勇者パーティとの再会、牙を向けるのは俺の番だ
王都を追放された俺は、フェンリルと共に辺境の村を訪れていた。
情報収集と、次の契約対象を探すためだ。
フェンリルの加護により、俺の身体能力は人間離れしたものになっていた。魔物に囲まれても、一瞬で片付けられる程度にはな。
そして運命のように、そこで再会したのが——勇者パーティの面々だった。
「おい、あれ見ろよ。あの腰抜けじゃねぇか!」
先に絡んできたのは、戦士ギル。俺を追放した張本人の一人だ。
「まさか生きてたとはな。まあ、どこかでモンスターの餌にでもなったと思ってたぜ」
その言葉に、フェンリルの耳がピクリと動いた。
「……こいつらか?」
「そうだ。俺を“役立たず”と切り捨てた連中だ」
フェンリルは小さく笑う。
「ならば、我が牙を振るう資格は十分にあるな」
俺は一歩、前に出た。
「お前らに教えてやるよ。今の俺が、どれだけ変わったかをな」
ギルが剣を抜く。
「おいおい、契約スキルの腰抜けが戦えるとでも……ぐっ!?」
ギルの剣が、空中で止まった。
フェンリルの威圧により、ギルはその場から一歩も動けなくなっていた。
「い、いったい……なんだこのプレッシャー……!」
「今の俺には、“世界を滅ぼす神獣”がついてるんだ」
俺はギルの目の前まで歩み寄り、見下ろすように言った。
「契約スキルは、戦えないスキルじゃない。“お前らが知らなかっただけ”なんだよ」
勇者パーティは青ざめ、誰一人言葉を返せなかった。
この日、辺境の村で目撃されたのは——
“追放された男が、元仲間を跪かせる”瞬間だった。