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(第2章完結!)女神ガチャに外れて捨てられた俺が、運だけで異世界を成り上がる  作者: エルティ
第1章 女神ガチャに外れて捨てられた俺が、運だけで最高の仲間たちと出会う
16/43

第16話 まさかのヴェネッツVIP待遇? そして、運命の再会!

ページを開いていただきありがとうございます。

1週間大変お待たせしました。「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第16話です。

いよいよ新都市ヴェネッツに着いたラック一行ですが、そこで待っていたのはまさかのVIP待遇と、まさかまさかの再会。

それでは、お読みください。

 あれから俺たちは夕暮れの空の下をしばらく歩いた。


 すると、遠くにものすごく明るい町が見える。


 「なあ、夜なのにあんな明るいの何でだ?」


 「ああ、あれは魔法灯を使っているからだよ。魔法灯は魔法都市ボムボムの特産だねぇ。さすがはヴェネッツの商人、人魔戦争が起きている中でも、魔族とうまく交易を続けているのさ」


 マジョが優しく教えてくれる。疲れているはずだけど、機嫌が良さそうだ。


 「へぇ~そりゃすげぇな。ヴェネッツの商人って魔族と交易してんのかよ」


 「ああ、そうさ。ヴェネッツ商人は利益のためなら誰とだって取引するからねぇ」


 「おらはおいしいもの食べたいだぁ~」


 パワーは相変わらず食べ物の話ばかりしている。よっぽど腹が減ったのか、じゃなかったらただの食いしん坊だな。


 そんなことを言いつつ歩いていると、商業都市ヴェネッツに着いた。


 俺は正直言って驚いた。


 まず、町自体がめちゃくちゃ明るい。それに、夜なのに人通りがすごい。歌ってる奴や踊ってるやつも多い。


 スタードじゃじゃこの時間はみんな酒場にいるか、家で寝るかぐらいだろ。


 それに、街中に川? 運河? がいくつも入り乱れていて、俺たちは橋を何度も渡った。


 ほんと、現実世界のヴェネツィアって言われても信じそうなくらいだわ。世界史の授業で習ったの覚えといて良かったな。


 スタードは都市って呼ばれてるけど、規模的にはこぢんまりしていて『町』って感じだ。


 でも、ヴェネッツは『都市』って言葉がぴったりの規模だった。


 夜でも開かれた大きな門の上には『交易と観光の町 ヴェネッツへようこそ!』と書いてある。


 門で門番にチェックを受ける。どうやら、入るためには一定の条件が必要らしい。


 「どういったご用件でしょうか」


 門番の固い口調に思わず不安になる。


 「どうも。マジョリティ侯爵家の長女、マジョだよ。通してくれないかい。彼らは私のパーティーメンバーだ。それとも、何か証明でも出した方がいいかい?」


 「し、失礼しましたマジョ様。どうぞお入りください」


 さすがは大貴族マジョリティ家のお嬢様、顔パスだった。


 「お前んちってやっぱすごいんだな。この街って何か入るのにでも条件があるのか?」


 「ああ、王族や貴族はすんなり入れるんだけどねぇ、商人や冒険者はある程度成功していないといけないんだよ。何せ、ここはいるだけで金がかかってしまう場所だからねぇ。それと、マジョリティ家は確かに大貴族だけど、私は今はただの冒険者さ。肩書きは使えるときだけ利用することにしてるよ」


 なんだよこいつ、何かかっこいいな。


 「そんなに金かかるのに、底辺冒険者の俺らが入っても大丈夫なのかよ」


 マジョは優しげに笑う。


 「ふふっ、これだけのドロップ品があれば金には困らないさ。まあ、いざというときはマジョリティ家の権力を振りかざせばいいだけだからねぇ。とりあえずドロップ品を買い取ってくれる商人の所に行こうか。こっちだよ」


 やっぱこいつ怖えわ。目的のためなら何でもしそうだし。


 マジョの後をついて行ってるけど、この都市ほんとすげぇな。


 まず、高い建物がいくつもある。スタードじゃ1階立ての建物がほとんどだから、町の見た目からして大分違う。このレベルの文明でどうやって作ったんだよこれ。


 中央の大通り脇には所狭しと商店あって、この世界じゃ見たことがないものばかり売っている。


 こっちには何かよくわからない機械? みたいなのとか、あっちには見たことない光ってる器具? とか。一体何に使うんだ?


 もちろん食事ができる店も多くて、種類も豊富だった。アンカールド中の名物料理屋が並んでいる。


 『エイガー名物巨大モーのワイン煮込み』、『バカチン名物完全植物性チーズグラタン』、『ユタカー名物ブーの太ももあぶり』、『スタード名物川魚の干したの』


 おい、スタードの名物だけ貧乏すぎないか? 値段が一桁違うんだが。


 中には魔族用の店もあるっぽいな。


 「ハイルランド名物オオワシの漬物」「ボムボム名物コウモリの漬物」「ケイヒン名産巨大うなぎの漬物」


 おいおい、名物が漬物しかないのかよ魔王領は? それも、えげつないのばっかだな。


 それにしてもネオン? みたいな明かりがものすごく鮮やかだ。


 東京ほどじゃないけど、ここが中世ヨーロッパ風異世界ってのが信じられないな。


 店の前を通ると、客引きから声をかけられた。


 「そこのお兄さん。冒険の疲れをとりたないですか? ええとこありまっせ。かわいい子もぎょうさんおりまっせ~」


 客引きの店の内容がメッチャ気になるのはひとまず置いとくとして、さっきからすれ違う人の話し方が何か聞いたことあると思ってたけど、おいおいここの人って関西弁話すのかよ。


 やっぱ大阪をイメージして作りでもしたのかこの街? この世界作った奴ってやっぱ日本人だろ、きっと。


 「なあ、こいつら関西弁話してんだけど、どういうことだ? アンカールドって地域によって話し方違うのかよ」


 マジョはうんうんと頷く。


 「そうだねぇ。スタードは田舎者の集まりだから比較的王都寄りの発音だけど、ヴェネッツやユタカーあたりはなまりが強いからねぇ。それに、魔王領もなまりがあるのさ。カンサイベン? それは知らないけど、こっちではヴェネッツ弁と呼ばれているよ」


 マジか。じゃあ確か、女神様がチャッキチャキのヴェネッツ弁を話すって言ってたから、関西弁を話すのかよ。


 てかスタードって田舎者の集まりなんだ……。俺大都会東京の出身なんだけど。


 マジョに連れられて行ったのは、ヴェネッツで一番規模の大きい(らしい)買い取り業者だった。


 ここだとどれだけ高いものでも大抵すぐに現金に換えてくれるらしい。


 『何でもお買い取り 買い取りマスター ヴェネッツ本店』と書いてある。チェーン店みたいだな。


 入ると、すごく豪華な内装で、そういうのに詳しくない俺でも金がかかっているのが分かる。


 「いらっしゃいませ。どのようなご用で?」


 入り口に構えていた正装の店員が話しかけてくる。どうやら門番の話が既に回っているらしく、先頭の俺じゃなくてマジョの方を見ているな。


 「これはこれは、マジョリティ侯爵家のご息女マジョ様。いかがいたしましたか?」


 「ああ、これを買い取ってもらいたくてねぇ。ついでに相談もしたいんだけど、いいかい?」


 とマジョが言うと、俺はパワーが持っている袋からメタルンの核とメタルインゴットを取り出した。


 ゴトッ。ゴトッ。


 「これって売ると高いんだろ? 俺たちの今のレベルでどれだけ装備に使って、どれだけ売ればいいか知りたいんだ」


 すると、それまでマジョを見ていた店員が青ざめて目を見開いた。


 「し、少々お待ちください。奥で上の者と相談してきますので」


 俺たちはしばらく、フカフカのソファーに座って待っていた。


 「さっきの人、なんか血相変えてたけど、何でだ?」


 「ふふっ。彼らには私たちが到底メタルンを狩れるようには見えないのさ。ましてやメタルインゴットをドロップするなんてねぇ。世の中に流通しているメタルインゴットは、専門の集団が取っているはずだけど、おそらくドロップしなさすぎて、そもそも商売にならないんだよ。だから彼らも久しぶりに見たのだろうねぇ」


 10分ほど待つと、奥から恰幅のいい女が現れた。


 「どうも、うちの店にメタルインゴットを出してくれるいうことで、ほんまにありがとうございます。私は店主のジェリーと申します。何卒、今後もお付き合いよろしゅうお願いします」


 「ああ、よろしくな。俺はアース出身のラックだ」


 ジェリーと握手する。ジェリーは首と手首に高価そうな宝石を身につけている。金持ってそうだな~。


 ジュエリーは俺たちのことを興味深そうに見ている。何か品定めされてるみたいだ。

 もしかして、ジュエリーの持ってるスキルと関係あるとか?


 「ラックさん、ですか。マジョリティ家のお嬢様をお連れとは、ほんまに驚きました。メタルインゴットの扱いについてですけど、本日は遅いから現金が用意できまへんので、今日はうちの金庫でお預かりして、明日詳しい交渉いうのはいかがでしょう。メタルインゴットの装備化についても、ご助言できますので」


 「うむ、ではお願いしよう。今日は疲れたし、もう遅いからねぇ。それに、メタルインゴットをいつまでも持ち歩いてもトラブルの元だからねぇ。マウスちゃん、この人は信用できるから安心だよ」


 俺はうんと頷いた。


 「分かった。ジェリーよろしく頼むわ。あと、どこか宿に泊まりたいんだけど、いいところ紹介してくれないか? ついでにうまい食堂も教えてくれると助かる」


 ジェリーはニッコリ笑った。これはミッキーとはまた違った、年季の入ったやり手な営業スマイルだな。


 「それなら、ホテルはこちらでご用意させていただきます。どうぞゆっくりされてください。レストランも予約しておきます。お代はいりまへん。どうぞ、ヴェネッツの街を楽しんでください。今後も、よろしゅうお願いします」


 「マジかよ。俺らVIP待遇じゃん。サイコーじゃねえかよ」


 おいおいついに俺の逆転異世界ウハウハライフの始まりだ! 無一文で野宿寸前から運だけで仲間集めてここまで来ちまったぜ~。あとはハーレムさえ達成すれば……っていかんいかん。


 「それじゃあ、ホテルに行こうかマウスちゃん、パワー君」


 「よお~し、腹一杯食って寝るだあぁ~」


 そう言ってマジョとパワーは歩き始めた。


 俺はこっそりジェリーの方を振り返り、アレについて聞いてみた。


 「あのさ、ジェリー。ヴェネッツでムフフな店ってあるの? あったらイイとこ教えてくんない?」


 それを聞いたジェリーはふっと笑い、男に指示をした。


 「あれを」


 「はい」


 そうすると、黒服が俺に一枚の紙を渡した。


 「健全なお店ですので、気軽に利用してください。ヴェネッツにお越しの時は無料にしておきますわ」


 思わずいやらしい笑いが出てくる。ぐふふ。


 「マジ? ありがとうなジェリー。今後もメタルインゴット出たら持ってくるから、もっといい店紹介してくれよ」 


 「はい。その際はぜひうちの店までよろしゅうお願いします」


 そんな話をして言って俺は「買い取りマスター ヴェネッツ本店」を出て行った。


 急いで走り、マジョとパワーに追いつく。マジョはヴェネッツの地理に明るいらしく、どんどんホテルに向かって進んでいる。


 「てか、そもそも異世界にホテルなんてほんとにあんのかよ。ちょっと大きな宿屋とかじゃないのか?」


 とか考えていた俺の予想は、いい意味で裏切られた。


 ホテルに着いたんだけど、マジで何なんだよこれ。


 この世界では考えられない高い建物で、見た目から明らかに超高級そうだ。現実でも見たことあるんじゃないかってぐらいすごいぞこれ。


 「なあ、ここって多分めっちゃ高いよな」


 「値段がかい? ここはヴェネッツで一番いいホテルさ。しかも、私たちが泊まるのは最上階のスイートルームだ。スタードだと、そうだねぇ、宿屋に1年泊まれてしまう額だろうさ」


 マジかよ。とんでもないVIP待遇だな。こんだけ俺らに投資しても、元が取れるって踏んでんのかよジュエリーは。


 だとしたらすげえ眼力だな。だって俺たち最強だしな、多分。


 ホテルに入ると、フロント? の内装も超豪華だ。


 この世界にある全ての資源を利用して、贅沢に作ってるように見えるぞ。


 地面がフカフカの毛皮か何かだしな。


 毛皮ってスタードじゃ冬にみんなが着る必需品らしいけど、ここじゃ床に敷いているって、なんかの冗談だろ。


 「部屋ごとの鍵をもらったから、一度部屋に行ってしばらくしたらここに集まろうか。レストランの地図ももらっているしねぇ」


 マジョの言葉に従い、俺たちはホテルの部屋に向かった。


 こんな高い建物の最上階って階段で行くのかと思いきや、エレベーターがあんじゃん。俺ひっくり返りそうになったわ。


 「これってエレベーター? おいおい、この世界の文明レベルでエレベーターってどうやって実現すんだよ。ここはどう考えても中世ぐらいだろ」


 「チュウセイ? 魔族というのは偉大でねぇ。魔法研究と技術研究を合わせて何でも作ってしまうのさ。私も昔見ただけだけだけど、魔都ハイルランドは相当なハイテク都市でねぇ。ただでさえ人間は魔族に劣っていると言うのに、研究力で劣ってるいるのだから、戦争を仕掛けるなんて王も愚かなことをしたものだよ」


 「そうだったんだ。魔族ってすげぇんだな。会ってみたいし、魔都ハイルランドにも行ってみたくなったわ」


 にしても、マジョがこういう政治的なこと言うのは珍しいな。


 「まあ、私は自分の研究さえできれば何でもいいんだがねぇ。最高の実験対象もいることだし。つまり、私は君がいるところにいればいいのさ」


 一瞬聞いたら、ときめいてしまいそうだったけど、よく考えたらただのマッドサイエンティスト宣言だよな。やっぱりマジョはマジョだな。


 俺たちは魔法と技術の結晶であるエレベーターに乗って最上階に行った。


 最上階はVIP専用らしく、コンシェルジュ? って言うんだっけ。お世話専用の従業員の部屋がある。


 最上階の部屋はとにかく豪華だった。


 ソファやベッドは超フカフカだし、それぞれに部屋が3つずつあるし、食べ物や飲み物なんかがいつでも取れるようになっている。


 スタードで必死に荷物持ちして住んでた、あの狭くて固いベッドは何だったんだよ。


 こりゃサイコーだな。ヴェネッツに来るたびここの宿が使えるなら、ここに住んでニートしてもいいよな~。


 まあ冗談だけど、女神エレクトラへの復讐って目的を一瞬忘れるくらい気持ちいいわ。


 俺たちは1階で集合すると、ホテルの人にレストランに案内してもらった。


 「いやいや、これ俺ら場違いすぎるだろ」


 着いたのが、どう見ても上流階級の人が通ってそうな、ドレスコードって言んだっけ? のある上品すぎるレストランだったからだ。


 ガラス張りで、外から見ても証明や内装がおしゃれすぎて、どう考えても薄汚れた冒険者が来る所じゃない。


 「おいしそうだけど、おらここはちょっと緊張するだぁ。思いっきり食べられるか不安だぁ」


 パワーは居心地悪そうにしている。パワーにとってご飯はとにかく腹一杯食えればいいものだからな。皿に一品載せられてちまちま出てくるレストランなんて待ってられないだろう。


 「悪いけど、ここじゃ縮こまっちゃって、思いっきり食えないし飲めないからさ。安くていいから、おいしいものをマナーを気にせずたらふく食べられる、冒険者が集まるような店に連れてってくれよ」


 ホテルの従業員は少し困惑した様子だったが、すぐに理解したようだ。


 「わかりました。では、高級冒険者の酒場、リバーズにご案内します」


 そう言われて向かったのは、メインストリートから少し奥に行った酒場だった。


 「こちらです」


 さっきの金属とガラス張りの店とはうって変わって木製の建物だ。だが、作りは相当しっかりしている。何度も較べて申し訳ないみたいだけど、スタードの酒場は年季が来ててがたついてたからな。


 「こちらです。この店で一番いい席です。どうぞごゆっくり」


 ホテルマンから奥の席を案内されて座った。いつの間にか予約を済ませてたみたいだな。


 「あんたほんと優秀だな。また頼むよ」


 ホテルマンはニッコリ笑う。いい評価をもらったのが嬉しいようだ。


 顧客の評価が給料に直結するのかな? よく分からんけど。


 「さあ、座ろうか。冒険者向けの店だけど、ここはここでいい店でねぇ。ヴェネッツの名物は特にはないんだけど、ここじゃあどの名物でも食べられるんだよ」


 「おら、モーとブーの料理が食いてぇだぁ!」


 パワーがナイフとフォークを持って皿をチャンチャンしている。こらみっともないでしょうが。


 ま、気持ちは分かるけどね。俺も早くモーとブーを食べたいし。


 「じゃあ、食事といこうか。君、料理を持ってきてくれるかい」


 マジョが右手を挙げると、早速係の女の人が持ってきてくれた。さすがはVIP席だな。


 「エイガー名物巨大モーのワイン煮を1つと、ユタカー名物ブーのモモの丸焼きを1つ、それにハイルランド名物のオオワシの漬物を1つ。あとはシュワーとワインをたくさん。よろしく頼んだよ」


 「かしこまりました」


 マジョってこういうときは、普通の気が利くいい女なんだよな~。


 ん? てかオオワシの漬物頼まなかった?


 「マジョ、お前オオワシの漬物食べるのかよ。聞いてるだけでやばそうな料理だけど、うまいのかそれ?」


 マジョは穏やかな、先生が生徒に教えるような笑顔で答える。


 「魔王領は食糧資源が少ないのは知っているだろう。だから、スタードと同じように保存食が盛んなのさ。中でも漬物は魔王領で愛用されている発酵食で、オオワシは臭いけど味は絶品なんだよ。昔魔都に両親に連れて行ってもらった時に食べてから、やみつきになってしまってねぇ」


 「うーん、日本で言う、くさやの鳥バージョンみたいなもんか?」


 「臭くてうまい食べ物だということかい? それは、食べれば分かるさ」


 しばらく待つと、次々と料理が運ばれてくる。


 大きな容器に入ったうまそうなモーのワイン煮、巨大なブーのモモの丸焼き、そして皿に入った多分オオワシ? だった何か。


 ものすごくうまい匂いの中から、とんでもない臭い匂いがしてくる。これ絶対オオワシの漬物だよな。


 シュワーとワインが並んだところで、俺は音頭をとった。


 「よーし、今日はみんなお疲れ! 最高の稼ぎとレベリングだったぜ。 思いっきり食べて飲もう。カンパーイ!」


 「カンパーイ!」「フフッ、乾杯」


 俺たちはシュワーを一気に流し込むと、メシにかぶりついた。


 「うんめぇ~。このブーほんとにうめぇなぁ~」


 パワーはブーのモモを切らずに直接持ってバリバリと食べている。あの筋肉まみれの体を維持するにはこれぐらい必要なんだろう。


 俺はモーのワイン煮をがぶりと食べる。モーはとろけるぐらい柔らかい。


 「ほんとうまいなこれ。これタダなんだよな」


 そういう俺を見ながら、マジョは鳥だった何かの腹を割き、肉だったものをスプーンですくいながらうまそうに食べている。


 「ああ、ここもジェリーがお代を持っているはずさ。彼女は私たちをこれからも有用なパーティーだと判断したんだよ。食べるかい、マウスちゃん」


 そう言ってマジョはスプーンをこっちに向けてきた。鳥だった何かをアーンしろと言うことだろうな。


 「うーん……ま、食ってみるか。アーン」


 パクッ。口に入れた瞬間、猛烈な臭みが喉と鼻を襲う。


 「ゲホッ」


 でも、それは一瞬だった。後からとにかく濃厚なうまみが押し寄せてきたからだ。


 「うんま! これうまいなマジョ」


 「だろう。慣れればクセになるのさ」


 「おらはブーだけでいいだぁ!」


 そんな風に、俺たちは楽しく飲み食いをしていた。いやいい店だなここ。


 そのうち、俺たちの周りに冒険者が集まってきた。


 さっきから視線が気になるとは思ってたんだけど、そこそこ身なりのいい冒険者が俺たちの前に来た感じだ。


 ヴェネッツでも冒険者って結構いるんだよな。


 「なあ、そこの弱そうな君、君がメタルン倒したってほんまなん?」


 周りの冒険者は嘘だろ、こいつが、という顔で見ている


 「おい、誰が弱そうな奴だ。俺様の運でメタルンを引き寄せたんだぞ」


 あー俺酔ってんな。普段こんなこと心の中でしか言わないのに、思いっきり言っちゃってるよ。


 「ちがうだぁ! おらのパワーでメタルンを粉砕しただぁ!」


 パワーが急に立って力こぶしを見せつけている。こいつはほんとに酔っているなあ。


 その後もすごいという冒険者がたくさん来て俺とパワーはマジで上機嫌だった。


 しかし、そんな中でもマジョだけは冷静だった。


 「君たち、浮かれるのも構わないがねぇ、向こうでちょっとしたトラブルになっているよ。気にならないかい」


 マジョが他人のトラブルを気にする? 自分の研究しか興味ないはずなのに。


 俺は立ち上がり、その方向を見た。すると、女の冒険者の周りを3人の男達が囲んでいる。


 「やめてください。私はあなたたちとパーティーを組む気はありません!」


 女はパーティー勧誘を拒否しているみたいだ。でも、酔った男達は一向に引く気配がない。


 「いいじゃーん、ねぇちゃんよ。あんたみたいなかわいい子がいるとやる気が出るんだよなぁ」


 「いい思いさせてやるからさ、一緒に行こうぜ俺らの宿によぉ」


 「あれはまずいんじゃないかい、マウスちゃん。君が解決するべきだろう。行ってきたまえ」


 俺が? でも、あれはほっとけないな。周りの奴らも男達がレベルが高いからか、ただ見ているだけだ。しょうがねぇなあ。


 「いいから、ついて来なよ。」


 そう言って、真ん中のやたらでかい冒険者が女の腕をつかむ。


 その瞬間だった。


 「おいやめろお前ら。大の男3人で、相手が嫌がってんのに何やってんだ」


 3人の男がこっちを振り向いたかと思ったら、突然


 「ぎゃぁあああああああ!!」


 と言って床に倒れて泡拭いてるじゃないか。


 俺なんかしたっけこいつらに? まさか覇○色の覇気に目覚めたってこと?


 そんな馬鹿なことを思いながら、女に大丈夫かと声をかけようとした。


 「えっ……。もしかして、幸夫くん?」


 は? この世界で俺を本名で呼ぶ、だって?


 俺は女の顔をまっすぐ見た。相手もまっすぐ見ている。


 女の子は、明らかに昔見たことがある。とても、懐かしい顔だった。


 「え! も、もしかして、ひ、媛ちゃん、なの?」


 俺は信じられなかった。


 まさか、この異世界で。俺の初恋の相手、深窓媛と再会するなんて。

読んでいただきありがとうございました。

第16話「まさかのヴェネッツVIP待遇? そして、運命の再会!」でした。

結構ボリュームありましたが、ヴェネッツの街の様子は伝わりましたでしょうか?

ラック達がヴェネッツ商人のジェリーからVIP待遇にされ、一気にウハウハの異世界ライフに。

そして、6話で出てきた勇者ユウこと深窓勇の最愛の妹、深窓媛と異世界でまさかの再会を果たすラック。

しかも、媛はラックの初恋の人です。これからどうなるんでしょうね~。

次は、媛ことプリンがヴェネッツに行った経緯と、勇者パーティーの続報をお届けする予定です。

週1でもヒーヒー言ってますが何とか続いていきます(多分)。どうぞお楽しみに。

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