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09:喧嘩ですか?いいえ、決闘です

新キャラですか?いいえ、あんまり関係ありません。

今日はわりかし大人しい先輩は、やはり先輩だったというわけで。

午後の授業も終えて、いざ帰ろうと下駄箱に手をかけよう………いや、目に見えてわかりやすい白い便箋が、下駄箱の扉の隙間からはみ出ていた。


「……またか……」


てっきり先輩からのストーカー・レター(ラブレターらしい)かと思ったが、差出人の名らしきものは無く、“果たし状”と殴り書かれていた。

ほぉ、果たし状……。


「えっと何々……」


“放課後、校舎屋上にて待つ”


一言だけである。せっかく妨害の少なかった日だというのに………。

あまり喧嘩とかは好きではないのだが、便箋の裏にはバッチリと“相澤由希ヘ”と書いてある。無視してもいいのだが、流石に名指しで、しかもご丁寧に果たし状での呼び出しだ。気乗りしないが、まあ行かないわけにもいかないだろう。

我が自己中なるマイシスターが帰るまでに済ませるか……。











「遅い!遅いぞ相澤由希!!」

「はぁ、すみません」


とりあえず指定された屋上ヘ行き、その先には屋上です的な扉を開けると、待っていたのはいかにも“番長”風な男と、その一派。

見た目は完全にオッサンで、まだ四月だというのに、学ラン(改造)の中にはサラシ。寒くないんだろうか?


「さて、理由は分かっているな?」

「まぁ」


番長風(以下番長)は、理由を聞く。わからないというのは嘘になるから、とりあえず軽く返す。


「ならば話は早い!野郎ども、手ぇ出すなよ。いくぞ相澤ぁ!!」

「では……」


一直線に突っ込んで来る番長は巨体とスピードを活かし、重みのありそうな拳を俺に向けて振り抜いた………

















「ぐぅぅ……」

「……気が済んだっすか?」


10分後、床に倒れた番長は俺に睨みを利かせながら呻いた。顔も体もボロボロ。いや、俺がボッコボコにしたんだけど。

俺も所々は殴られはしたが、これといってたいした事はない。


「ああ……また、俺は負けたんだな……」

「中々動きは良かったっすよ。パンチに重みはあるし、一撃一撃が、結構デカイし。ただ、まぁ大振りだから、当たらなきゃ意味がないっすけど」


この番長、月に一度は俺に決闘を挑んでくる。ことの始まりは先輩目当てで、先輩が俺に一目惚れ(今でも)してるのが気に喰わないといった理由だった。

要は嫉妬からのとばっちりである。

むろん、当時も返り討ちである。ボッコボコである。前にも言ったが、俺はそこら辺の不良よりは腕っ節が強い。理由?俺の親戚に古武術の道場やってる叔父がいて、小さい頃に無理矢理稽古をつけられた。なんでも筋が良いらしく、家を空けがちな両親に変わり、俺の(妹も)親代わりで、一緒に暮らしていた。んで、「心身を鍛える事が、人間を鍛える!」という叔父の格言のもと、小3から中3までの6年間、みっちり鍛えられた。おかげで不良に喧嘩を吹っかけられても負けないくらいには強くなったのだ。あんま嬉しい事ではないが……。だから先輩から告白を受けた当時は、殺気立った同学年やら年上からの嫉みややっかみからの喧嘩が多く、その度に相手をフルボッコ。この番長もそんな相手の一人である。であるが、今も決闘を申し込んで来るのはこの人くらいなもんで、他は大人しい。もっとも、この番長も、今では別の理由で喧嘩を吹っかけてくるのだが。


「……勝てねぇ……」


今はただ、俺に勝ちたいという理由だけだと、番長の仲間内から聞いた事がある。でも、不意打ちは絶対にしないし、月に一度しか決闘を申し込んで来ない。それに、普段は気の良い人で、廊下ですれ違えば挨拶もするし会話もする。

良い意味で一本気な人である。だから決闘の際に手加減はしない。常に全力。


「次は負けねぇ」

「望むところです」


ニヤッと笑う。お互いに………。グイッと番長を引っ張り、立ち上がらせる。


「んじゃ、今日はここまで……」

「すまんな、俺の意地に突き合わせちまって」


やっぱり、良い人だ。











「ねぇユキ、今日は早く帰って来るって言ってたわよね?帰りにAlice(ケーキ屋)で苺のロールケーキ買って来るって、私に約束したわよ……ね?」

「申し訳ありませんでした!」


家に帰って早々に、玄関先で仁王立ちする我が妹君は、般若のごとき笑みと、女性らしからぬドスの利いた声で俺を出迎え、俺は自分の記憶力の悪さと理不尽さに不愉快感を覚えつつ、全力で土下座させて頂きました。


「逝ってらっしゃい…」



ぎゃああぁぁぁあ!!!!!!

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