希の優しさに甘え、私は口にした。


「ねぇ由希……いつも、私の傍に居てくれるのは………」

「………フラれた女の子は、俺の大切な人だから―――」


照れ臭そうに、由希は言った。

だから甘えた、幼馴染から恋人の関係へと。

けど………


立場は変わっても、変わらない毎日。ただ、平凡に刺激も無く過ぎてゆく時間………。

だから、望んだ。変わらない毎日よりも、刺激のある日々を。そして出会った、新しい恋に………。


「ごめん好きな人が出来た!だから別れてっ!!」


極力、有無を言わせない勢いだけの別れ話。由希は何も言わず、ただ頭を縦に一度だけ振った。




新しく出来た恋人は、不良っぽい感じの人で、喧嘩っ早い性格も災いしてか、よく衝突する事も。

それでも、今までになかった刺激的な日々は、退屈・平凡が嫌いな私にはとても新鮮で、楽しかった。

けど、互いの進路の方向の違いから、遠距離恋愛に。中学を卒業し、高校に進学してすぐの頃までは互いに連絡を取り合っていたけど、いつからか疎遠に。

暇になったある日、私は彼氏に会いに行ったけど、彼氏に出会った途端、ドキドキも、嬉しさも込み上げてはこなかった。

彼氏もそんな感じ。だから別れた。


帰路の途中で浮かんだのは、いつも傍に居てくれた由希の事。平凡で変わりない付き合いだったのに、無性に由希に会いたくなった。

会いたい――――


けど、会えない―――


一方的に別れを告げた私が、どの面下げて会うというのだ………。

きっと、由希だって私を見たら不快に思うんじゃないだろうか?


自分勝手な都合で、相手を振り回しちゃいけない。

だから、会えなかった。ごめんなさいと、言えなかった。素直になれない性格は、今も昔も変わらないまま………






⇒⇒⇒⇒






中学卒業から2年経った。そして今日、私の両親が経営する服屋“ELICE”に、懐かしい幼馴染が来た。相澤由希………かつての恋人が―――


切れ長の鋭い目付きは変わらないが、豊かな表情には優しさが滲み出ている。顔立ちも大人びて、背も幾分か高くなったその姿は、凛々しく、かっこいい。

ただ―――


由希に寄り添うように、仲よさ気に歩いて来た女性。そして、二人を見守るように後ろに続くもう一人の女性が、私を一気に不安にさせた。


(誰………?)


一人は由希ほどではないが、存在感のある目付きにまっすぐな黒髪の和風美人。もう一人は、艶めく銀髪が美しく、優しげな瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出している外国美人。………メイド服姿っていうのが、驚かされたけど。


とかく驚かされたのは、まっすぐに私を見据え「ユキの婚約者」と言った、和風美人の方。うろたえる由希なんて見た事なかったから、尚更―――


(由希は否定してたけど………)


由希の表情の豊かさは、きっとこの人のおかげなんだろう。

「由希の恋人に立候補しても、いいかな?」なんて言ったけど、私は横で狼狽する和風美人と同じ舞台に立つ前に、敗北を悟っていた。なぜって?


過去の経験から、私はそう感じた。私は由希を喜ばせるどころか、きっと不快にさせてしまう。多少強引でも由希の事をよく見ている彼女とは違うのだから。


「な〜んてね!びっくりした!?」


付け足した“からかい”の言葉で、私は“ステージ”を降りた。

だって、勝ち目のない戦いに立つほど、私は強くないのだから。


帰って行った由希達の姿を見送りながら、私はただ、あの二人の幸せを願うだけだ………。

当初、この“沙織”を美雪のライバルに!と、考えてました。が、いかんせん、如月舞とキャラ被る。

という事で断念。

ちょくちょくストーリーには登場しますが………今の所、まだ未定です。

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