第38話 魔王領へ! エリーちゃん、元気にしてた?
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「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第38話です。
今回は、ラック達がロッキーロード伯爵家の借金問題を解決になんと魔族領に行こうとします。
果たして、魔族の美少女エリーに再会し、うまく話をつないでもらうことはできるのでしょうか。
それでは、どうぞ。
その後、俺たちは、冒険者の酒場で野郎どもとしこたま飲み、ゲースの悪口を言いまくってホテルに帰り休んだ。
次の朝、俺たちは早速出発することにした。魔王に会うためには時間がないからな。
馬車に乗り込もうとすると、野郎どもが門の前に集まっている。
「兄貴ィ、もう帰るんすか? もっといてくださいよ」
「そうですよ兄貴。またおごってくださいよ」
「よっヴェネッツの英雄!」
全く、こいつらは。
「俺を兄貴って呼ぶな! じゃあな、兄弟。またな」
俺はジェリーとリッチーの方を向いた。
「いろいろすまないな。いいのか? 俺が直接魔族と取引しても」
「かまいまへん。ラックさんにはお世話になってますので、どうぞご自由にされてください」
「本当に5億稼いだら、私ら商人顔負けですわ。でも、ラックさんならできるんちゃいますか」
2人とも、本当にいい奴だな。
「ああ。魔王に会ってくるわ。またな」
俺たちはたくさんの仲間に見守られながらヴェネッツを後にした。
俺たちはユタカーのロッキーロード家領を経由して人類領の対魔城塞都市ゴリアテに行き、そこから魔王領の最前線都市ガードンに入るべく馬車を走らせた。
「ねぇラック。魔王に会うって言っても、どうするつもりなの?」
常識人のプリンが率直な疑問を伝えてくる。
「ああそれな。俺たちの魔族の知り合いが1人いるだろ。エリーちゃんだよ。エリーちゃんを頼ってガードンから魔族領に入るんだ」
「エリーかぁ。元気かな?」
「ふむ。確か、エリーはガードン所属とか言っていたねぇ」
マジョが思い出したように話す。
「そうなんだよ。エリーちゃんがガードンにいれば、ガードンの司令官なんかとつないでくれないかなって。そこから魔王に売り込みたいんだ」
「すごいこと考えるよねラックって。でも、エリーちゃんが偵察とかでいなかったらどうするの?」
確かに、プリンの言うとおりだ。
「まあ、その時はやばいかもな。でも」
俺は声に力を込めた。
「俺は俺の運を誰より信じてる。お互いを補い合える最高のパーティーメンバーに出会ったのも、ヴェネッツで英雄扱いされてるのも、全部運のお陰だってな。今、ガードンにエリーちゃんがいなかったら正直打つ手がない。でも、いるはずだ。俺は強くはないけど、俺の運だけは俺を裏切ったことがないからな」
「フフッ。マウスちゃんも言うようになったじゃないかい。パーティーリーダーがこう言うんだ。私たちはついて行くだけだよ」
「そうね。ラックは今までも無理でしょってことを全部やってのけてるから、本当に魔王に会って交渉できちゃいそうだもんね」
すると、それまで肉を食べていたパワーがニッコリ笑った。
「おらもラックの運を信じているだぁ~」
「ああ。お前らが俺を信じているように、俺もお前らを信じてるぞ」
「ただ、問題はどうやってガードンに入るかだねぇ。ゴリアテからガードンの間は戦争地帯だ。今行き来できているのはつてのあるヴェネッツ商人だけだよ。まあ、考えはあるんだろう、マウスちゃん」
やっぱ、マジョって質問しながら実は全部分かってるよな。
「ああ。策は我にあり、だ」
馬車を飛ばしに飛ばして3日後、俺たちは農水都市ユタカーのロッキーロード伯爵家領についた。
「お久しぶりです、リッキーさん」
「やあ、ラック君。久しぶりだね」
リッキーさんは相変わらず領民に混じりながら農業に精を出していた。
「ラック! みんな!」
ミッキーも農作業をしていたようで、作業着でやってきた。
いや、ミッキーは何を着ててもかわいいわ。
「リッキーさん、少し話があるんですが。できれば、ミッキーも一緒に」
「分かった。中に入ろうか」
リッキーさんは汗を拭いながら言った。
ロッキーロード伯爵邸の応接間に俺たちは座った。
ヴェネッツでゲースから聞いたことを全部言うわけにはいかない。
俺は言葉を選んだ。
「ヴェネッツに行ってアークラーツ家について調べてきたんですが、結論から言いますね。言いづらいんですが、リッキーさんは騙されていました。アークラーツ家は明らかに悪意を持っています」
「騙されていた?」
リッキーさんは固まっている。
それはそうだろう。アークラーツ家とは先代からの仲だったと言ってたしな。
それが全くの偽りだったというわけだ。
「……と言うことは、私はまんまと5億の借金をさせられたということか。領主として失格だな」
「それは違います。リッキーさんはあくまで領民のためを思って決断されただけです。悪いのはそういう善意につけ込む悪意です。」
「そう言ってくれると、少しは楽にはなるね。でも、借金は貴族と貴族の約束だ。それを返せない限り、いかに相手が悪であっても娘を差し出さなければならない」
「それだけじゃありません。言いづらいんですが、相手は借金をチャラにすると言って後で裏切り、最終的にはロッキーロード家を乗っ取るつもりです」
リッキーさんは肩を落とした。
「何だって。何と言うことだ。……ミッキーすまない、力のない父のせいでこのようなことになってしまって」
それまで黙って聞いていたミッキーは静かに首を横に振る。
「いいの。今までお父様お母様に迷惑をかけてきたから、この家の役に立てるだけで私はいいの」
そういうミッキーの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
ミッキーにこの涙を流させるわけにはいかない。
「マウスちゃん。分かっているだろう?」
「ああ。リッキーさん、お願いがあります。今年ヨネが大豊作だって言ってましたよね。その余ったヨネ、俺に預けてくれませんか。結婚の日までに5億作ってきますんで」
「ええ? ヨネで5億を作る? それは無理だよ。前にも言ったが」
「はい。ユタカー以外の人類はムギーが主食でヨネはあまり食べないと。ですが、ヨネを喜んで食べる人たちが他にいます。魔族です」
リッキーさんもミッキーも驚いた顔を見せた。
「魔族? 君たちは、魔族にヨネを売ろうというのかい? 本気で言っているのか?」
「本気どころか、魔王に直接会って売り込みますよ。魔族は食料が足りない。ここはお金が足りない。需要と供給がマッチしているじゃないですか。任せてください、魔族にもつてはあるし、俺の運は最強なんで。必ず魔王に会ってきますよ」
「しかし、仮にそれができたとしても、ヴェネッツ商人が黙っていないだろう。ユタカーの農産物はヴェネッツを通して売るのが通例だからね」
そう来ると思った。俺は胸を張った。
「いや、俺ヴェネッツの英雄って言われて、向こうの商人ギルド長と友達なんで、もう話はつけてますから」
「ラックって一見頼りなさそうに見えますけど、ここぞというときはちゃんとやってくれます。伯爵、私たちに任せてください」
「おらたちにまかせるだぁ~」
それでもリッキーさんは戸惑っていた。
「いや、しかしだね」
「お父様。私たちには今打つ手がありません。ラックを信じてみませんか」
ミッキーが決意を込めた顔でそう言った。
「私はラックを、みんなを信じている。待ってるから」
「皆こう言っていますし、私たちに任せていただけないでしょうか、ロッキーロード伯爵」
マジョが貴族口調に戻っている。
「わかった。君たちに任せよう。それ以外、私たちに打つ手はないからね」
こうして俺たちは、ロッキーロード家の余ったヨネを大量に馬車に積み込み、ロッキーロード家を後にした。
馬車に乗る前、ミッキーが近くに寄ってきた。
「ラック!」
俺の1メートルほど前に立ち、肩で息をするミッキー。
それはお世辞なくこの世で1番かわいくて、美しいものの1つだった。
俺が、絶対に守る。そして、スタードに、みんなの所に一緒に帰るんだ。
「待っててくれよ、ミッキー」
「うん」
馬車に揺られて数日、物々しい都市が前方に見えてきた。
対魔城塞都市ゴリアテだ。
「ところでマウスちゃん。ここからどうやってガードンに潜入するんだい?」
「それは、ヴェネッツ商人のフリをするしかないだろ。リッチーの名前出しとけば顔パスだって、多分」
「多分って」
プリンがいつものようにツッコんでくる。
「まあ、現状それしかないねぇ。だが、賄賂を要求されることもあると聞いているよ。その時は?」
「まあ見てなって」
そのまま、俺たちの馬車はゴリアテに入る列に並んだ。
順番になると、衛兵が俺たちを止める。
「待て。お前達は何者だ。何の用でここに来た」
「はい。私はヴェネッツの商人ロックという者です。商会長リッチーさんの指令で、ユタカーでとれたヨネを魔族に売りに来ました。通していただけないでしょうか」
俺は用意していた内容を話した。
「なんだ、ヨネか。リッチーの紹介ならいいだろう。通れ」
こうして、特に何もなくあっさりとゴリアテに入ることができた。
ゴリアテの内部はまさに戦争中の都市のそれだった。
街には兵士や魔法使いがあふれ、活気に満ちている。同時に負傷兵の姿も多く、この戦争が膠着状態であることがうかがえる。武器屋や防具屋、道具屋も建ち並び、元冒険者と思われる傭兵達がうろうろしている。
まるで高校の歴史の教科書で見た、中世の最前線の都市そのものだ。まあ、歴史には魔法はなかったけどな。
俺たちはそんな中を、商人が通る通用路を通っていった。
特に怪しまれる様子はない。
俺の運のお陰なのか、俺たちはとうとう何も言われないままゴリアテを通過することができた。
ゴリアテを通った後は、戦地を避けてガードンに入る手はずになっているはずだ。
俺たちは目視で見えるほどの距離にある魔王領ガードンに迫った。
「フフッ。何とか通過できたようだねぇ」
「ああ。でも、ここからが本番だからな」
そのまま俺たちは、ついに目的である魔王領の防衛都市ガードンに入った。
初めて来た魔王領は、今まで見てきた人類領とは全く違っていた。
まず、都市が戦争中という感じが全くしない。
兵士らしき魔族は確かにいるが、それ以外の普通の? 魔族や子供達が楽しそうに過ごしている。
そして、科学レベルが人類領とは比較にならない。
魔法科学、とでも言うんだろうか。夕方なのに都市は明るく、冬が近いのに全く寒くない。
道路も、自動で移動するものが整備されている。
これ空港とかで見るアレと一緒じゃん。
「すげーな、魔族って。こんな奴らと戦争してんのか、人類は」
「すごいだろう。この科学力、魔法技術力を持つ魔族と戦おうだなんて、王や貴族は実に愚かなことだよ。互いに手を取り合って、得意不得意を分け合えばもっと豊かになれるものをねぇ」
何か、これまた歴史の教科書で見た、戦前の日本対アメリカみたいな感じだな。これは本気で来られたら勝負になるわけないわ。
「でも、魔族は人類を攻めようとか支配しようとかしてこないんでしょう? どうしてなのかな」
プリンが率直な疑問を口にする。
「大昔は魔族が攻めてきた歴史もあるようだけど、人類を敵に回すと食料が手に入らなくなって自分たちの首を絞めると知ったからだろうねぇ。以来、魔族は常に人類協調路線なのさ」
「確かに、魔族の土地にはほとんど作物が実らないって言ってたな」
「そう。だから魔族は、これほどの技術を持ちながら人類との協調を目指しているのだよ」
そんな話をしているうちに、ガードン内の交易センターについた。
ここで、通常は荷物を下ろして取引をする。
ここだ。
「次の馬車、どうぞ」
呼ばれた俺たちは、かぶっていたターバンやフードを外す。
「ん、何だ? お前達、商人じゃないな。何者だ!」
魔族の警備兵がピストルのような魔法機器をこっちに向けている。
「ああ、俺は商人じゃない。人類領スタードの冒険者、ラックっていうんだ。ユタカーのロッキーロード伯爵家の代理で来た。魔族にとって、すごくいい話があるんだ。頼むから、ガードンの司令官に会わせてくれないか? もしくは、偵察兵のエリーちゃんに連絡を取ってほしい。俺の友達だからな」
当然、俺の言うことを警備兵が信じるわけがない。俺たちは完全に囲まれていた。
もちろん、いざとなったらマジョの妨害魔法やプリンの暗黒魔法で切り抜けることは可能だろう。
でも、それじゃダメなんだ。俺は魔族と、魔王と話をしに来たんだ。
「お前、いい加減ことを言うなよ!」
今にも、警備兵が俺たちを捕まえようとした、その時だった。
「待て! その人間達は本当のことを言っている。包囲を解け!」
厳しくもかわいい、この声は。
言われた兵士達は包囲を解く。
すると、向こうから見たことがある魔族の女の子が歩いてきた。
「エリーちゃん!」「エリー!」「フフッ、何とかなったようだねぇ」
おじさんおばさんの家で会った、魔族の美少女エリーちゃんだ。
「久しぶりだな、ラック。一体どうしたんだ?」
相変わらずのきれいな銀の瞳に流れるような銀髪で、見た目は人間とほどんど変わらない。
「エリーちゃん、お久しぶり!」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
第38話「魔王領へ! エリーちゃん、元気にしてた?」でした。いかがだったでしょうか。
ラック達を魔王領に行かせることはこの作品の構想当初からありました。
その中で、ミッキーの物語と組み合わせてはどうかと考えこのような流れになりました。
そのためにおじさんおばさんの家の話で魔族のエリーを登場させました。
果たして、ラックはガードン司令官に会い、そして魔王と会って交渉することができるのでしょうか。
次回をお楽しみに。




