第28話 コンブーメ討伐! 今夜はヴェネッツ中がラック祭
ページを開いていただきありがとうございます。
「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第28話です。
今回は、コンブーメ討伐戦の続きになります。
コンブーメを討伐した後、ラックには何が待っているのでしょうか。
よろしくお願いします。
俺はパワーの攻撃間隔と場所を予測しながら、少し早めに深いところまで潜って、コンブーメの右の根っこについた。
さっきと同じことだ。プリンの支援魔法が乗った俺のクリティカルで叩く。
「クリティカル 20ダメージ、クリティカル 20ダメージ、クリティカル 20ダメージ、クリティカル 20ダメージ、クリティカル20ダメージ」
いい感じで連続クリティカルダメージが入ったところで、コンブーメの触手が再び俺に向かってきた。
「運パリィ!」
俺は水中で叫ぶ。
両手の短剣でコンブーメを切り払いまくった。
でも、相変わらず数が多すぎて、ぐるぐる巻きになりそうになる。
クソっ!
その時、水面から大きな衝撃を感じた。パワーの攻撃だ。
俺にまとわりついていた触手達が一斉にパワーの方に向かう。
俺は何とか、水面に上がることができた。
「ハア、ハァ、ハァ」
俺は息を整える。
そもそも、別に俺って泳ぐのとか潜るのが得意って訳じゃないんだよな。都会育ちだし。
ただ、子供の頃田舎のじいちゃん家で川で泳がされてたから、泳げたり潜れたりするだけだし。
「プリン、マジョ、さっきの奴頼む。一気に行くわ」
マジョは満面の笑みを浮かべた。
「毎日の冒険が実験になるとは、最高だねぇ。バフポイズンマスター」
プリンは心配そうにしている。
「ラック、無理しないでね。でも、無理してね。オールサポート」
どういう意味だよ、って言おうとした瞬間、羽が生えたように全身の能力が跳ね上がる感覚と、同時に猛烈な毒が襲ってきた。
「ぐうぁぁああああ!!!!」
体中死ぬほど痛ってえけど、言ってる場合じゃねえ!
俺は一気に底まで潜り、再び右の根っこにたどり着いた。
食らえ!
「クリティカル 50ダメージ、クリティカル 50ダメージ、クリティカル 50ダメージ、クリティカル 50ダメージ クリティカル 50ダメージ」
俺の息の残量とHPが半分以下になったところでマジョの妨害魔法が切れ、同時にコンブーメの根っこ右を倒した。
浮かび上がった触手達が最後のあがきで俺を襲ってくる。
当然全て防ぐことはできず、水面に上がったときは全身再びヌルヌルにされていた。
「大丈夫だよマウスちゃん、助けてあげるからねぇ」
マジョがそういった直後、再び大量の妨害魔法が俺を襲う。
「うぐぁああああああ!!!」
し、死ぬかと思った。
でも、マジョの妨害魔法のおかげでコンブーメの触手は俺から離れていった。
俺はまた息を整える。
向こう岸を見ると、パワーが『ためる』を使った攻撃を続けている。
マジョは忙しくパワーに向かってくる触手に妨害魔法を打ち続けていた。
表情は少し疲れているが、それよりも妨害魔法を思いっきり使える喜びに満ちている。
コイツ化け物だろ。どんだけMPあるんだよ。
その後ろを見ると、マーコちゃん達がかなり前に出ていた。
もしマーコちゃんに触手が届いたら命の危険がある。
「食らいなさい。私の必殺魔法、ファイアボール!」
マーコちゃんは魔法使いなら最初に覚えるという初級魔法を触手目がけて打つ。
マーコちゃんの周りにはMPを回復するエナジードリンクが入った瓶が散乱していた。
どんだけ打ってんの? さすがはお嬢様、金にもの言わせてんな~。
てか、MP少な過ぎだろ。ま、レベル10だしな。
マーコちゃんが魔法を打つ分、触手の一部がマーコちゃんに向かってくる。
それをジーヤとガードが何とか防いでいた。
でも、2人ともかなり触手まみれで動きづらそうだ。
早く終わらせるしかない。
「マーコちゃん、それ以上前に出るな! 絶対にジーヤやガードの後ろにいるんだぞ」
「そんなこと言われなくても分かっているわ。あなたも頑張るのよ!」
なぜか、上から目線で言われてしまった…。
気を取り直して、いよいよ本体の真ん中に行くことにした。
「プリン、マジョ、最初っから一番強いの頼む」
「ふっふっふ。どうなっても知らないよ『バフポイズンマスター』、『バフウィークマスター』」
「頑張って! 『オールサポート』」
魔法が来た瞬間、今までとは比べものにならない苦痛が体中を襲った。
「うぎゃぁあああああああ!!」
何とか正気を保ち、潜る。
今の俺は、相当なバフが乗っている反面、極端に打たれ弱く、ものすごい勢いでHPが減っている。
短期決戦だ。
中央の根っこにたどり着くと、これまでと比べものにならないぐらいの触手が襲ってきた。
こいつらに構ってる暇はない。
俺は体中ぐるぐる巻きにされながら、攻撃を放つ。
「クリティカル 100ダメージ、クリティカル 100ダメージ クリティカル 100ダメージ、クリティカル 100ダメージ、クリティカル 100ダメージ」
全身の痛みやだるさの代わりに、これまで見たことがないくらいのダメージがでた。
でも、さすがは本体。これぐらいのダメージじゃ横が少し切れただけだ。
もうすぐバフが切れる。このままじゃ、俺は触手に巻かれて水面に上がれないまま溺れてしまう。
何か他に使えるものはないのか。
あった。
今まで一度も使ったことがない、『運撃』が。
確か、運依存のダメージだったはず。
残りMPは32。ギリギリ30ある。
頼む、これで届いてくれ!
『運撃!』
そう言って本体にメタルの短剣を向けた瞬間、本体はスパッと完全に切れた。
「クリティカル 3000ダメージ」
は?
一体何なんだよこのダメージは。
俺は、この世界に来てから散々弱い弱いって言われてきた。
役立たずとか、俺とパーティー組む奴なんかいないとか。
その俺が、3000ダメージ与えたって?
これなら、これがあればあのクソ女神に届くんじゃないか。
そう思ったときだった。残った触手が俺をつかんで、俺の口や鼻の中に入ってきた。
俺は息ができなくなって、意識を失った。
俺って、ここで死ぬのかな……。ドーテーのままかぁ……。
何も見えない。
遠くから、人々の騒ぐお祭りのような声が聞こえてくる。
どう考えても、酒を飲んで楽しそうな声だ。
太鼓や様々な音楽が流れ、どれも陽気な音色を奏でている。
ここ、どこだろう。俺死んだんじゃなかったのか。
これってもしかして、天国って奴か?
何も見えないから、目を開けることにした。
よく見えないけど、どう見ても天井だ。
「マウスちゃん! 大丈夫だったようだね。良かったよ」
「ラック! 死んじゃったらどうしようと思ってた……。良かったあ」
俺の周りには、マジョとプリン、ジェリーとリッチー、そして医者と看護師らしき人がいる。
あれ、俺何してたんだっけ。
マジョとプリンを見ると、泣いている。
子供の頃泣き虫だったプリンはともかく、マジョが泣くだって?
「よかった。泣いたのは生まれて初めてだよ。お帰り、ヴェネッツの英雄君。そして、私のマウスちゃん」
マジョは涙をぬぐった。マジョの涙は何回見ても心にくるものがあった。
というか、ヴェネッツの英雄って何のことだ?
「何が、あったんだ?」
「ラック、覚えてないの? あなたがコンブーメを討伐したのよ。最後コンブーメの触手に全身巻かれていたのを、私たちが何とか救出したんだから」
ん? コンブーメ?
コンブーメ、コンブーメ……ああー、そうだったわ。
「思い出した。確かに俺コンブーメの根っこ切り落としたわ。あー良かった。生きてた」
すると、ジェリーとリッチーが俺に深々と礼をした。
「ラックさん、ほんまありがとうございました。らっくさんのお陰で交易の船が外に出られるようになりましたわ。ほんま、感謝してしきれまへん。報酬は1000万イェンですが、他に何でもゆうてください」
「ラックさんはヴェネッツの英雄になりはりました。ヴェネッツ商人組合は、今後ラックさん達を全面的にサポートしますんで。今後も、よろしゅうお願いいたします」
そう言われて体を起こそうとするが、体中に激痛が走って無理だった。
まあ、めっちゃ無茶して、マジョのやばい魔法受けまくったからな。しゃーないわ。
俺は寝たまま顔だけを向ける。それだけでも全身に激痛が走る。
「うっ。そんな、頭下げなくていいよ。依頼をこなすのは冒険者の仕事だしな。英雄とか、大げさだって。報酬ももらいすぎだよ。ヴェネッツの冒険者たちもこれまで頑張ってくれたんだし。俺たちは400万イェンもらえばいいから、今日から1週間ぐらいみんなにおごってやってくれよ。あ、一緒に来たマーコちゃん達には100万あげてくれよな」
ジェリーとリッチーは顔を見合わせ、何かを示し合わせると再び俺の方を向いた。
「わかりました。ラックさんの言うとおりにさせてもらいます」
「どうぞ、体調が良くなるまでごゆっくり」
そう言って、2人は帰っていった。
次に、医者と看護師が俺の顔をのぞいた。
「恐らくですが、3日ほどは動けないと思われます。引き上げられた時に息をしていませんでしたし、全身をコンブーメに絞められていましたし。あと、謎のけいれんも起こしていましたしね。とにかく安静にしてください」
そう言って、医者と看護師は去って行った。
謎の痙攣って、絶対マジョのせいだよな。
部屋には、寝ている俺と、マジョとプリンがいるだけだ。
「お前達も魔法打ちまくって疲れたろ。部屋に帰ってゆっくりしたら?」
どう見ても、2人とも疲れている。
でも、2人は帰ろうとしなかった。それが、すこしうれしかった。
「私たちなら大丈夫だよ。マジョがね、ラックがコンブーメまみれになって浮かんできたとき、『私の大事な実験台が死んでしまう』って言って、大慌てで妨害魔法を放って触手を取り除いたんだよ」
プリンがおかしそうに笑う。俺が起きたことで安心したようだ。
「それは、マウスちゃんは私の大事な実験台だからねぇ。まあ、ただの実験台じゃあないがね。プリンも、陸に上がったラックに口を重ねていたがね」
え? 公衆の面前でキス?
「ちょっとマジョ。あれは人工呼吸って言ったじゃん。ラックに生き返ってほしかったから、勇気を出してやったんだよ。私にとっても、ラックはただのパーティーメンバーってだけじゃないし」
プリンは顔を真っ赤にしている。
そうか、人工呼吸か。
てことは、俺とプリンはキスをしちゃったのか。あー意識があったらなー。
こんなうれしいシチュエーションなのに、全く覚えてないわ。
「そういや、パワーは?」
「フフッ。パワー君はね、君がコンブーメを倒したときに、陸でコンブーメまみれになったのさ。マーコちゃんが前に出すぎて、コンブーメに襲われそうになったのを体を張って助けたのだよ。だから、マーコちゃん達が看病しているんじゃないかい。いやぁ、愛というものだねぇ」
「マジか。パワーもマーコちゃんにいいとこ見せたってことか。じゃあ結果オーライだな」
それにしても、外が騒がしいな。
「なんでこんなにお祭りみたいな声がするんだ?」
「それはね、ラックがやっかいなコンブーメを倒したから、コンブーメをみんなで食べてるんだよ。あと、今日をラック記念日ってヴェネッツの人たちが決めたみたいで、ラック祭って言って飲んでるんだよ。毎年祝うんだってさ」
「はあ? ちょっと待って。そういうのやめてほしいわ。なに、1年に1回ここに来ないと行けないってことかよ。そういうのいいんだって」
「マウスちゃんがクエストの報酬で冒険者に振る舞うと決めたから、今ごろ冒険者達も飲んでいるはずだよ」
何やってんだよ、ヴェネッツの奴ら。クエストクリアしただけだろ。大したことしてねーっての。
「お前らも飲みに行ってこいよ。俺は寝るからな。じゃあ後は任せた」
そう言って、俺は目をつぶった。
「マジョ、行く?」
「ああ。そっとしてあげようか」
そのまま、俺は眠ってしまった。
目が覚めてから3日後の夜、俺は街に出ることにした。
あれだけ全身痛かったのもほとんど取れた。明日からマジョの実験も再開できそうだ。
ホテルのロビーに出ると、マジョとプリンが待っていた。
「やあ、マウスちゃん。元気になったようだね。本当に良かったよ。明日からも実験、頼むよ?」
こいつ、やっぱ実験のことしか考えてないだろ。
3人でホテルを出ようとすると、ホテルの外にパワーが見えた。
パワーの横にはマーコちゃんがぴったりくっついている。
「ねぇパワー、痛いところはない?」
「も、もう大丈夫だぁ~。マーコちゃんのためなら何てことないだぁ~」
「もーパワーったら。あ、ラック。生きてたの?」
おい、この扱いの差は何なんだよ。俺が命がけでコンブーメ倒したんだぞ?
「悪かったな。マーコちゃん達もお疲れな。報酬渡るようにしてたから」
「ふん。やっと私の力を分かったみたいね。じゃあ酒場に向かうわよ」
マーコちゃんは相変わらずだけど、少しはパワーと仲良くなったみたいだ。
道を歩いていると、通行人にものすごい勢いで声をかけられた。
「ああ、英雄ラックさんだ! ラックさん、ヴェネッツを救ってくれてありがとうございます!」
「英雄ラックさんならきっとやってくれるって信じてました!」
うーん。正直いい気分だけど、英雄ってのやめてくれないかな。常にそんなこと言われたら、気軽に飯が食べられないじゃん。
「あの、俺はただの冒険者で、クエストをクリアしただけだから。その、『英雄』ってのはやめてくれよ」
それでも、通行人の熱は収まらなかった。
「すごいね。ラックが英雄だって」
俺の隣にいるプリンがうれしそうに言う。
「いやいいって。まあ、気分はいいけどな。でも、クエストクリアは全員のおかげだから」
マジョも嬉しそうだ。
「世の中が遂にマウスちゃんの価値に気づいてしまったか。実に素晴らしいじゃないかい」
そう言いながら、酒場に着いた。
酒場に入ると、全ての冒険者が俺の方を向き、ジョッキを持って殺到してきた。
はあ? なんだよ。男に迫られるのは無理だって。
「兄貴! 俺らに飯をおごってくれてありがとうございます。ラックの兄貴を尊敬してます!」
「兄貴! 一緒にコンブーメの佃煮を肴に飲みましょうや!」
何だよこいつら。
「おい、俺のこと兄貴って二度と言うなお前ら! あと4日は俺のおごりだから好きなだけ飲めよ。じゃあ、俺たちの未来に乾杯だぁ!」
「乾杯!」
その後、俺は数え切れないぐらいの酔っ払った冒険者にもみくちゃにされた。
まあ、そいつらはみんなマジョの妨害魔法で無力化されたけどな。
俺は冒険者達に頭からシュワーをかけれられながら思った。
あー気持ちいい! こいつらサイコーだぜ! ヴェネッツサイコー!
読んでいただきありがとうございました。
第28話「コンブーメ討伐! 今夜はヴェネッツ中がラック祭り」でした。
いかがだったでしょうか。
ラックたちは他の冒険者が討伐できなかったコンブーメを討伐し、ヴェネッツの英雄になりました。
ただでさえVIP待遇のヴェネッツで、最高の信頼を得たわけです。
これが今後の展開に大きな影響を与える予定です。
次回は、ラック達がスタードに帰還します。
初めて会う女神ルーナ様。そして、今後の展開を左右する驚愕の事実。
お楽しみに。




