15:帰って来ました。付いて来てました。
滅多に無い事だが、今日は半年ぶりに親が帰ってくる。しかも、父・母の両方が揃ってだ。
「「ただいまー」」
午前8時。チャイム・ノック無しに両親は帰って来た。
「おかえり」
「おお、ちょっと見ない間にでかくなったな!」
「あら、目付きはますます鋭くなったわねぇ……」
お袋、目付きはほっとけ!!どちらかといえば、あんたに似たんだよ。
「「ところで凜は?」」
「寝てる」
我が妹様は、マイペースな人。両親が帰ってこようと、自分のペースを変えるつもりは無い。
毎度の事だから両親も理解して……
「私、そんなに嫌われてるのかしら……」
「う、うむ……やはり仕事ばかりで家にいないから、私らなんて他人としか…………」
いなかった。
「ま、まぁ凜は後で起きてくるだろう………ところで、なぁ母さん」
「ええ。私もさっきから気になっていたわ。ねぇ由希、お台所の方からチラチラとこっちを見てるあの女の子達はどちら様?」
母さん?何を言ってるの!?この家には俺と凜しかいないよ……いな……い……
……まさか……
ギリギリギリと、油の切れたブリキ人形みたいに、台所へと顔を向けたら――
「え、エヘッ!」
「あら、オホホホホ!」
な、なんっで……
「なんでいるんだああぁぁぁあああ!!!!!!!!」
大・絶・叫・♪
◇
「……で、このお二方は由希の“先輩”だと?」
「いえ、私はユキ……コホンッ、由希くんとお付「違うよ!ホントにただの友達だから!!」
あぶねぇ!恋人的な関係を口走ろうとしやがった!!
「私は美雪の姉でして、将来は由希様の専属メ「ち、違うんだ母さん!この人は虚言癖があるんだよ!!」
更にあぶねぇ事口走ろうとしやがったメイドォォオオッッ!!!!
「んもぅ、照れなくても良いわよ!美雪さんは、将来私の娘になるのよね!!」
全然分かってねえぇぇぇええっ!!!!
「で、こちらの方が、由希の世話係か」
バカ親父ぃ!!なんで二人とも理解力に乏しいんだドチクショオォォッ!!!!!!
◇
きっと、凜(妹)の理解力の乏しさはこの両親から色濃く受け継がれたんだろうと納得したところで、俺も1時間をかけて(姉妹からの妨害有り)ようやく両親を説き伏せた。
「……つか先輩、どうやって家に入り込んだ?」
「ん?ユキのお義父様とお義母様の後ろに隠れて、玄関の戸の鍵が開いた所で入ってきたぞ。ちなみにユキの死角から台所に侵にゅ…………入った!」
「お義父様かぁ」
「どうやら私達にも、美しい娘が出来たようだわぁ。ねぇ、アナタ」
今、確実に“侵入”って言ったよな、なっ!てかバカ親ぁ!!1時間もかけて説明した意味が無ぇ!!!!
「ユキ、うるさいわ。あら、帰ってたんだ?」
我が家の女帝(妹様)、起床。
あーあ、自分の親を他人扱いですか。見事に二人とも固まってるし……。
◆
「美雪姉様、リリナお姉様、おはようございます」
「おはよう凜(義妹)ちゃん!」
「おはようございます凜様!」
「ついでにお父さんとお母さんもおかえり。あとユキおはよう」
俺は慣れてる。だが、親は………。
「ついでなんだ……」
「なんだが、娘が遠くに行ってしまった……」
せつねぇ……。
ま、まぁそんなこんなで、両親が帰ってきた。
けど、綾館姉妹もいる…………正直、今日という日が不安で不安で仕方ねぇ!!!!