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第3話 俺のステータス、一体何の冗談だよ

 クロと別れてしばらく歩くと、「スタードギルド」という看板を見つけた。俺は覚悟を決めて早速ギルドに入ってみた。

 木造の重厚な建物の中には、何だが見たことがある受付や依頼らしい掲示板が並んでいる。これゲームとかアニメで見たのとほとんど一緒じゃないか。カウンターテーブルあの女の人が受付嬢かな。

 肩まで掛かった栗色の髪、かわいさと大人の魅力が同居した顔。つまりかわいいし愛嬌がある。そして何より、とても大きな胸に目が行ってしまう。いかんいかん!

 俺は受付嬢の巨乳のねーちゃんに話しかけようとするが、持ち前の陰キャスキルが発動してうまく話せず、近くでうろうろする。

 すると、いろいろ察したのか向こうから話しかけてきた。

 「こちらはスタードギルドです。あなたは初めてですね? 異世界人の方ですか? 能力を見ますか? パーティーを組みますか?」

 矢継ぎ早に質問されて俺は少し戸惑った。しかし、ここは異世界。相手に合わせてやってみることにした。

 「ああ、ねーちゃん。俺はあんたたちが言う異世界人ってやつだ。とりあえず能力を見たいんだけど」

 「私はねーちゃんじゃありませんよ。アンって呼んでくださいね。能力を見るのは無料ですよ。じゃあ、ここに手をかざしてください。能力が空中に映し出されます。異世界から来た方はアンカールド人より平均ステータスが高くて、レベル1でもHPとMPは50から100くらい、各ステータスは30から50くらいありますよ」

 アンの言うとおり石版? みたいなのに手を当ててみる。すると俺の能力が空間に映し出される。どうやらアンと俺にしか見えないらしい。


 ラック(幸村幸夫) レベル1

 HP22 MP11 力6 速度12 技術12 魔力1 信仰1 運1000


 ステータスを見た瞬間、俺は思わず「なんじゃこら!?」と心の中で叫んだ。

 まず完全にステータスが終わってる。力6に魔力と信仰が1って何の冗談だよ。平均30じゃなかったのかよ。ていうか運が1000!? 何なんだこのステータスは。

 アンはとても気まずそうだ。

 「えっとー、本当に言いづらいんですが……これは弱すぎですね……ラックさんほんとに転生者ですか? 正直言って話になりま……え!!! 運が1000!?」

 アンは運の数値を見て目を見開いて興奮している。やっぱ俺すげーのか? もしかして、運が高いってすげーのか?。

 「すごいですよラックさん。こんなに運が高い冒険者はスタードにはいませんから。アンカールド全体でもいるかどうか……とにかくすごいです。しかも、なんとレアスキルを2つも持ってます。レアスキル2つ持ちなんてアンカールド全体でもほどんどいませんよ!」

 レアスキル2つ持ちの冒険者がほとんどいない、と聞いて俺は心底湧き立つ。見たか、女神よ。やっぱ俺ってすげーんだぞ!

 「マジ? で、どんなレアスキルなの?」

 「どちらも運に関するものばかりですね。『剛運』と『超運』、どちらも持っている人がとても少ないレアスキルですよ」

 マジかよ。そんなにレアなのか。やっぱ俺レアスキルでこの世界で大活躍する運命なんだな!

 「え、そのレアスキルってそんなにすごいの?」

 レアスキル2個持ちという自分のすごさに驚きつつ答えると、お姉ちゃんはやや気まずそうな顔をした。

 「あー、はい。えーっとまず、『剛運』は、運に関する判定率を大幅に引き上げるアビリティが中心ですね。『超運』は、運の限界突破と運判定の攻撃や防御、探索系アビリティが中心です。ただ……」

 アンは更に気まずそうだ。

 「いや、いいから言ってくれよ」

 「……わかりました。この二つのレアスキルの効果には副作用があります。それは、レベルアップのたびに運が大幅に上がりますが、他のステータスはほとんど上がりません。いわば、ステータス上昇値がほぼ運に吸い取られてしまうようなものです」

 とんでもない真実を聞いて俺は真っ青になる。

 「え! ま、マジか」

 「はい、大マジです」

 それを聞いた俺はさすがに落ち込んだ。力とか魔力とか、異世界の花形ステータスが全然上がる見込みがないってことだろ。これが女神が言っていた「使えないレアスキル」ってやつか。

 そう考えると、また女神エレクトラへの憎しみがわいてくる。だが、今はそんなこと言ってもしょうがない。俺は前を向いた。

 「あのさ……俺のステータスって運以外壊滅的に見えるんだけど、どんな職業になれるの?」

 アンがなんだかかわいそうな人を見ている目をしている。

 「はい。ラックさんはまず力が低すぎて戦士にはなれません。それに、魔力1、信仰1ですと魔法も神聖魔法も使えないため、魔法使いも僧侶も無理ですね。消去法で盗賊になります。盗賊は攻撃力は弱いですが、速さと技術で相手を翻弄する職業です。冒険に役立つスキルや、トリッキーな攻撃スキルを覚えますよ。鍛えれば将来はアサシンになれたり、ギャンブラーになれたりしますし、うまくいけばもし-かしたらニンジャになれるかもしれませんよ」

 あー運以外能力低いの分かってたけど、なれる職業選べないのか……。盗賊か……。大体のゲームじゃ攻撃力も防御力も中途半端な立ち位置なんだよなー。

 俺は気を取り直して、唯一の取り柄である運について聞いてみた。

 「俺って運がめちゃくちゃ高いけど、運ってどんなステータスなの? もしかしてめっちゃ役に立つとか?」

 俺の話を聞くと、同情的だったアンの顔がすっと素に戻った。

 「はい、運は冒険者には一番必要のないステータスだと言われています。運が影響するのは、攻撃命中率、魔法命中率、クリティカル率、状態異常命中率、攻撃回避率、魔法回避率、クリティカル回避率、罠回避率、状態異常回避率、ドロップ率、レアドロップ率、その他いろいろあります。ただ、効果範囲がたくさんありすぎて、運はあまり能力が結果に反映されないと言われているんです」

 ちょっと待て。今の話が本当なら、どんだけ運が高くてもだめってこと? それってつまり、俺がダメってことだよな? 異世界来たのに活躍できないんじゃ何のために来たんだよ俺。

 「むしろ、運が高い方は商人に向いていますよ。アンカールドの大商人はみんなだいたい『剛運』持ちだと言われてますし。ラックさん、真剣に転身を考えてみたらどうですか?」

 なんてこというんだアンは。冒険者になるためにギルドに来たのに、商人になれって何だよ。俺はこの世界じゃ冒険者にすらなれないってのか。

 話を聞いた俺の顔がだんだん落ち込んでくるのを見たのか、アンが気休めのように言う。

 「で、でもラックさんの運の高さなら毎回攻撃がクリティカルになると思いますよ。ただ、力が低いので、大したダメージにはならないと思いますが」

 「おいおい全然慰めになってねーじゃん。他に運が使えるのないの? そうそう、ドロップ率とかは?」

 「はい、ドロップ率は確かに他の人よりはるかに高いと思いますね。特に上がるのはドロップ率だけですが」

 「ドロップ率だけかぁ……」

 これが本物の異世界転生の現実ってやつか。俺はうなだれ下を向いてしまう。

 「ま、まあラックさん。ラックさんの運で稼ぐ方法もありますから。いい人紹介しますよ。ちょうど呼んでいますから。ラックさんみたいな異世界から来た冒険者にぴったりな方です」

 それを聞いた俺は食いついた。

 「え、運で稼げるって本当? ほんとだよね?」

 そういう会話をしていると、2人の人物が近づいてきた。これが、俺が待ってた運命の出会いってやつなんだろうか。

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