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(第2章完結!)女神ガチャに外れて捨てられた俺が、運だけで異世界を成り上がる  作者: エルティ
第2章 女神ガチャに外れて捨てられた俺が、運だけで英雄になる
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第40話① アンカールドの未来と、俺たちの今と(前編)

 ページを開いていただきありがとうございます。


 「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第40話①です。


 今回は、魔王とラック達の駆け引きが描かれます。


 どんな駆け引きになるのか。そして、魔王の意外な行動とは。


 よろしくお願いします。

 「まずは、ここまで来られたことを素直に認めよう、運に愛されし男、ラックよ。まずは、座るがよい」


 魔王が指を差すと、机と椅子が無から現れた。おいおいこれどうなってんだよ。


 「フフッ。さすがは魔王と言ったところか。じゃあ、お言葉に甘えて座ろうじゃないかい」


 「ああ。ありがとな魔王」


 マジョに促されて俺たちは座った。


 魔王は自身の持つ威圧感とは遠い、静かな口調で話し始めた。


 「さて、ある程度は把握しているつもりだが、改めてこの魔王のところまで来た理由と目的を聞こうか」


 ここだ。


 俺の直感が告げている。魔王に嘘は通用しない。


 だから、自分の持つ思いを思い切りぶつけるしかない。


 「ああ。直接的な理由は、取引だ。知ってると思うけど、俺の友達家族が悪い奴にだまされて、このままじゃ大切な友達がひどい目に遭わされてしまう。それを避けるために今すぐ5億イェン必要なんだ」


 魔王は静かに聞いている。その目、表情からは感情は伝わってこない。話に興味がないわけではなく、話を聞くのに徹しているという印象だ。


 「俺の考えじゃすぐに5億出せるのは限られている。その中で俺は魔王、あんたを交渉相手に選んだ。魔族は今食糧不足で苦しんでいるんだろ? でも、ユタカーじゃヨネが売れなくて余っている。ここをつなげば5億の問題が解決できるだけじゃなくて、長期的にお互いに利益があると思ったんだ」


 魔王は右拳を顎につけた。


 「なるほど、商売上手だな、ラックよ。確かに我らは戦争の影響で食糧が不足している。5億は我と言えども簡単ではないが、お前が信用に足る人間だと判断したら良い提案だ。だが」


 そう言うと、それまで感情を見せなかった魔王の表情に少しだけ怒りの色が見えた。


 「我らの取引だけでは、この世界の問題は解決しない。お前は我に未来の話をしたいと言った。それを話すがよい。それを聞いて判断しよう」


 ここまで来た。俺は仲間達と顔を見合わせる。思いは1つだ。


 「ああ。俺は、この世界、アンカールドが好きなんだよ。俺はまだここに来て三ヶ月くらいだけど、会う奴がみんないい奴ばっかでさ。まあ、そうじゃない奴もいるけど、でもだいたいいい奴らだよ。人類だけじゃなくて、魔族もいい奴らばっかだ」


 俺はそこで話を切った。魔王は黙って聞いている。


 「なのに、なんでそのいい奴ら同士が戦争してるんだ? 人類と魔族って本来補い合う関係だろ。それが戦争ってどう考えても無駄だし、魔族の都市見たから分かるけど、どうやっても人類は勝てないよな。なのに人類側から攻めてる。アンカールド王が悪いのか、それとも別の誰かが悪いのか、分からないけどな」


 魔王は変わらず黙っている。表情に変化はない。


 「このままじゃただ人が死ぬだけ、不幸になるだけだ。だから、この無駄な戦争を、俺たちはどうにかして止めたいんだ。そして、人類と魔族が手を取り合う未来を作りたい。だけど、俺たちの力だけじゃ絶対に無理だ。俺はみんなで考えて、人の力を借りて何とかしたい。みんなってのは人類だけじゃない、魔族も、だ」


 魔王は深く頷いた。その表情からはさっきまでうっすらと出ていた怒りの色が消え、穏やかにも見える。


 「ふむ。この世界に来て三月で、よくぞそこまでたどり着いた。この世界の者にはなかなか気づけぬ発想だ。それで、どうすると言うのだ?」


 「わからない。わからないから、俺たちはもっとこの世界を知る必要があると思ってる。全部の都市に行って、全部の女神様に会って、都市の人々と話して。そうやって、知ることでしか見えてこないと思うんだ。実際、魔王領に来るまで、魔族のことなんて何も知らなかったからな」


 俺の言葉に、プリンが続けた。


 「私は最初、勇者パーティー候補としてこの世界に来ました。でも、魔王さんが悪だ、倒せって言われるだけで、納得いかなかったんです。そもそも魔族とか魔王さんのことを知らないのに。それに、自分に与えられた力を誰かを倒すために使いたくはなかったんです。この世界で困っている誰かのために使いたい、そういう思いでここまでラックと一緒に来ました」


 パワーが大きな声で言う。


 「おらは、みんなとおいしい飯が食いたいだぁ~。だから、戦争なんていらないだぁ~」


 最後に魔王に語りかけるのは、俺の相棒、マジョだ。


 「魔王様、お初お目にかかります。アンカールド王国マジョリティ公爵家が長女、マジョでございます。我が父も今の大陸の現状を憂えています。ですが、アンカールド王は取り付かれたように魔族との戦争に走っており、誰が忠告をしても聞かないとのことです。私はいずれラックと共に、アンカールド王国を中から変えるつもりです」


 魔王は、マジョの方をじっと見た。


 「マジョとやら、お主は大貴族のようだな。ならば、王を戦に駆り立てているものの存在に、感づいてはいるのだろう?」


 「はい、一応は。ですが、現状では手の出しようがありません。ですから、ここで手を取り合う必要があるのです。父からは、父の代理として、人類の代表としてここに赴くよう言われております」


 「ふむ。元凶は分かっているが、戦力が足りず打倒できない、ということだな」


 そう言うと、魔王は少しだけ、苦いものでも噛んだような顔をした。


 「我は、魔王城の外に出ることができぬ。もし我が城を出れば、魔王に侵略の意思あり、と見なされるからだ。魔族もまた同様で、簡単に王国内に入ることはできぬ。我にできるのは、せいぜい今の現状を引き延ばすことでしかないのだ」


 それはその通りだろう。


 俺たちは、魔族の置かれた難しい現状に、ただ頷くしかなかった。


 「だからこそ、お主らに期待したい。お主らが王国内を回り、王国を中から変えるのだ。その中で真の敵も見えてこよう。我は、それをお主らに委ねる。だから、5億の取引に応じよう。今すぐ5億を用意させる」


 この言葉を待っていた!


 「本当か? ありがとう、魔王。これで俺の友達を助けられる。それに、任せてくれよ。俺の運は最強だからな。どんな困難も切り抜けるし、どんな攻撃だって防いでみせる」


 「『最強の運』か。だが」


 そう言った瞬間、今まで動かなかった魔王が一瞬で俺との距離を詰める。


 魔王の剣が、俺の胸に向かってきた。


 は? 何で?


 考える暇なんてなかった。


 受けるしか、方法はない。


 「運パリィ!」


 俺は両脇のメタルの短剣を引き抜き、魔王の攻撃に備えた。


 スッ。


 魔王の剣が俺の「運パリィ」をすり抜ける。


 そして、「運回避」も発動しない。


 なぜだ。


 「グランドチェイン!」


 遅れてマジョが、最上級の妨害魔法を放つ。


 しかし、魔王にはまるで通用していなかった。魔王に魔法がかかる寸前で魔法が霧散する。


 死んだ。


 俺のこの世界の冒険は、ここで終わりなのか。


 そう思った時、魔王の剣が俺の胸の前で止まった。


 俺は呆然として動けない。


 いくら魔王とは言え、俺の運やマジョの妨害魔法が通用しないだなんて。


 「魔王、これは一体どういうことだい? マウスちゃんに危害を加えるなら許さないが?」


 マジョは明らかに怒っている。


 目を見開き、ものすごい表情で魔王をにらみつけている。


 こんなマジョは今まで見たことがない。


 「己の能力を過信するな、ということだ。ラック、お前の運は確かに素晴らしい。並の者の攻撃など当たらないだろう。しかし、この世界にはお前の運をしのぐ者が存在する。我もその1人だ。恐らくだが、女神達もな」


 女神、と聞いて俺は止まった。


 女神が、俺の運を上回ってるだって? それじゃ、あいつに復讐するためにはどうすりゃいいんだよ。


 「同じように、マジョの妨害魔法も、プリンの暗黒魔法も万能とはなりえない。パワーの力もそうだ。上には上がいる。目的を達成したいなら、お前達は更に鍛錬する必要がある。覚えておくがよい」


 呆然としている俺の方を、プリンがポンと優しくたたいた。


 「魔王さんの言う通りだよ。次に、負けないようにすればいいんだから」


 そうだ。ここで死ななかったのはラッキーだ。


 「こういうこともあるかもってことだな。ありがとう魔王。ちょっと、いやかなりびっくりしたけどな」


 そう言うと、魔王は右指をパチンと鳴らした。


 すると、家来と思われる魔族が、ケースを複数持ってきた。


 「約束だ、ラック。5億を持って行くがよい。我らも食糧が定期的に手に入るのは非常に助かる」

 

 「こちらこそありがとう、魔王。本当に助かったよ」


 俺は魔王の前に歩み寄り、右手を出した。魔王は俺の右手を握り、握手をする。


 「我は、お主らに賭けてみたい。異世界人とアンカールド人のパーティーであるお前達にこそ、この世界を変える力があるはずだ」


 「フフッ。期待されたものだねぇ。魔王の期待とあれば、答えるしかないねぇ」


 マジョは満足そうに頷いている。


 「だが、お主達だけでは難しい面もあるだろう。魔族の力も必要になるときがあるはずだ。ガードン司令官の娘、エリーをお前達専属としよう。何かあったら、エリーを通して我を頼るがよい。我も、お主らへの協力は惜しむまい。では、行くのだ、若き革命者達よ」


 そう言うと、魔王はマントを翻し、翼をはためかせ部屋を後にした。


 「よっしゃーーー!! これで、ミッキーを救えるぞ」


 俺は両膝を曲げて大声を出した。拳に力が入る。思いつきで魔王のところまで体当たりでやってきて、最高の結果を得た。


 「さあ、急ごうか。ミッキーの式まであと2週間だよ。ワープと早馬でぎりぎり間に合うかどうかと言ったところだからねぇ。それに、父上の調査が出るのもそろそろだろうしね」


 「うん。急ごうよ」


 「次は戦い、おいらの出番だぁ~!」


 俺たちは魔王の家来に案内され、再びワープゲード? に入った。


 そして、気がついたらガードンに着いていた。




 「どうだった?」


 エリーちゃんが心配そうに俺たちを見ている。


 「ああ。魔王の助けが得られた。5億ももらったし、今後何かあったら助けてくれるって。ありがとう、エリーちゃん」


 ガードン司令官のゴーンさんもエリーちゃんの横にいた。


 「あの魔王様を本当に説得するとは、信じられんな。魔王様が君たちにこの世界の未来を見た、と言うことか。私からも頼む、この無駄な戦争を終わらせてくれ。我々だけでは無理だ」


 「ああ、今度は王国に戻って王国内から変えてやるよ。ありがとう、ゴーンさん。じゃあ、行くから」


 そう言って、俺たちは急ぎヴェネッツへ向けて馬車を走らせた。


 ガードンを出るとき、多くの魔族が俺たちを見送って手を振ってくれた。


 「お兄ちゃん、お姉ちゃん。またおいしいヨネ持ってきてね~」


 魔族の子供達が俺たちに手を振る。


 「またな!」

 



 さあ、いよいよだ。


 ミッキーを俺たちの手に取り戻すんだ。


 俺たちは国境沿いの風を受けながら、前だけを見据えていた。


 その先に待っているのが、たとえどんな困難だとしても。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。


 第40話①「アンカールドの未来と、俺たちの今と(前編)」でした。いかがだったでしょうか。


 今回は魔王との駆け引きを描くと同時に、今後現れるであろう潜在敵の存在をほのめかしています。


 そして、次回第40話②で第2章が完結となります。


 ミッキーの結婚やアークラーツ家との決着はどうなるのでしょうか。


 そして、次話の最後にこの世界の闇で蠢く勢力の続きが描かれます。(単行本1冊のページ数ごとに1回、小出しで情報を開示していきます。)


 ここまで来られるとは正直思っていませんでした。


 読んでくださっている皆さんに感謝、感謝です。


 厳しいご指摘等いつでもお待ちしております。


 今後とも、よろしくお願いします。 

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