第39話 おいしいヨネと熱い思い、俺の剛運で魔王に届け
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「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第39話です。
今回は、ガードンについたラック達が、パワーの提案によって司令部と会う道が開ける話です。
その先にいる魔王に、ラック達はたどり着くことができるのでしょうか。
そして、ミッキーを魔の手から救うことはできるのか?
よろしくお願いします。
俺たちはエリーちゃんのお陰で何とか戦闘と拘束を回避することができた。
エリーちゃんに導かれ、俺たちは兵の詰め所みたいな所の応接室に入った。
皆一斉に椅子に腰掛ける。
ん、なんだこの椅子、座るだけで疲れが取れるぞ。
「すまないな。戦争中だからここで我慢してくれ。さっきのことだけど、戦争中に商人以外の人間が紛れ込んだら、間違いなく敵と思ってしまうんだ」
「いや、こっちこそすまなかった。正直、あそこでエリーちゃんがいなかったらやばかったよ」
エリーちゃんは苦笑いをしている。
あの衛兵を制することができるってことは、それなりの地位なのか? 確か、2等偵察兵って言ってたよな。
「私はお前達が敵だとは思っていない。だから助けたんだ」
「ありがとうな。当然だけど、俺たちは戦いに来たわけじゃない」
「そうよ。魔族と協力することはあっても、戦う意味なんてないもの」
プリンが俺の発言に同調する。
エリーちゃんも深く頷く。
「その通りだ。魔族と人類が戦う意味など、本来ないんだよ。それで、スタードの人間がこんな所まで何をしに来たんだ?」
俺は両手を組み、ぐっと構えた。
「ああ。時間がないから率直に言うわ。魔族の土地って作物があまり育たないんだろ? で、今戦争中だから、なおさら食糧が足りないはずだよな。だから、ユタカーのヨネを大量に持ってきたんだ。あれを今後5年間ユタカーから直接安く仕入れて運ぶから、今すぐ5億イェン出してほしい。できれば、魔王に直接会って話がしたいんだ」
俺の話に、エリーちゃんは目を白黒させている。
「え、えっと、ちょっと待て。ヨネを直接納入? 5億イェン? 魔王様に会わせろ? いきなり無茶なことばかりじゃないか。しかし……」
そう言うと、エリーちゃんは黙った。
「俺は、いや俺たちパーティーは、この世界の問題を解決したいと思って活動している。ユタカーじゃヨネが余ってる。魔王領じゃ食料が足りない。この2つを結びつければお互いにとって利益があるだろ。俺らの世界で言うwinーwinってやつだ」
エリーちゃんはまだ黙っている。
「それに、あと1ヶ月後までに5億をヴェネッツまで持って行かないと、俺の友達が無理矢理結婚させられてしまうんだ。相手は最低な奴だから、絶対に阻止しなきゃならない。頼むよエリーちゃん、魔王と直接交渉させてほしい」
エリーちゃんはまだ黙っているが、事情を飲み込んだようだ。
「お前たちの言いたいことはよく分かった。しかしだな、」
グウゥゥゥゥゥ。
その瞬間、エリーちゃんのお腹が盛大に鳴った。
「え?」
「ほう」
プリンとマジョが反応すると、エリーちゃんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「い、いや、これは、2日ご飯を食べていなくて……。前線の兵士や子供達に食べさせるために、私たち後方支援部員は我慢しているんだが……。うう、恥ずかしい」
その時だった。それまで黙っていた、食べること以外興味がないはずのパワーから、意外な言葉出たのは。
「お腹すいてるなら、みんなでユタカーのヨネを食べるだぁ~。ユタカーのヨネはうまいだぁ~。魔族の人に食べてもらえば、ユタカーのヨネのうまさが分かってもらえるだぁ~」
それだ! おいおいパワーお前天才かよ。
「めっちゃいいこと言うじゃねーかパワー。よし、エリーちゃん、ガードンの司令官に言ってくれ。持ってきた中からみんなにヨネを振る舞うって。それでよければ、司令官と話をさせてくれ」
ヨネを振る舞う、と聞いてエリーちゃんは思わずよだれを垂らして慌てて拭き取った。それもまたかわいい。
「本当か? 分かった。その申し出、ありがたく受けよう。今から司令官に事情を説明してくるから、取引についてはその後でいいか」
「ああ、大丈夫だ。頼んだよ」
1時間後、もう夕方にさしかかる時間になると、ガードン中にヨネの炊けたいいにおいが漂ってきた。
元々活気のあったガードン内だったけど、においと共に戦争中とは思えないほど人々に笑顔があふれてきた。
「ねえねえ、今日はヨネをお腹いっぱい食べられるってほんと?」
「そうよ。人類が持ってきてくれたって。人類にも優しい人がいるのね」
何か、こういう会話を聞いてるとうれしくなるな。
「パワー本当にいいこと言ったね。みんな喜んでるし、これで話がうまくいくといいね」
プリンがとてもうれしそうだ。プリンは誰よりも「この世界の人を救いたい、人のためになることをしたい」って思ってるからな。
「おら、みんなとヨネを食べたかっただけだぁ~。ユタカーのヨネはうまいだぁ~」
向こうから、イノブーに乗ったエリーちゃんがやってくる。
エリーちゃんはイノブーから降りると銀色の髪をなびかせながらイノブーの頭をなで、こちらを向いた。
「ラック、司令官から伝言だ。幹部と共に今回のふるまいに礼がしたい、司令部で共にヨネを食べよう、以上だ。さあ、私が案内するから、来てくれないか」
この展開を待っていた。
「もちろん、俺も司令官に挨拶したいしな。でも、エリーちゃんって幹部なの? 確か、2等偵察兵、だったっけ」
「ああ。お前達だけに言うから口外しないでほしいんだが、ガードン司令官は私の父だ。お前達は私の知り合いだし、私が案内することになったんだ」
「フフッ。エリーちゃんが司令官の娘とはねぇ。マウスちゃん、この偶然も君の運が引き寄せたものだよ」
「かもな。よし、じゃあお言葉に甘えようか」
そうして俺たちは、エリーちゃんに続いてガードンの司令部に入っていった。
ガードンの城、というか砦の内部は、外に較べて更にハイテクだった。
冬なのに全く寒くなく、自動で移動できる床が完備されていて、さらにはよく分からない機器が至る所に設置されている。
エリーちゃんの話では、それらは全て魔法技術で動いているらしい。どうやら魔族は、俺たちの世界で言う電力のように、魔法力を機械? で生み出し、いろんなことに使っているって話だ。
この世界に電気みたいなのがあるなら、何でもできるんじゃないの? やっぱ、魔族と戦うなんて無謀だし無駄だよな。力合わせた方が絶対にいい。
「ここが司令部だ。入るぞ」
エリーちゃんに促され入る。
中を見ると、会議室のような感じの場所だった。そこに、4人の男女が座っている。
それぞれ人間と見分けがつかないくらい似ているが、尻尾が生えていたり獣耳が生えていたり角が生えていたりしている。
そして、誰を見ても、圧倒的なレベル差を感じる。戦ったら一瞬だな。
「お招きいただきありがとうございます。俺は人類領スタード所属の冒険者、ラックっていいます。後ろにいるのは俺のパーティーメンバーです」
すると、奥の男が立ち上がりこちらに来た。背は高くはないが、明らかに屈強な戦士だ。見た目は肌の色以外人間と変わらない。エリーちゃんと同じく、頭に角が1本生えている。
「私がガードン司令官のゴーンだ。今回はヨネの提供心から感謝する。座って一緒にヨネを食べながら話をしよう」
俺たちは促されて対面の席に座り、ヨネを食べ始めた。
「やっぱり、ユタカーのヨネはおいしいわね」
女の幹部がおいしそうに食べている。他の幹部も、ガツガツ食べていた。
「これは、どこで取れたヨネなんだ?」
別の幹部が声をかけた。
「はい。俺の知り合いの、ユタカーのロッキーロード伯爵領です」
「ロッキーロード産か。あそこのはどれもうまいんだよなぁ」
食べ終わった後、司令官のゴーンさんは一気に真剣な表情になった。ここが大事だ。
「ラック殿、貴殿の要望は娘から聞いている。以前、娘を助けてくれたようだね。その節は感謝しているよ」
俺は頷きながら言葉を待った。
「それで、要望についてだが、今の段階では厳しいと言わざるを得ない」
そうきたか。予想通りだ。
「どうしてですか?」
ゴーンさんは腕を組んだ。
「まず、貴殿らの申し出が本当か確かめる方法がない。エリーを助けてくれたのは確かだし、私の勘が貴殿らを信じてもいいとは告げているが、万が一人類が我々を陥れるために仕向けた罠ともかぎらないからな」
「お父様、この人達は」
「エリー2等偵察兵は口を慎め。今は司令官として話をしている」
そう言われ、エリーちゃんは不服そうに黙った。
「次に、我が司令部には5億イェンの現金がないということだ。1年で1億なら対応は可能だが、今すぐ5億はたとえ魔王城でも難しい。ガードンではなおさらというわけだ」
「そして3つ目だが、5億の話をするなら魔王様の許可が必要だ。しかし、魔王様に会わせることはできない」
「なぜでしょうか?」
「魔王様は魔王領の最高戦力だ。すなわち、最高の機密情報ということになる。それをいくら友好的とはいえ、人類に会わせるわけにはいかんのだ」
ゴーンさんの言っていることは当然のことだろう。
このままじゃ、完全に手詰まりだ。
じゃあ、ここは俺の運にかけるしかないよなぁ!
「魔王さん、どうせこの会話聞いてますよね? 魔族の技術があれば、ここと魔王城はつながってるはずだし。俺は、あなたと話がしたい。商売の話だけじゃない、このアンカールド大陸の未来の話だ」
言った瞬間、一番体のでかい幹部が立ち上がり、ドンと机を叩いた。
「おい、さすがに魔王様に対して不敬だぞ! それに、お前はただの冒険者だろう。それが、魔王様とアンカールドの未来につて話すだと? ふざけるのもいい加減にしろ」
その時だった。
『やめよ、ゴルド。客人に失礼である』
この、遠くから聞こえるこの声は。
「はっ。失礼しました、魔王様」
魔王が、魔王が反応してくれた!
「魔王さんありがとう。俺はラックって言います。話を聞いてくれませんか? できれば、会って直接話がしたいです」
『よかろう。魔都ハイルランドへのワープゲートを使って我の元へ来るが良い。待っているぞ』
「何と、よいのですか魔王様」
ゴーンさんが焦っている。
『よい。我は我の直感を信じる』
そうして、俺たちは魔王城に直通のワープゲートに案内された。
何というか、空間の境目がない不思議な場所だ。宇宙の中、みたいな。
ワープって、俺ら現代人の技術を完全に超えてるよな。
「そういや、マジョもワープできたよな」
「ああ。ただ、このワープゲートは魔力を持たない者も移動させることができる。魔族の魔法技術の結晶さ」
司令官のゴーンさんと娘のエリーちゃんが見送ってくれた。
「みんな、魔王様によろしくね」
「ああ」
そうして、俺たちは光に包まれた。何か、以前エレクトラにスタードに落とされた時の感じと似てるな。
気がつくと、大きな広間の真ん中にいた。
見回すと、俺たちを囲むように、様々な魔族が2列で並んでいる。
そう、奥の椅子に座る男を囲むように。
あれが、魔王か。
「よくぞここまでたどり着いたな、剛運を持ちし冒険者ラックよ」
魔王は、身長180cmぐらい、見た目は30代? くらいで、全く人類と変わらない。顔はかなりのイケメンだ。
ただし、背中には黒い羽根が生えている。そして、今まで感じたことがないくらいの威圧感が漂っていた。
え、てか俺のスキルがばれてる? なんで?
「魔王様、恐れ多いのですが、なぜこのような者を魔王城に、しかもこの神聖な王の間に呼んだのですか? しかも、緊急用のワープゲートまで使わせて。これでは人類に我が魔族の機密情報を伝えているようなものですぞ」
「そうです魔王様、この者どもはここで始末するのが一番安全です」
幹部達が次々に魔王に反論する。
こいつら口々にマジで物騒なこと言ってんな。マジョの妨害魔法とプリンの暗黒魔法をもってしても、ここを切り抜けるの無理だろ。
なら、俺の運とトーク力でどうにかするしかないわな。これも、俺の戦いだ!
「魔王さん、俺はあんたと未来の話がしたいんだ。頼むから人払いしてくれないか?」
「何だと、貴様、弱いくせに増長するのもいい加減にしろ! 今すぐここで消し炭にしてやろうか!」
魔法使い型の女幹部が構える。俺も、短剣に手を添えようとした、その時だった。
「やめよ。それとも、我に逆らうというのか、パーラ」
パーラと言われた幹部は恐れるかのように跪いた。
「い、いえ私は」
「人払いをせよ。我は、ラック達と話がしたい」
そう魔王が言うと、だれも逆らえないのか、俺たちをにらみつけながら部屋を出て行った。
ここまで持ってこれた。ここからだ。
さあ、未来の話をしようか、魔王よ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
第39話「おいしいヨネと熱い思い、俺の剛運で魔王に届け」でした。いかがだったでしょうか。
ラックの剛運によって、ついに魔王との対面を果たします。
魔王との交渉、そしてアンカールド大陸の未来はどうなるのでしょうか。
あと2話、第40話①と②で第2部が完結となります。
最後までよろしくお願いします。
なお、第3部以降ももちろん続けるつもりです。
また、正月休みに、作品全体の表記や表現の見直し、統一を行う予定です。
ラックのキャラも最初から結構ずれていますしね。マジョだけは、一切ずれていませんが(笑)




