第22話 初めましてこんにちは。魔族ってこんな感じなのかよ
ページを開いていただきありがとうございます。(今回も遅くなりました。すみません)
「女神ガチャに外れて捨てられた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第22話です。
今回は、ずっと登場させたかった魔族の登場となります。
魔族とはどんな存在なのか、魔族の真意とは、そして魔王とは?
ぜひ、お楽しみください。
俺たちはマジョのパラライズで気絶した魔族の女を、捕まえたイノブー達とともにおじさんおばさんの家に連れて帰った。
「おじさん、おばさん。起きてますか? イノブーが田んぼに出る原因を突き止めましたよ」
すると、奥の寝室から、パジャマ姿のおじさんとおばさんが出てきた。
「あら~。ほんとね~。ありがとね~」
「あら、この子はどしたとね? ここへんじゃ見らん子やね~。イノブーもえらい捕まえてきたね~」
おじさんが魔族を気にしているようだ。やっぱ優しいな、おじさん。
「どうやら、この魔族がイノブーを操って、田んぼを襲っていたみたいだねぇ。一体、なぜこんなところにいたのか、実に興味深いねぇ」
パワーがゆっくりと魔族の女とイノブーを地面に下ろす。ほんと、パワーの荷物持ち能力はすごいわ。
すると、魔族の女が目を覚ました。
「使役!」
「やめるんだ君。イノブーは動かないよ」
魔族の女がおそらくイノブーを使って何かをしようとしたのだろう。
でも、イノブーは未だに起きない。悪夢をずっと見てるんだろうか。
「くっ。殺すなら殺せ!」
「抵抗はやめたまえ。君を殺す気なんてないし、この状況では抵抗も無駄というものだ。イノブー達も眠っているしねぇ」
魔族の女は屈辱を感じているのか、唇をかんで震えている。
明かりの下で魔族の女を見ると、確かに色は浅黒いし、角も生えてるけど、めっちゃ美少女じゃん。
髪は銀色のストレートで腰まで伸びていて、眉毛や睫毛も銀色だ。大きな銀色の瞳に鼻筋の通った整った顔立ち。正直言って見とれるくらいだわ。
服装は、何というか紫の軍服みたいなワンピースのロングスカートだな。これって魔族の制服か何かか?
見た目は完全に若い女の子だ。そして、本当にかわいい。
そんな、勝ち気そうな魔族の女の子が「くっころ」状態なのを見て、俺は変な興奮を感じてしまった。
「くっころ、くっころ、くっころ……」
「ちょっと、ラック。なに言ってるの? ちゃんとして」
プリンにそう言われて我に返った。
いかんいかん、どんな妄想しようとしてんだ俺。
気を取り直して、魔族の美少女に話しかけた。
「なあ、人類と魔族が戦争している今、君はこんな人類領の田舎で何をしてるんだ? 俺たち、魔族に会うのが初めてなのがほとんどだし、ついでに魔族についても教えてほしいんだけど」
すると、魔族の美少女はキッと目を鋭くした。これマジの「くっころ」じゃん。
「戦争をしている人間となれ合う気などはない。殺すならころ……」
グウゥゥゥゥ。
魔族の美少女のお腹から、それはそれは大きな音が出た。
魔族の美少女は顔を真っ赤にしている。恥ずかしいのは俺らと一緒なんだな。
「あら、お腹がすいとるとね~。よかったら、家で食べていかんね~」
おばさん、何て優しいんだよ。
「い、いや、私は人間に施しを受ける気は……」
魔族の美少女はそう言いつつ、奥の厨房からしてきたいい匂いに我慢できなそうな顔をしている。
「わ、私は、誇り高き、魔王、軍の……」
そう言うと、魔族の美少女は床にへたり込む。
完落ちですな、これは。見てる分には何かゾクゾクするけど、さすがにかわいそうだな。
「パワー、食卓に連れてってやれよ」
「わかっただぁ~」
そう言うと、再びパワーはひょいと魔族の美少女を持ち上げる。
魔族の女の子は、「キャッ」と女の子らしい声を出した後は、泣き出しそうな顔で俺を睨んでいる。
あ-、なんか性癖歪みそうだわ、俺。
食卓に到着すると、既に今夜の晩ご飯の残りと思われる食材が所狭しと並べられていた。
俺たちはもう腹一杯食べたからいらないんだけど、魔族の女の子はものすごく食べたそうだ。
「わしらは別に恨んどりはせんよ~。遠慮なく食べないね~」
おじさんにそう言われた魔族の女の子は、我慢ならなくなったのか、目の前のご飯をガツガツ食べ始めた。
「はむ、はむ、はむ、うまい!」
ようやく、年相応? なところが出てきたな。
それから1時間くらい、魔族の女の子は食べ続けた。どんだけお腹が減ってたんだ?
それだけ食べても、おじさんおばさんはとてもうれしそうだった。
そして1時間が過ぎた頃、女の子は
「もうむりぃ。おなかいっぱいぃ~」
と急に幼児言葉で話したかと思ったら、そのまま寝てしまった。
「あらあら、よっぽどお腹がすいとったんやね~」
「このままじゃかわいそうやから、布団で寝かせようかね~」
おじさんおばさんはいつまでたっても優しい。もう深夜の2時くらいのはずだ。
結局、パワーが布団まで連れて行き、女の子はマジョとプリンの横で寝ることになった。
「そういやおじさん、あのイノブーはどうするんですか」
「イノブーは食べるとうまいからねぇ。明日の朝にでもさばこうかねぇ~」
それを聞いたパワーは、早くも肉が食べたくて仕方がないという顔をしている。
そんな中、プリンがおじさんに忠告した。
「おじさん、それは明日の朝、魔族の子が起きるまで待ってくれるかい。あの子が使っていたイノブーだし、何かと事情がありそうだからねぇ」
「キャァー。お、お前達、私に何をした!」
次の朝、女子の部屋から大声が聞こえてきた。
「パラライズ」
マジョが速攻で黙らせたみたいだけど。何時だと思ってるんだ。まだ夜が明けてないだろ。
夜が明けて、女子達が起きてきた。
「ほら、自己紹介するんだよ」
マジョに促され、魔族の女の子は一歩前に出た。
「う、うむ。私は魔王軍 最前線都市ゴードン所属、2等偵察兵のエリーだ。職業は魔物使いだ」
エリーちゃんっていうのか。名前と見た目がめちゃくちゃあってるじゃん。どっちもかわいいわ。
「てか、魔物使いって職業あるんだ。それって人間にはないから、魔族独自のってことだよな」
イノブー達が一糸乱れぬ行動取ってたのはそういうことか。
すると、エリーちゃんはおじさんおばさんの方を見て、片膝をついた。
「昨日は、いや先日から大変失礼しました。私の使役しているイノブー達が、どうしてもここのヨネを食べたいと言い出しまして……。私も、道に迷ってしまって、腹を空かせていたのものですからつい……。それなのに、そんな私にご飯を食べさせていただけるとは……。何と、お詫びをすればよいものか」
そういうエリーちゃんを見ても、おじさんおばさんは笑顔を浮かべたままだ。何ていい人達なんだよ。
「謝る必要はないよ~。お腹すいとったらしんどいからね~。困ってるときは助け合いよ~。それに、戦争が始まる前は魔族の人たちには助けてもらってたからね~」
「助けてもらった? どういうことですかおじさん」
気になるな。どういうことだろ。
「戦争が始まる前はね~、お嬢ちゃんみたいな魔族の魔物使いが農家に出稼ぎに来よったとよ~。農家は畑や田んぼを魔物にやってもらって助かるし、魔族の人たちは農作物もって帰れば満足してたから、ほんと良かったとよ~。でも、今は戦争が始まって、魔族の人たちが来んなったからね~」
「そんな、魔族が農家を助けるみたいなことがあってたんですか?」
プリンの疑問も当然よな。俺もそう思うもん。
「そうよ~。ほんと助かっとったとよ~。ああ、イノブーちゃんたちにはご飯をやっとったからね~」
外を見ると、パワーが小屋に入れられたイノブー達に昨日の残飯をあげているところが見えた。
イノブー達は既にパワーになついているようで、ブヒブヒとうれしそうだ。
「そ、そんな……。ありがとうございます。せ、せめて何か、恩返しができれば……」
「なら、君のイノブ―を使役して、おじさんおばさんの畑や田んぼを耕すのを手伝だったらどうだい? ここの辺りでは魔族に対する反感も低そうだし、他の農家のもやってあげれば、十分な罪滅ぼしとなるんじゃないかい」
マジョの言葉に、エリーちゃんははっとした表情を浮かべた。
「じゃあ、まずはうちの畑をお願いしようかね~。村のみんなも喜ぶやろうし、たくさん農作物もらえるはずよ~。まずは、みんなで朝ご飯食べようかね~」
おばさんはそう言いながら食卓を拭いた。台所からはすでにとてもいいにおいが漂っている。
「おら、おなかすいただぁ~。おばさんのごはん早く食べたいだぁ~」
「あらあら、パワーちゃんはいい子やね~。ちょっと、待っときないね~」
おばさんはよっぽどパワーが気に入っているみたいだな。
ご飯をいただきながら、俺はエリーちゃんに気になることを聞いてみた。
「えっと、エリーちゃんで良かったよね。俺はラックって言うんだ。こいつらはパワー、マジョ、プリン。俺のパーティーメンバーだ。エリーちゃんってガードン所属の兵士って言ってたけど、こんな人類領の奥まで何しに来たの? 偵察、っていう割には偵察するようなものないと思うんだけど」
「……エリーちゃんと呼ぶな。私は40歳、お前達よりも年上だ。今後はエリーと呼んでくれ」
40歳、と聞かされて俺は仰天する。
だってエリーちゃんどう見ても若くてかわいい子だからだ。
「ああ、マウスちゃんは知らなかったかねぇ。魔族は我々人類の二倍ほどの長寿な種族なのさ。その分成長も遅いから、エリーはちょうど私ぐらいと思えばいいはずだよ」
てことは20歳か。
「じゃあエリーちゃんやっぱ若いじゃん。で、何してたわけ?」
エリーは黙っている。よっぽど言いたくないのだろう。
「大丈夫。ラックはちょっとエッチだけど、信用していいよ。私もラックに助けられたんだ」
ちょっと、プリン、いいこと言ってるようで俺をディスってないか? ま、スケベなのは認めるけど。
てか、なんでプリンにばれてんだ? いや、そもそもプリンって俺をそんな目で見てたの?
「……わかった。話そう」
そう言うと、こわばっていたエリーの表情が柔らかくなった。いややっぱ美少女じゃん。絶対魔族にモテるだろ。
「我々魔族は不本意ながら人類と戦争をすることになった。でも、私たちはお前達が思っているより平和主義で、今まで協調していた人類と争う気はないんだ。これは、魔王様の方針だ」
「魔王様? エリーって魔王に会ったことあるの?」
「いや、私のような下級兵士が魔王様に会えるはずがない。魔王様は魔王軍幹部内の主戦論を抑えて、あくまで人類との協調を願っていらっしゃる。そのため、攻め込んできた人類を必要以上に殺すことがないよう、ガードンで食い止めているのだ。だが……」
「ちょっと待て。魔王って悪の権化とかじゃないんだな。俺たちの仲間の中には魔王は悪で、倒すべき存在だって言われてきたやつもいるからな。話だけ聞くと、魔王っていいやつじゃん」
すると、エリーが少しだけ語気を強めた。
「魔王様が悪の権化だと? それは、人類上層部が魔王領に侵略するために勝手に決めたレッテルだ。魔王様は魔族だけではなく、人類も含めたアンカールド全体のことを常に考えていらっしゃる。戦えば魔王様が負けることなどないはずなのに、決して戦って勝とうとはなさらないのだ。私は一人の魔族として、魔王様を心から尊敬している」
なるほどな~。これが本当の魔族で、本当の魔王像なのか。魔王が平和主義者だなんて、一体誰が想像できるんだよ。
「フフッ。やはりねぇ。私が昔魔王領にいた頃のことを思い出せば、今はおかしなことばかりなのだよ。彼女の言っていることは本当だよ、マウスちゃん。魔王は人類に仇なす存在なんかじゃあない」
エリーの顔色が和らいだ。
「そう言ってくれると、うれしい。話の続きだけど、魔王軍は守りに専念してこの状況の打開策を考えてはいるのだが、実は困ったことになっていて」
「どうかしたのか?」
「戦争が始まってから、アンカールド王国内の物資が極端に魔王領に入らなくなってしまった。特に食料の調達に困っているんだ。元々、魔王領の土地は作物には適していないから、魔法や科学の技術を売ることで人類から食料を得てきたんだ。ヴェネッツ商人は以前と変わらず仕入れてくれてはいるが、だんだんその値段が高くなっていて、庶民には手が届きにくくなっているんだ。だから、『人類領に侵略してでも食料を手に入れるべき』という主戦論が生まれてしまって。この状況を何とか改善できないかと、私が偵察役となって王国領の現状を探ることになったのだ。あわよくば、食料を安く譲ってくれるところを探せれば、と」
それで、道に迷った挙げ句、イノブーを使って田んぼに突進したと。おいおい。
「うーん、私たちじゃ農作物は分けてあげられても、魔族を養うほどは無理じゃね~。隣のユタカーのロッキーロード伯爵様なら、何とかなるかもしれんけど、知り合いじゃないからね~」
へえ~。隣のユタカーに農地を持ってる貴族がいるんだ。
「いや、すまない。魔王軍の課題をお前達に解決してもらいたいとは思っていない。だが、1つだけ頼みがある。わ、わたしの、その」
ん? 急にどうした?
「と、友達に、なってくれないか? その、私は人類の友達がいなくて、よければ」
「おらたちとエリーは、もう友達だぁ~。一緒に、おじちゃんおばちゃんのご飯を食った仲だよぉ~」
それを聞いたエリーは涙目だった。
「あら、パワーちゃんいいこと言うね~。そうよ~、ご飯を一緒に食べたらみ~んな友達よ~」
「確かに、そうだな。イノブー達もご飯食べたしな」
「そうね。私も魔族の友達ほしかったし、同年代の女の友達は何人いてもうれしいから」
プリンもうれしそうだ。
「我々はいずれ、魔王領に入るつもりだよ。そして、魔王と共に、この戦争を終わらせる方法を考えたい。ゴードンから入る予定だから、その時は話を通してくれないかい。何度も言うが、私たちは勇者パーティーではないからねぇ。君たちと仲良くやりたいのだよ。これでいいよねぇ、マウスちゃん」
「ああ、マジョの言う通りだ。俺たちが魔王領に入るときには案内を頼むよ、エリー」
エリーは目と顔を真っ赤にしている。
「そ、そうか……。今まで、これほどの優しさに触れてこなかったから、そ、その、慣れていないのだ。分かった。お前達が魔王領に来たときには、私が間に入ろう」
ご飯を食べ終わり、恒例のマジョの実験タイムが始まった。
「うわぁぁっぁぁぁぁぁっ!!」
「うむ、今日も最高の実験ができたよ。やはり、マウスちゃんは最高だねぇ」
「……」
俺はマジョの言葉に応える気力もなく、地面の土に落ちた自分のよだれに埋もれていた。
「お、おい。ラックは毎日こんなことをしているのか? それに、マジョの妨害魔法が1秒以内に切れた気がするのだが。妨害魔法の耐性が高い私でも30分は気絶していたというのに、こいつは一体何なのだ? それに、マウスちゃんとは?」
「ああ、それはね、まずラックってとってもドMなの」
「ドM? それは、どういうことだ?」
エリーの疑問について、プリンが丁寧に説明している。おい何言ってるのプリン? 君の口からそんな言葉を聞きたくなかったんだけど。てか俺がドMって、いつからそうなったんだよ
その後、俺たちは身支度を調えた。おじさんおばさんの依頼が解決したから、スタードに戻るためだ。
パワーはおじさんおばさんからお礼としてもらった山のような農作物を抱えてうれしそうにしている。帰ったらスタードの奴らに振る舞おうかな。
「じゃ、ありがとうおじさんおばさん。楽しかったわ」
「おら、ここにもっと居たいだ~。また来るだ~」
パワーは本当に名残惜しそうだ。
「また来てねぇ、パワーちゃん」
「元気でなぁ、みんな」
おじさんおばさんも少し寂しそうだ。
「安心してほしい。しばらくは私がここでお世話になることになったから、おじさんおばさんに寂しい思いはさせないつもりだ」
あれだけツンツンしていた魔族のエリーがすっかりなじんでいる。これからここら辺りの農家の手伝いをするらしい。
外でイノブー達がうれしそうにしている。
そして、俺たちはスタードに向けて出発した。
たったの1日だったけど、ほんといい時間を過ごした気がする。
魔族との交流や、魔王の考え方も知れて良かったし。
それにしても、エリーちゃんかわいかったな~。また会えるかな~。
読んでいただきありがとうございました。
第22話「初めましてこんにちは。魔族ってこんな感じなのかよ」でした。
今回は魔族のエリーという女の子を登場させました。
エリーを通して、魔王軍の実情や、魔王の考え方も少し述べることができたかなと思っています。
本文にもありますように、いずれラック達がゴードンから魔王領に入る展開も予定をしております。
その時には、エリーと再会することもいずれあるでしょう。
今後スタードに帰る彼らですが、また新しい展開が待っています。
明日(10月13日)の更新は、現時点では分かりません。3日連続は少し厳しいかなとも思っています。来週末が予定が入っていますし…。
何とか週2、無理なら週1で連載したいと思います。
よろしくお願いします。




