第9話 運命の出会い! 最初の仲間はマッドサイエンティスト?
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「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第9話になります。
読んでいただいていた皆さん大変お待たせしました。ついに初のパーティーメンバーの登場です。
彼女との出会いによって、それまでただの荷物持ちに過ぎなかったラックの異世界生活が大きく変化します。よろしければぜひお読みください。
異世界生活が始まって1ヶ月、俺はミッキーの派遣として色んなパーティの荷物持ちをしていた。
たしかに俺の運のおかげなのか、どのパーティもレアドロップを出し続けた。
おかげで俺は金には困らなくなったし、路上で寝ることもなく、最初から宿屋の部屋を借りることができた。装備もある程度整えられた。
ただ、俺の心は満たされなかった。
俺がついて行ったパーティーの奴らが、俺の能力でレアドロップ品を手に入れ、金を儲け装備を強くしていく。
このレアドロップ品は本来俺のものだ。俺のパーティが取るべきものだ。
それに、俺は荷物持ちだけで、何にもできていない。
やっぱり自分でパーティを作って、あのクソ女神を見返すんだ。
荷物を持ち歩きながら、俺は決意を固めていた。
1ヶ月の荷物持ちが終わった時、俺はレベル5になっていった。
俺は自分のステータスを確認する。
ラック(幸村 幸夫) 盗賊 レベル5
HP30 MP15 力10 速度20 技術20 魔力5 信仰5 運1100
レアスキル 『剛運』 『強運』
レベルは上がったけど、HPみたいな基礎能力はほとんど上がっていない。
ただただ運が爆上がりしているだけだ。
レベルが上がっても俺は本当に弱いままだった。やっぱりこれはどうしようもないらしい。
これが、レアスキルの呪いってやつかよ。
スキルポイントが15あったから、スキルのレベルを上げることにした。
よくわからないので、とりあえず『剛運』に5ポイント、『超運』に5ポイント、そして「盗賊」に5ポイント振ってみた。
『剛運』は「運判定確率アップ」が1倍から1.05倍に上がった。
これって強くなってるのかほんとに?
『超運』では、「運撃」を習得することができた。なになに、「運依存の強攻撃」と書いてある。
これって俺の運が高いから、めっちゃ強いんじゃないの?
しかし、よく見ると消費MPが30と書いてある。
俺のMPじゃそもそも使えねーじゃん。取って損したわ。
あとは、パッシブスキルの「運回避」も覚えた。運依存で攻撃を回避できるるらしい。
もしかして、俺の運なら攻撃を全部よけられるんじゃないの?
そして盗賊のスキルである「盗む」、「罠解除」を覚えた。
やっぱりどのゲームとかラノベでも、盗賊は盗んでなんぼだからな。
でも、うっかり女神様のパンツを盗まないようにしないとな。
スキルを振り終えた俺はついに、一から自分のパーティーメンバーを探すことにした。
俺の目的である女神エレクトラへの復讐を果たすには、強いパーティーメンバーが必要だからだ。
ギルドに行き、受付の巨乳のねえちゃんことアンに話しかけた。
「なあねーちゃん」
ついくせで、アンをねーちゃん呼ばわりしてしまった。
「私はねーちゃんじゃありません。アンって名前で呼んでください!」
アンはちょっと膨れている。さすが常に男が言い寄ってくるギルドの看板娘だ。かわいい。
「わかったよ、アン。俺はパーティーメンバーを募集したいんだけど、どうすればいい? 俺の目的のために、できるだけ強いメンバーをそろえたいんだ」
すると、アンはものすごく困惑した表情を見せる。
「え、ラックさんパーティー作るんですか? ……あのー、ほんと言いづらいんですけど、正直言ってラックさん弱すぎるので、募集しても誰も来ないと思いますよ?」
あまりにも冷たい宣告に絶望する俺。
「もういい……。俺冒険者やめて農民になる……」
落ち込んだ俺を見たアンは、慌てて言い直した。
「あ、ああ、でも、アンカールド中に伝わる有料の掲示板に書けば、もーしかしたら声がかかるかもしれませんよ。ラックさんとパーティーを組みたいっていう変わった人がいればですけど。1回1万イェンですけど、使いますか?」
なんでギルドの受付嬢に、冒険者の俺がここまで言われなきゃいけないんだ……。
ぶつぶつ言いながらも、藁にもすがる思いで俺はギルドの有料掲示板に募集を掲示した。
「パーティーメンバー3人募集! 俺は盗賊だから、戦士と魔法使いと僧侶希望。できるだけ上位職の方」
結構金かかったぞ、この掲示板。1回1万イェンってぼったくりじゃん。
前にも言ったけど、この世界の通貨は大体日本と一緒で、1万イェンは1万円くらい、だからな。
一気に所持金の10分の1くらいがなくなってしまった。これで誰も来なかったらどーしよ。
俺の書いた募集を見てアンは苦笑いをしていた。
「えっと、盗賊だけで上位職を募集するパーティって、ラックさんの世界で言うと『自分はボーカルだけでできますって言って、ギターとベースとドラムを募集するバンド』と同じくらいイタい行為ですよ。あ、これ異世界人の人から聞いたことわざなんですけどね。盗賊なんて誰でもなれちゃいますし」
ほんと、なんでこんなに言われなきゃならないんだ……。
俺の表情を見てアンはさすがにで言い過ぎたと察したらしい。
「……んんっ、と、とにかく、特に上位職の人はこの町には少ないですし、1人でいる上位職の人は変わった人ばかりですからね。よっぽど条件よくないと厳しいですよ」
言われたい放題の俺だが、ぐっとこらえてこう書き加えた。
「上位職の方なら、条件何でも飲みます」
すると、3日後にギルドのアンから連絡が入った。
「ラックさん、パーティーに入りたいって人が来ましたよ! しかも超上級職の方です。こんなラッキーは2度とありませんよ。お相手は、えーーーっと、とってもすごい人ですよ?」
アンの口調が明らかにおかしい。
あやしいな。でも上級職だよ? 来てくれるだけでラッキーってもんだろ。
やっぱ俺の運がいいからかな?
「ところでいつ来るって言ってた? その人」
アンは額に少し汗をかいている。
「えっと、もうすぐテレポートで着くって言ってましたよ、魔法電話がきましたから」
「テレポート? 魔法電話?」
そんなのあるのかよ。初めて聞いたわ。やっぱりここは魔法の世界、ハイファンタジーなのね。
「はい、魔法電話は貴族か相当なお金持ちしか使えません。ギルドにも1つしかありませんし。あと、テレポート魔法が使えるのは、相当高いレベルの魔法使いだけです」
おいおい、これ大当たりだろ。
貴族か金持ちのとこの子供ボンボンで高レベルの魔法使い。
あ-女だったらなー。俺の強運で異世界ハーレムの始まりだぜ。
そんな俺の心の声が通じたのか、ギルドにとびきりの美人が入ってきた。
赤みがかった長い黒髪に、ひときわ目立つ美貌。
そして何よりとびきりのないすばてぃ。
魔法使いのローブと学生服が融合したような変な服と、奇妙な眼鏡をかけているが、疑いようのない美人だ。
マジか! よしよし、超上玉キター! もしかして、本当に異世界ハーレム伝説の始まりなんじゃ?
すると、近くにいた1人の冒険者が美女に声をかける。この町で女遊びで有名なチャラだ。
「よっねえちゃん。めちゃくちゃいけてるね。俺のパーティに入んない? それとも俺の部屋に来る? 気持ちよくてすぐに昇天しちまうぜ?」
すると、いきなり電流でも走ったかのようにチャラの身は痙攣し、その後気絶した。
「すまないねぇ。君には全く興味がないし、邪魔だから黙ってもらったよ」
おいおい、今の何なんだ。チャラのほうが昇天しちまったじゃねぇか。
全くわからなかったけど、何かやったのか?
すると、女は俺の方に近づいてきた。どうやら、やはり応募してきたのはこの超絶美女らしい。
俺はキリッとした顔を作る。
「やあ。君が俺のパーティに募集してくれた子猫ちゃんかい? 俺はラック。並外れた運の持ち主だ。よろしく。君の名前はなんて言うんだい?」
俺の自己紹介を聞くと、相手の美女はふふっと意味ありげに笑い、自己紹介をはじめた。
「どうも。私はマジョリカ・マジョリティ。マジョって呼んでくれたまえ。職業はハイウイッチだよ。よろしく頼もう」
マジョは見た目通り、いかにもマッドサイエンティスト風の話し方をした。
というか職業ハイウィッチ? マジかよ。噂でうっすら聞いたことあるけど、魔法使いの最上級職だったよな。
俺の顔を見ていろいろ察したアンが、熱心にマジョの説明をしてくれた。
「マジョさんはアンカールドの超名門、国立アンカールド中央大学2年生で、なんと首席で合格したそうですよ。実家のマジョリティ公爵家は、アンカールドでも魔法研究の大家で、マジョさんも超高度な魔法使いと聞いています。ただ……」
うえーまじかよ。ガチで大当たりじゃん。公爵令嬢で名門校主席入学って、すげぇな。
ん、でもおかしいぞ。なんでこんなすごい人が、俺みたいな運だけ高い弱い盗賊のところにわざわざ来たんだ? もっといい相手いるだろ。
って、アン、『ただ…』ってなんだよ。
俺は先を聞くのが怖かったから、彼女の求める条件を聞いてみた。
なんせ、「何でも条件飲みます」って書いたからには、何らかの条件があるだろうからな。
「なあ、マジョさん。俺のところに来てくれたのはめっちゃうれしいんだけど、そもそもなんで俺のパーティーに入ろうと思ったんだ? いくら何でもあんたみたいなものすごく強い人が、俺みたいな弱い奴のパーティー応募するなんて、ちょっと信じられないからさ。いったいどんな条件が必要なんだ? そりゃ君みたいな美人ですごい魔法使いなら、どんな条件でも飲むよ。ぜひ俺とパーティーを組んでくれ」
すると、マジョはそれまで澄ましていた顔をにゃぁ、それはそれは嬉しそうにゆがませて、こう言った。
「ラック君。君は運がとても高いらしいねぇ。私の条件はただ一つ。私の魔法を毎日受けてもらう、それだけだよ」
え、という声も出なかった。
俺は瞬間的に否定する。
「いやいやいや、君何言ってんのさ。君に魔法打たれたら俺なんか即死でしょ。無理無理無理無理」
マジョは済ました顔で答える。
「大丈夫。私は攻撃魔法は使わないから。そもそも一切覚えてないしねぇ」
俺は一瞬、マジョの言っている意味が分からなかった。
へ、ど、どゆこと? 攻撃魔法が使えないハイウイッチって?
驚いてぽかんとしている俺をよそに、マジョはとても楽しそうだ。
「私の研究領域は妨害魔法さ。どんな妨害魔法を打ったら相手がどんな反応をするのか、それを検証するためにたくさんのパーティに入ったのだけど、まあ私目当ての輩たちは全員私の妨害魔法に耐えられず尻尾を巻いて逃げていったよ。随分手加減してあげたのにねぇ。でも」
と一気にまくし立てた後、マジョは俺のほうを見てとても楽しそうに言った。
そう、まるで獲物を見るハンターのように。
「君なら今度こそ楽しませてもらえそうだ。じゃあ、早速妨害魔法をかけていいかい?」
魔法って言っても妨害魔法か。
たしか、聞いた話じゃこの世界にはそんなに強い妨害魔法はなかったって言ってたような。
実際、今まで俺が所属してたパーティーでも、誰も妨害魔法なんて使ってなかったしな。
うん、多分大丈夫だろう。俺運めっちゃ強いし。
俺はマジョのほうを向き、力強く頷く。
「わかった。その条件をのむよ。これからよろしく」
と、手を出した瞬間だった。
握ったマジョの手から、明らかに超強力な毒が入ってくるのが分かった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ものすごいスピードでHPが減っていく。
俺はマジョと手をつないだまま、地面に尻餅をついてのたうち回っている。
「く、苦しいー! てか死ぬー! 助けてくれぇーー!!」
そんな俺を、マジョはさも楽しげな顔をして見ていたのが、ふいに驚いたような顔をした。
突然、俺にかかっていた毒が消えたのだ。
はぁ、はぁ、俺は息を切らしながら、
「何しやがるんだ!」
とキレた。
だが、マジョはそんなことは一切気にしていないようだ。
「はっはっは! 本当にすごいねぇ、君は。運が高いとは聞いていたが、まさかここまでとはねぇ。私の妨害魔法がこんなに早く切れたのは初めてだよ。ふっふっふ。これが未知なる興奮というものか……」
恍惚とした顔のマジョは、高らかに言った。
「ぜひ! 君のパーティに入れてくれたまえ。君がこの世界で望むものは、私の力が及ぶ限り何でも実現して見せよう。何なら、今後はお金も気にしなくていい。私は貴族だからねぇ。その見返りとして、毎日私の実験台になってもらうよ」
おいおいマジかよ、イカれてんじゃん、こいつ。
これがマッドサイエンティストって奴か。とんでもない奴が来てしまったな。
ただ、正直言ってマジョの提案は魅力的だ。
マジョはとんでもなくレベルの高い魔法使いだ。
今、女神に復讐する力を何一つ持っていない俺からすれば、マジョがいるだけでいろんなことができるようになるからな。
これからは自分のパーティーで冒険ができるだろうし、今まで俺が触ることも出来なかった魔物も倒せるはずだ。
ただ、あれ妨害魔法を毎日か~。
これからどんな妨害魔法を受けるのかと思うと身震いが止まらなかった。
でも、俺は決めたんだ。俺はこの世界で成り上がる。女神エレクトラに復讐する。そのためには、こいつの力がどうしても必要だ。
それに、マジョってめっちゃ美人だしな。
「わかったよ、マジョ。俺には君の力が必要だ。君の条件も全部飲むよ。だから、俺のこの世界で成り上がらせてほしい」
マジョは本当にうれしそうに笑った。
「喜んで。こちらこそ、よろしく頼むよ」
そう言うと、マジョは再び恍惚の表情を浮かべた。
「君の運は本当にすばらしい! 私がこれまで人間相手に試せなかった多くの妨害魔法を試せそうだ。君とパーティを組むことで、私の研究が大幅に進むことを期待しているよ。いやぁ、楽しみで仕方がないねぇ」
こうして、俺とマジョはギルドでパーティ登録を行った。
ついに、ついに俺の異世界冒険記が始まるんだ。
マジョっていう最高のメンバーが来てくれた。
毎日妨害魔法の人体実験っていう、重い十字架の代わりだけど……。
もしかして、どっちも俺の強運のなせる技なのか?
第9話 「運命の出会い! 最初の仲間はマッドサイエンティスト?」を読んでいただきありがとうございました。
この話を構想し出したときから決まっていたパーティーメンバー、マジョをついに登場させることができました。
皆さんマジョの人物についてどう思われましたか? 私はとても気に入っているキャラクターの1人です。
妨害魔法の実験という重い十字架の代わりに、ラックは最強のパーティーメンバーを得ました。
第10話ではいよいよ、ラックが自分のパーティーで冒険に出ます。しかし現実は……。よろしくお願いします。




