02:午前中〜昼休み
早めの更新。次話更新はまだ未定です。
さて、朝のストーカー的内容のラヴ・レター(?)のおかげで、ずいぶんと心がえぐられた俺。朝のHRを終わらせた中年の担任は、さっさと教室を出る。そして俺は席を立ち、早朝に受け取った手紙を一字すら見えないように細かくちぎり、ゴミ箱ヘ。
「……チッ」
この際、廊下の方から聞こえた舌打ちは気にしない。世の中、気にしたら負けだという事もあるのだ。
キーンコーンカーンコーン………
「くっ、次こそは……」
気にしない気にしない。
さて、1時限は国語である。俺にとっちゃ当たり障りのない教科だ。
「はよ〜!授業始めるね〜♪」
国語を担当するのは、赴任してまだ一ヶ月も経たない新任の沢木真穂先生。独特の明るい口調と、24歳という若さ。俺らと歳変わらないんじゃねぇの?的な童顔という事もあってか、生徒から“真穂ちゃん”とか呼ばれ、人気がある。
しかも、若いだけじゃなくて教え方も上手いから、そりゃ人気だというのも頷けるってもんだ。
「はいはい、んじゃ授業を始めるね〜♪」
2時限、化学。
ま、授業風景っつーのは、どこも大体同じだろうから省略しておこう。
3時限、倫理ときたから昼寝。授業?んなもん後で友達からノートを写せば済む。で、昼休み前の4時限が数学。俺のいっちばん嫌いな教科だが、さすがに赤点で落とすのはマズイから、授業は真剣に聞く。
とまあ、これが午前中の授業風景である。
さて、こっからがようやく昼食となる。この嶺桜高校には、学食を始めとして、軽食、麺屋菊一(うどん屋)、更にはスイーツショップKarenというケーキ屋まである。その理由は何故かっちゅーと、まあ簡単な話が土地の利用である。
この嶺桜高校は私立学校だ。土地の所有者は、この学校の理事長である。先々代から土地を譲渡された先代の理事長が、現在の嶺桜高校の前進である桜花女子高校を設立した。その後、更に大学を開設して、学校は機動に乗ったのだが、いかんせん、譲渡された土地が広かった。
そこで、土地を分譲し、更には余った土地を安く貸して、現在の食事処が出来たというわけである。
さて、無駄話もそこそこに本道に入ろう。現在昼休み、俺は学食でも他の食事処でも甘味処でもない、教室にいる。早い話が弁当なのだ。
ちなみに飯を食う時のメンバーはだいたい決まっていて、俺・健一・如月と、あと3人。
「皐月、寝ながら食うな。どっかかにしろ」
「んみゅ〜……」
「………(もぐもぐ)」
上から順に説明しよう。まず、箸で卵焼きを掴んだまま眠りかけた女の子に声を掛けている男。こいつは河南秋斗。学年一の秀才で、学校……いや、下手すりゃ県内一の情報通だ。細面の顔立ちで目つきが鋭く、そこら辺の不良以上に腕っ節が強い。一見すれば近寄りがたい人も多いだろうし、俺だってそう思っていたのだが、話してみれば意外と気さくで、中々良い奴だ。
んで、とりあえずその卵焼き片手に居眠り中の女の子。名前は結城皐月。授業中はほとんど寝ているというのに、テストの点は常に上位という、一生懸命勉強してる生徒を馬鹿にしたような奴だが、本人いわく「どんな問題でもコツさえ掴めれば簡単だよ」らしい。
まあ寝てるばっかだが、意外と可愛い。ちなみに河南と結城は、二人で一セットだ。
んで、普段から寡黙。現在も無言でお食事中のクールビューティが、湊奏。真っ白な肌は日焼け知らず、くわえて反対色の艶めく黒い長髪がよく似合っている。
このクールビューティ、俺と同じく帰宅部だが、スポーツも勉強もそつなくこなす万能タイプである。
「つーかユキ!あの手紙の内容どんなだった!?」
「口に物を入れながら喋るな!唾が飛ぶだろ!!」
健一(以下バカと呼ぶ)、食事のマナーを守れ。そして思い出させるな。
「……毎度の事だ。というか、最近は内容が怖い」
「全くだ。私ですら身震いした」
「相変わらずか……皐月、寝るなら箸を置け」
「いいなぁ、ユキは愛されてんなぁ!!」
「そうだぞ!愛があの手紙を書かせたのだ!!そんな相手の想いを汲めないユキがおかしいと私は思う!!」
「いやいや、あれは度が過ぎているだ………………………あれ?」
おっかしいなぁ……どうも聞きたくなくても聞き覚えのある声がする。
「だいたいこんなにも美人な私を拒むとは、ユキの感性が理解できない!!」
「いつから居たこの変態野郎!!」
「ユキ、それは違うぞ!私は変態野郎じゃない!!変態女だっ!!!!」
気配無く隣に来るな!否定する箇所が違う!!そして俺の特製だし巻きを食うな!!!!
「うん、ユキの愛情たっぷりの味がする!!」
コメントが気持ち悪い!つか自分で作った弁当に愛情を込めるようなナルシストじゃねぇよ俺は!!!!!!