表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/102

19:元恋人にからかわれ………

綾館姉妹は、普段あまり服屋に行かないらしく、その事もあって、俺が普段行く服飾屋の“ELICE”にやって来た。

市街地のセンター街じゃ割と有名な店で、メンズ・レディスと区画に分かれてはいるが、品揃えは豊富で人気がある。

そんな所に案内した俺だが、普段は絶対に寄り付かないレディスコーナーに足を踏み入れた途端、聞き覚えのある声と見覚えのある人物に、我が目を疑った。


「さ、沙織じゃねえか!何だってここにいんだよっ!?」

「いや、むしろレディスコーナーに美人を二人もはべらせて入って来た相澤の方が不思議じゃない?」


ツリ目に栗色セミロング、160にちょっと届かない程度の身長の女は、やや呆れ気味に言い返す。

この女とは幼稚園・小・中学時代を一緒に過ごした“元腐れ縁”であり、名前は旗沙織はた・さおりという。


「どっちかは彼女?」

「違う違う。こっちは俺の先ぱ「婚約者の綾館美雪だ!」

「盛大なデマはやめてくれ美雪先輩!ったく……で、こちらが―――」

「専属メイドのリリナ・F・ナイトロードです」


二人ともやめて!!他のお客さんがザワザワしてるっ!!!!


「相澤も隅におけないなぁっハハ!!ま、元カノとしちゃ、ちょーっと複雑だなぁ………」

「「も、元カノォォォオッッッ!!????」」


ああ、もう!!話がややこしくなるっ!!!!










旗沙織………こいつが余計な一言を口走ったが故に、服選びどころじゃない。


「ユ〜〜キ〜〜……本妻である私がいながら、他の女に手を出すとはぁ〜〜」

「本妻違う!しかも中学時代の話だし!!元だし!!つか、先輩と俺は付き合ってねぇしっ!!!!」

「ユキ……私の可愛い妹を泣かせるなんて……」

「泣かせてないし!泣きてぇのはこっちだし!!」

「へぇ〜……ってことは、私が再度、相澤の恋人に立候補してもいいってことだ!?」

「こんな状況で悪い冗談はよせってば!!!!」


ツッコミが追いつかねえ。沙織はいつもこんなだった。昔も散々振り回されたあげく「ごめん、好きな人出来た!そんなわけで別れて!!」と、一気にまくし立てられて別れる事になったっけ………。


「み、美雪先輩!服っ!服選びに来たんでしょ!?」

「服より先に狩らねばならん獲物が出来た!」

「ちょっ!?リ、リリナさん!とめて!!」

「美雪、私も加勢するわ!」

「なんで参加!?」

「ふぅん?黒月流古武術のあたしの相手してくれるんだ?」


なんでバトる雰囲気!?誰かとめて!俺じゃこの中に割り込めねぇ!!!!






なんで綾館姉まで参加してんのっ!?ここ街中だよ?服屋だよっ!?なんでバトる雰囲気出てんのおぉぉお??????






⇒⇒⇒






バトるわきゃねぇとはわかっちゃいたけど、騒動をとめてくれたのは、この店の店長さんだった。


「こら沙織!」


ゴンッ!!


「ったぁ!?」

「お客様相手に何を喧嘩吹っかけてんだいまったく!!」

「え〜〜喧嘩売って来たのは向こうだし!」


ゴンッ!!


「むぎゃっ!!??」

「ここじゃ、お客様は神様なんだよ!それに、口答えしない!!」

「……はぁい……」


頬を膨らませ、ブータレ気味の沙織をよそに、店長である恰幅の良いおばちゃんは、丁寧に頭を下げた。


「ごめんなさいねぇ。うちの娘、喧嘩っ早くて」

「ああ、いえ。私の方こそ、ご迷惑をおかけしまして……」

「申し訳ございません」


遅ればせな説明だが、店長は沙織の母親である。当然、俺も面識があるわけで―――


「相澤くん、久々だねぇ!!」

「ご無沙汰してます!」

「ハッハッハ!畏まらなくていいって!」


豪快に笑い、俺の肩をバシバシ叩くおばちゃん。ってか、痛い!


「ま、こんな美人さんも一緒じゃ、うちの娘も焦るのはよくわかるけど………ねぇ?」

「お、お母さんっ!!」

「さぁて、あたしゃ奥で荷物整理でもしてくるかねぇ……」


おばちゃん、退場。やっぱ母親だけあって、娘の扱い方は慣れてんなぁ。

……ところで、なんで沙織はそんなに慌ててんだ?











大人しくなった沙織は置いといて、とりあえず当初の目的は遂行せねば。

の、前に――――


「美雪先輩、暑苦しい………」

「私は暑くないが?」

「ええい!俺が暑い!!引っ付くな!腕を絡めんな!!む、胸が当たって……」

「心配するな!当ててるんだ!!どうだ、ムラムラするだろう?」

「離れろ変態!!」


一連の出来事のせいか、美雪変態(先輩)の密着度が増えた。男としちゃ嬉しいかもだが、出来ればそういう事は俺ではなく、将来の彼氏にでもやってくれ。俺の選択肢に変態は入ってねぇ!


「っと………それより沙織。なんで店嫌いなお前がここで働いてんだ?」


沙織は昔っから、服飾関係に毛嫌いしていた。実家が服屋をやってたから、その反動だと思うが。


「………嫌いっていうより、苦手だったのよ。家庭科も工作も成績悪かったし、やっぱ親がそういう仕事してるから尚更……ね。でもさ、嫌いじゃなかった。手伝い程度から始めたんだけど、今はこの仕事が好きだから、ここでバイトしてんの」


成る程ね。


「……と、ところで、さ、さっきの話なんだけどさ……」

「あん?」


服を畳んでいた沙織は手を止め、こっちに振り返った。


「こ、恋人いないんならさ、もう一度………立候補しても、いい?」

「…………………ヘ?」

「そ、それが嫌なら、また、友達からでもいいから………さ」


思ってもみなかった言葉に面喰らったのは俺だけじゃなく―――


「ユ、ユキは渡さん!!」

「い、妹にライバルが…………」


綾館姉妹もまた、驚きと焦りを見せていた。


「……な〜んてね!びっくりした?」

「は?え、え?」

「相っ変わらずからかい甲斐があるわ。あっははは!!」


なんてこった、不覚にもドキッとしたじゃねぇか!!


「沙織さん、ユキは私の彼氏だ!からかうのは勘弁願えないか?」

「彼氏じゃねぇし!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ