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おしゃべりオウムに ようこそ  作者: 寄賀あける


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18/33

18 シャーンの婚約

 手をあげた者たちの一番の関心事は、北中央魔導士学校への報復をするのかしないのか、だった。


「我が王家の森魔導士学校が馬鹿にされたんだぞ? 報復して(しか)るべきと考える」

それに対し、サウズが

「校長が先方と手打ちし、南ギルドもそれを承認している。我ら学生は動くべきではない」

と反論する。


「ホヴァセンシルの()び状一つで事が終わるなら、我らが何かを仕掛けても、詫び状をビルセゼルトが書けば済むはずだ。向こうはそれで済ませた。それがどういう事か思い知らせてやれ」

「ビルセゼルトの顔に泥を塗る気か? 我らが動けば報復とすぐ判る」

「だからってやられっ放しでいいのかよ? それこそ、王家の森魔導士学校の連中は腰抜けだって言われる」


 喧々囂々(けんけんごうごう)とどちらも引かぬまま、議長役のカーラも、現議題の担当者デリスもどうしていいものか成り行きを見守るばかりだ。


 そんな中、カトリスが立ち上がった。

「僕たちが結集しているのはなんのためだ? (きた)るべき災厄に備え、ビルセゼルトの手となり足となり、すぐさま動ける体制を作る事じゃなかったのか?」

報復派が息を飲む。


「たかが一人の魔女の悪戯に目の色を変える事もない。学校のメンツを口にする者もいるが、ここはゆったり構えて(ふところ)の深さを見せつけろ。それこそが我らが信奉する偉大な魔導士ビルセゼルトの心に(かな)い、後に続く我らが取るべき道だ」


 カトリスの演説に場が静まり返る。さらにシャーンが発言する。

「わたしたちを信頼してダガンネジブ様は事の詳細を伝える事にしたのよ。そのわたしたちが騒ぎを起こせば、どこから情報が漏れたか追及される。なんのためにダガンネジブ様がこの情報をわたしたちに知らせる事にしたのか、考えなくちゃダメよね」

するとどこかで『一年の癖に』と声がした。


「今、一年の癖に、と言ったのは誰だ?」

サッと立ち上がり、怒鳴ったのはアランだった。いつもにこやかでムードメーカーのアランが怒鳴るのは珍しい。

「立って名乗れよ。自分の発言に責任を持て。名乗れないならここから出て行け、除名だ」


「アラン、座れ」

(たしな)めたのはグリン、

「あー、まぁ、我らがおしゃべりオウムの会は、年齢性別、成績や魔導士としての資質、そんなものは関係なく、()たんなく発言できるのが約束だ。一年生の癖にと言った人は発言の撤回をしてくれ」

と、取り成したのはカーラだ。


 が、アランの過激な発言に、場は治まりが付かない。『除名ってなんだよ』という声がチラホラと聞こえてくる。


 アランを擁護(ようご)したのはカーラだった。

「入会するとき我らは誓約しているはずだ。それを思い出してもらおう。規約に違反した者は除名されても異を唱えない。そして除名後も当会の秘密を洩らさないと神秘契約している。一年の癖に、という発言は規約違反に当たる。が、アランとて即除名とは言っていない。まず発言者は自分の発言に責任を持てと言っている。もてないなら除名、理屈は通っている」


「カーラの言うことも判らないわけじゃないけど」

と言ったのは赤金(あかがね)寮の三年次生だった。

「アランが怒ったのは、攻撃されたのがシャーンだったからじゃないの? 個人的な感情を持ち込むのは規約違反じゃないの?」


 慌ててカーラが規約書を宙から取り出して確認する。

「うーーん……個人的感情云々(うんぬん)という記載はないね」


「アランの個人的感情って?」

と聞いたのは白金(しろがね)寮の二年次生だった。それに答えたのは言い出した赤金(あかがね)寮の三年次生だ。

「アランはシャーンが好きなのよ。噂だけどね」


「おい、ただの噂を本当のように吹聴されるのは迷惑だ」

これはグリンの発言だった。グリンとシャーンが兄妹だと、ここでは誰もが知っている。

「個人的なことなので、ここで言うべきではないのは判っている。だが、聞き捨てならない。シャーンはデリスとの婚約が整った。他の男と何かあるような事を言うのは遠慮してもらおう」


 またも()()()()が起きる。それぞれが驚いてアラン・シャーン・デリスを見た。


 デリスが頬を染め、シャーンは『グリンのおしゃべり』と苦情を口にし、アランは『関係ない僕をなんで見るんだ?』と()()く。


 次には祝福ややっかみ、冷やかしの声に溢れ、別の喧騒で部屋が包まれた。


「やあ、なんか驚いた。いったいいつの間に? って感じだけど、とにかくおめでとう――じゃなかった、みんな、祝福も冷やかしもあとにして、議題をもとに戻そう」

カーラが声を張り上げた。そしてアランに

「除名発言について、何か言った方がよくないか?」

と、心配そうに言う。


 アランが立ち上がる。

「一年生の癖にと言ったヤツはどうやら名乗る気がないようだ。誰だか判らないものを除名するのは無理だろう。今回は除名審議を見送る。が、メンバーは平等に発言権がある事をここにいる全員、僕も含めて、忘れる事なきよう願いたい。名乗らなかった誰かが自分の発言を恥じて名乗れなかったのだと僕は信じたい。そして、除名を決める権限は僕にあるわけではなく、メンバーの総意によるものだという事を確認するとともに、僕の発言が行き過ぎたものだった事を謝罪する」


「で、本来の議題に戻る――北への報復の是非についてだった。デリス、続けて」

アランが発言を終え、着席すると間髪入れずカーラが引き継いだ。これ以上、誰にも文句を言わせない、そんな感じだ。


 デリスが立ち上がり、

「北への報復をどうしてもしたいという者はいるか?」

と尋ねる。除名騒ぎになる前の流れから、いないと見越しているのが判る。実際、カトリスの演説、それに続くシャーンの発言で報復派は()が悪かったし、大人げないとも思えてきた。報復すれば、子どもの喧嘩に他ならないだろう。

「それじゃあ、悪戯事件も終わりでいいね?」

デリスの発言に(いな)と言う声はなかった。


 年次報告は終了とデリスが着席し、カーラが次の議題を告げる。

「あと三ヶ月で卒業年次生は母校を去る。主催アラネルトレーネもその一人だ。アランは聴講生として学内に留まるものの、扱いは学生とは異なり教職員と同等となる。よって主宰の任を辞したいと申し出があった。これを踏まえて、新年度の当会の方針を決めていきたい」


 立ちあがったのはエンディーだ。カーラが『担当の紹介前に立っちまったよ』とブツブツ言いながら、それでも座った。


「我らが指導者ダガンネジブ様のお考えを伝えます――当会の新年度の方針は今まで通り対外的には、〝楽しく〟時事(じじ)、学業などの話題で論戦を繰り広げ、または雑談に興じる『サロン』とするが、内実は(きた)るべき災厄に備え、ギルドとは別動隊、偉大なる魔導士ビルセゼルトが個人的に動かせる兵隊を組織すること」


 つまり学生でなければ()()()()という制約はない。卒業年次生は卒業後も正式メンバーとして名を連ねるが、アラネルトレーネ以外の卒業年次生は南ギルドに職を得ている。それはギルドの動きをいち早く察知できる利点とともに、ギルドに反しての動きが()()()なるという事である。


「はい、ここまでいいかな?」

エンディーが言葉を切って議場を見渡した。


「今のエンディーの説明だと、反南ギルドみたいに聞こえるけど?」

「そっか、説明が下手だったね、ごめんよ……南ギルドの作戦がAだったとする。ギルドと同じ目的を達成するため、Aではなく作戦Bを採用したいとビルセゼルトが考えた時、我々はビルセゼルトの指示で作戦Bを実行するってことだね――()()()()と言った部分を()()()と訂正します。ほかには? なければ進めるよ」


 妖幻の魔導士ダガンネジブ様が九日間戦争より十八年の歳月を、最高位魔導士の一人として、(しゅうと)として、偉大なる魔導士ビルセゼルト様を観察し続けた結果、ビルセゼルト様には北と対立するつもりが全くないことが判っている。これは各メンバー入会の時に確認済みの事項で、今さら異論ないだろう。


 そもそも、九日間戦争は災厄の前兆、あるいは始まりであり、この戦争で我ら魔導士が分割された事こそ災厄の一つであると考える。


 災厄が本格化すると見込まれる四年後、正確には三年半後には、ビルセゼルト及び北ギルド長ホヴァセンシルは、ギルドの再統一を考えているのではないか?


 だが、現状、南北の対立は解消されず、特に西の統括魔女ドウカルネスの南への敵対心は強く、配下による小競(こぜ)り合いは今も続いている。そしてそのドウカルネスの背後には強力な魔導士スナファルデが隠れていると言うのがダガンネジブ様の見解だ。そして、賢者ホヴァセンシルがドウカルネスを扱いかねているのはそこに起因すると考えている――

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