第36話 勇者ユウ編⑥ 僕たちは勇者パーティー、だった。
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「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第36話です。
今回は、約5話に1回の勇者パーティーのお話です。
ユウたちが段々と惨めになっていきます。
どうぞ、お読みください。
ラック達と同じ頃 天竜山脈のふもと 勇者パーティー
目が覚めると、僕は一度見たことのある天井を見つけた。
全身が割れるように痛い。どうも、骨が折れているらしい。
寝ている僕の目の前にはジュウがいて、僕にずっと回復魔法をかけている。
一体どれだけの時間が経ったのか分からないが、ジュウはとても疲れているように見える。
顔はやつれていて、目の下にはハッキリとくまができている。
「ジュウ。どれくらい、たったんだ」
僕が口を開くと、ジュウは僕の手を握り、大粒の涙を流した。
「ユウ君! よかった、よかった、ほんとによかったぁ~」
「ユウが起きたのかい」
部屋にサクが入ってきた。サクも随分やつれている。
「うん、ユウ君が起きたの! ほんと、よかった」
「ジュウ、ありがとう。サク、すまなかった」
何故だろう。決して言うまいと思っていた、今までの僕なら決して言わなかった言葉が自然と口からこぼれた。
次の瞬間、僕の目から涙が流れ出した。
なぜ、なんだ。
なぜ僕がこんな目に遭わなくちゃならないんだ。
僕は、選ばれし勇者じゃなかったのか。
僕は天竜山脈で一度失った自信を、天竜の洞窟で確かに取り戻していた。
うまくいっていた、はずなんだ。
なのに、あんな敵が出てくるなんて。
確かに、あの時サクの言葉に従っていれば、こんなことにはならなかった。
そうだ、ゴウは、ゴウはどうなっているんだ。
僕をかばってキンググレートゴーレムの直撃を受けたはずだ。ただですむはずがない。
「ゴ、ゴウは、ゴウはどうなって、るんだ」
「ゴウは別の部屋で寝ているよ。あれだけのダメージを受けたのに君よりは傷を負っていなくてね。骨もおそらく治ってはいるが、精神的なショックが大きいようだね」
ゴウ。僕をかばってくれた。いつも、僕を助けてくれるゴウ。
会いたい。でも、動くことができない。
僕はそのまま、失意の中で回復をじっと待つしかなかった。
ふもとの村に来て1ヶ月後、ようやく僕は回復することができた。
同じ頃、ゴウも起き上がった。
「ゴウ、ありがとう、ゴウ。君が助けてくれなければ今ごろ僕は……」
「……大丈夫だ。俺が、お前を守ると言ったはずだろう」
僕よりも激しいダメージを受けたにもかかわらず、ゴウはこんなことを言ってくれる。
負けてばかりの、名ばかりの勇者に。
「いいか、ユウ。お前は勇者なんだ。一度や二度の挫折で志を折るな。まだまだこれからだ」
僕の折れかけていた心に火をともすのはゴウの言葉だ。
「わかった。誰になんと言われようとも、僕は目標を達成してみせる」
「君たち、分かっているとは思うが、これ以上の探索の続行は不可能だよ。君たちの装備は壊れているし、準備してきたアイテムも底をつきかけているからね。残念だけど、王都に一度帰るしかないよ」
くっ。
サクの言っていることは正論だし、僕もそんなことは分かっている。
でも、現実として成果を上げないまま王都に戻るのが惨めだった。
「ユウ、大丈夫だ。何度だってやればいいさ」
ゴウの言葉だけが、僕の心を支えてくれている。
「もう一回、頑張ろう?」
この1ヶ月間、僕を回復し続けてやつれたジュウが、優しい笑顔を見せる。
「……分かった。君たちの言う通りにしよう」
そうして、僕たちは再び、失意の中で王都に帰還することになった。
王都には、僕たち勇者パーティーの失敗が伝わっているようで、人々の僕たちを見る目は冷たかった。
「ねぇねぇ、あれ勇者パーティーでしょ? 勇者パーティーって強いはずだよね? でも、あの人達負けてばっかりってどうしてなの」
「しっ。あんまりそういうこと言わないのよ。でも、成果を出さないで帰ってくるって何のためにいるのかしらね」
横を通った親子連れの遠慮のない無邪気な発言が心に刺さる。
「くっ」
「大丈夫だ、ユウ」
ゴウはこんな時でも落ち込まず、僕を励ましてくれる。
「……ああ、分かっているよゴウ」
こうして歩いている間も、遠くから僕たちを批判する声が聞こえてくる。
「おいおい、あいつら何しに王都まで来たんだよ」
「ああいうのを、穀潰し、って言うのよ」
「他に、魔王を倒してくれる勇者様はいないのかね? あんな偽物じゃなくて」
なぜだ。
なぜ僕が、こんな目に遭わなくちゃならないんだ。
僕は、生まれたときから全てのことがうまくいっていた。
両親の期待にも常に期待以上に応えてきたし、何をやらせても優秀で誰よりもできた。
僕は選ばれし者なんだ、とずっと思ってきたんだ。
それが、この異世界では全く思うようにいっていない。
最強のスキルを持っているのに、何故なんだ。
失意の中、僕たちはなんとか王城の中に入った。
王城の中に入ると、 衛兵が部屋に案内してくれた。
ところが、以前の広い1人分の部屋ではなく、狭くて汚い2人用の部屋に案内された。
「どういうことだ? 以前使っていた部屋があったはずだが」
すると、衛兵は薄ら笑いを浮かべながら答えた。
「以前の部屋ねぇ、ああ、あれは王様の命令で使えなくなりました。何でも、勇者様たちにふさわしくない、と」
何だと。
僕が思わず剣に手を伸ばそうとするのを、ゴウが必死で止めた。
「やめるんだ、ユウ。その剣は魔王を倒すためのもののはずだ」
そう言われ、僕は手を元に戻した。
「魔王? 勇者様に倒せるんですか、ほんとに」
嫌味を言って衛兵が去って行く。
以前はこんなことはなかった。
衛兵もメイドも、僕たちに最敬礼をしていたんだ。
王に一言言わなければ気が済まない。
「ユウ、心配するな。俺たちが結果を出せば周りの目は必ず変わる。今は、我慢しよう」
「分かったよ、ゴウ。」
色々な意味で疲れてしまった僕は早々に眠ることにした。
明日は、王との謁見だ。今は、何も考えたくない。
ゴウは起きているようだった。
次の朝、衛兵に呼ばれ王の間に入った。
どう考えても、雰囲気がおかしい。
王は王座に足を組んで座っている。こんな王はこれまで見たことがない。
貴族達も、明らかにやる気がなさそうだ。
少なくとも、最初にここに来たときに感じた期待感や歓迎の意は全く感じない。
「ただいま、参りました」
僕たちは、一応王に跪く。
「ふん。何をしに帰ってきたのだ。まるで役立たずではないか」
なに? 誰に向かって言っているんだ!
僕は王をにらみつける。
「せっかく教会に大金を払って召喚したのに、これではなぁ。」
「まったく、装備や待遇にも大金をかけたのに、いつまでたっても魔王領は手に入りませんな」
「これは、他の異世界から来た冒険者を探した方が早いのではないですか?」
僕たちを全く無視して、貴族達の話が続いていく。
「お前達は今後勇者パーティーを名乗る資格などない」
「お待ちください、王よ。我々にはまだやれることがある」
ゴウが、貴族達の話を切り裂くように鋭く言った。
「ふん。どうせ無理だろうが言ってみろ」
王ははなから相手にする気はないらしい。ふざけるなよ。
「天竜山脈も天竜の洞窟も我々には力不足でした。それは認めます。だが、ガードンの戦況は一進一退だと聞きます。我々にはガードンから魔王領に入る道があります。どうか、お認めください」
ゴウは必死に王を説得する。
「どうせ無理だろうが、勝手に行くがいい。おい、後任の者の選定を急げ」
僕たちは追われるように王の間から出た。
「これから、どうすればいいんだ」
僕は正直疑心暗鬼になった。
なぜこんなにうまくいかないのか分からないからだ。
おかしい。
恐らくだが、うまくいかない原因があるはずだ。
もしかして、誰かが僕たちの足を引っぱっているんじゃないか?
「ユウ。落ち込んでもしょうがないぞ。さあ、行こうじゃないか」
そんな僕の疑問は、ゴウの声で吹き飛んだ。
そうだ。ゴウと一緒に行けばいいんだ。
「さあ、次の支度をしようか」
「うん。私たちは負けないよ」
サクとジュウの声が今は心地よく響く。
何度でも立ち上がるのが勇者だ。そう思い込むことに僕はした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
第36話「僕たちは勇者パーティー、だった。」でした。いかがだったでしょうか。
とうとう、失敗に次ぐ失敗で王たちから見放された勇者パーティー。
勇者パーティーの称号も剥奪されてしまいました。
生まれたときから恵まれていて、何もかもがうまくいっていたユウには耐えがたい状態になっています。
サクも以前言っていましたし、ユウも少し気づいていますが、このような状態になったのは誰かの差し金によるものが大きいです。
勇者パーティーを妨害しようとしているのは誰なのか、皆さんぜひ推理してみてください。
次は、ラック達になります。
いよいよ、ミッキー編のクライマックスがやってきます。
冒険ものなのにあまり戦闘描写がない本作ですが、そのうちバトルがやって来ますのでお待ちください。




