01:そんな日常
本編は中途半端に始まります。短編《才色兼備な変態さんは好きですか?》を読まれた事のない方は、そちらから読む事をオススメします。
さて、236回目の愛の告白も玉砕に終わった先輩という立場の《変態》は、「次こそはぁぁぁあ!!」という雄叫びと共に去って言った。
そしてここから学校までの道程が、俺にとっては“つかの間の平和”である。
平和という時間は、実家から徒歩10分で終わりを迎える。そう、学校に着いたのだ。
辺りを見渡す…………変態はいない。だが、油断は禁物である。
校舎内に入り、自分の下駄箱から学校指定のスリッパを取り出し………
パサッ………
スリッパの上に置いてあったのだろう、かわいらしいピンクの便箋が床に落ちた。さて、ここで一つだけ確認しておこう。
俺、相澤由希は世間一般でいうところの《イケメン》でもなければ、学校で嫌われている《ブサイク》でも《キモヲタ》と呼ばれる人種でもない。
《普通》なのだ。
多少(?)目つきが悪い程度で、顔も普通であれば外見も、他の同級生となんら変わりない。まして成績も中の上から前後と、所詮褒められる事もなければ怒られる事もないという中途半端。ただ、まぁ………褒められる事ではないのだが、そこそこ腕っ節には自信がある。
その理由は、まぁいつか話すとして、今問題なのは、手にしているこのピンク色のかわいらしい《便箋》である。
さて、もう一度念を押しておくが、俺は女の子から好感を持てるような人物でもなければ、イケメンでもない。
それを踏まえたうえで、この便箋。とりあえず教室で読む事にしよう。
………え?今読まないのかって?
これには理由があるんだよ、理由が。
◇
教室である。俺の席は真ん中の列の中盤という、これまた中途半端な席である。で、便箋だ。
俺が堂々と便箋を見せびらかそうが、たとえ大声で手紙の内容を口にしようが、我がクラスメイトの反応が冷ややかだという事を、俺は知っている。
「うぉう!ラヴ・レターじゃねえか!!」
若干一名を除いて。
「おはよう健一。そして近寄るな暑苦しい」
「ひどい!!」
俺に密着せんばかりに体を寄せて、便箋を奪うこのバカ。一人前に大川健一という名前がある。そうだな、特徴と呼べる特徴は………誰しもクラスの中に一人くらいはいたであろうお調子者を想像して、それに当て嵌まるのが、こいつだと思っていいだろう。
「なんか俺の説明がおおざっぱ過ぎないか?」
「……気のせいだろ」
人の心を読むな。そして手紙を返せ。
「さてさて、バカは放っておいて……」
「ちょ、ひどくない?俺の扱いひどくない!?」
さて、健一をバカとはっきり言うこのお方。名前は如月舞という、名前も容姿も綺麗な女の子である。
ただし……
「うるせぇ!バカにバカっつって何が悪いんだ?テメェに優しい言葉をかけるような人間なんざ、このクラスにゃいねぇんだよ!!」
「う、うわあぁあん!!」
うん。お分かりいただけただろう。如月はとにかく口が悪い。そりゃもうそこら辺男より悪い。
哀れ健一。泣きながら教室を出て行った。
「……あ、手紙……」
あのバカ、手紙を持ったまま出て……
「でーじょーぶ!ここにある」
「お、さすが舞ちゃん!やっぱ持つべきものはバカじゃなくて頼りになる女友達だな!」
「舞ちゃん言うなっ!!」
如月は名前で呼ばれるのが嫌いだ。ま、多少からかい甲斐があるから、俺はキレない程度に言ってみたりする。可愛いと思うんだけどなぁ……
「それよりも、ほれ」
「ん。サンキュ!」
如月から手紙を受け取り、いざ開封。
“好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き…………”
「「………」」
うん。だいたい予想はしてた。ってか《好き》のエンドレスって………
「……相澤」
「言うな」
如月、お前が何を言いたいのかはだいたい想像できる。できるから、そんな可哀相な物を見る目で俺を見るな!!
ちなみに宛て名だが
“恥ずかしくて名前が書けない内気な弓道部の主将兼生徒会副会長より”
長ぇよ!そしてバレバレだ!!
続編です。完全に見切り発車しました。しかもヒロイン的な変態先輩の出番が少ない!しかもまだ名前がない!!ちなみに次の更新未定!!!!………ま、なんとかなるだろ。的な考えの私。地道に頑張ります!