第15話 パワーの本領発揮? さあ、メタルン狩りに行こう!
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「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第15話です。
今まで散々弱かったラックですが、とあるぷるぷるした金属製の魔物に出会うことで大きく成長します。
お楽しみに!
スタードを出発してもう5日がたった。
道はきれいに舗装され整備されていて、とても安全だった。
ほとんど戦闘らしい戦闘はないし、魔法テントを立てる旅行者・冒険者専用の宿泊場所もあって安心だったな。
路銀は基本的にマジョが出してくれている。
馬車で行きたいと俺は言ったけど、「歩いて行ってこそ冒険者じゃないのかい?」というマジョの一言で歩いてここまで来た。
「いいのかよこれ、マジョ。全部路銀出してもらって。俺完全にヒモ冒険者じゃん」
「フフッ、君はヒモではないよ。代わりに素晴らしい対価を支払ってるじゃないかい、その体でねぇ」
「おいおい、なんかエロい言い方やめてくれよ。俺が毎晩体で路銀払ってるみたいじゃねーか」
もちろん、冒険中も毎朝起きてすぐにマジョの実験タイムが待っている。
「うがぁあああああああ」
苦痛で暴れすぎて、地面の土と涙とよだれが混ざってよく分からない。
「は-っはっは。私のハイバインドが1秒で切れるとはねぇ。マジョリティ家屈指の護衛でも1時間は動けなかったのに、さすがはマウスちゃん、最高の実験になるねぇ」
マジョは喜びながら頷く。てかマジョリティ家の護衛マジでかわいそうだな……。
「死ぬかと思ったろうが! 一瞬」
「一瞬で終わるのだからいいじゃないかい。その代わり、私は君の希望を必ず実現させるよ」
パワーはと言うと、普段は荷物持ちをやってくれている。
力だけが取り柄ということで、自分から喜んでやってくれた。食料とか重いから、正直言ってありがたいな。
「荷物持ちなら任せてくれぇ。 おらのパワーはアンカールド1だぁ」
ま、ありがたいっちゃありがたいんだけど、こいつマジでどんくさいから、足が遅いんだよな。
パワーに合わせてゆっくり歩いたから、5日もかかってしまったのだ。
「もうヴェネッツまで近いところに来たねぇ」
「マジか。もうそんな所まで来たのかよ。そもそも、ヴェネッツってどんなところなんだ?」
マジョはふふっ、と優しく笑った。
「ヴェネッツには今回の冒険の後立ち寄る予定だよ。一言で言うと、大商人の町、だねぇ。ヴェネッツで買えないものはない、と言われているよ」
「へぇ~、楽しみだなヴェネッツ」
てことは、あーんな店やこーんな店もあるってことか?
今度パイセンに教えてもらって、一緒に行こうかな、グフフ。
「マウスちゃん、何を考えているか全て顔に出ているよ」
え、何でわかんの?
「な、何を考えてたって言うんだよ、俺が」
「ん? 言ったほうがいいのかい?」
マジョがいたずらっぽく笑う。
「言うな、いや言わないでください、マジョ様!」
パワーはそういうのはまだ興味がないお年頃らしく、全く分かっていない。
「どうかしたかぁ?」
こんなことがありつつ、街道を外れて3時間くらい歩いたところにそれはあった。
「ここが、おれたちのレベリングするダンジョンか」
ダンジョンの横には『メタルンの住処』と書いてある。
ん? メタルン?
「なあマジョ、これってもしかして、俺らの世界でRPGによく出てくる、素早くてすぐ逃げてダメージが入りづらい、ぷるぷるした金属スライムがいる場所、ってこと?」
「よくわかったねぇマウスちゃん。その通りだよ」
ゲームの通りなら、金属スライムが出るところにはレベリングをする冒険者が殺到しているはずだ。
でも、どう見てもダンジョンは寂れている。俺たち以外に人の気配はない。
「こんな効率よさそうなダンジョンに、なんで冒険者がいないんだよ」
マジョはふふっと笑う。
「理由は入れば分かるさ。さあ入ろうか」
ダンジョンの中はやはり管理されておらず、薄汚れている。
当然明かりもないが、マジョの魔法たいまつで何とか先に進むことができた。
てか指先から炎が出んのかよ。
「マジョ、お前攻撃魔法が使えないんじゃなかったのか?」
「これは生活魔法だからねぇ。ノーカウントだよ。メタルンが出るのは地下三階だよ。楽しみだねぇ」
マジョはまるで、1回ここに来たことがあるかのように話している。よく知ってんなコイツ。
一階から地下一階に降りようとしたとき、いきなり敵の気配がした。
冒険者が近寄らないくらいだ。相当やばい敵がくるはずだ。俺は身構えた。
「キュー」「キュー」「キュー」
気がつくと、スライムが目の前に5匹いた。
「ええ? こんなとこでスライムが出てくんの?」
さすがに俺もパワーも苦戦するような相手じゃない。
「ああ、言ってなかったかい? このダンジョンはメタリンとスライムしか出ないんだよ。だから冒険者に不人気なんだ」
マジョはそう言うと、こう告げた。
「うむ、とりあえずメタルン狩りの練習と行こうか。マウスちゃんは攻撃せず、防御に徹するんだ。私は何もしないから、パワー君頼んだよ」
「わかったぁ。おらにまかせろぉ!」
マジョがこう言うからには意味があるんだろう。
俺はスタードで見繕った見習い用短剣を両手で引き抜いて前に出し、防御の構えを作った。
実質これが最初の防御役だから緊張するな。まあスライムだから、もし防御ミスってもたいしたダメージは入らないだろうし。
「よおーし、やるぞぉ!」
攻撃役のパワーがこん棒を振り上げる。すごい迫力だ。
パワーは大きな木製のこん棒をスライム目がけて振り下ろした。
ブオン! スカッ。
へ?
パワーのこん棒はスライムから遠く離れたところをブンと横切って行った。
スライムは不思議そうにこっちを見ている。
「かまわず攻撃するんだよ、パワー君」
魔女の口調は余裕そのものだ。
ブオン。ブオン。ブオン。ブオン。ブオン。ブオン。
しかし、パワーの攻撃は全く当たらなかった。
俺が運パリィでスライムをはじいているから問題ないけど、さすがに疲れてきたな。
これがギル達が言ってた5回冒険に行って1回も攻撃が当たらないってやつか。スライムに攻撃が当たらないんじゃ、そりゃ他の魔物に当たるわけがないわな。
「おいマジョ、これいつまでやるんだ?」
気づけば20分以上スライムと戦っている。スライムも疲れ顔だ。
しかし、パワーは全く疲れた様子がない。気持ちよく思いっきりこん棒を振っている。攻撃するのが楽しくて仕方がないんだろうな。
確かにアレが当たれば、ここら辺りの魔物は木っ端みじんだろう。
でも当たるはずがない。そもそも攻撃がゆっくりすぎるし、狙いがめちゃくちゃ過ぎる。これはちょっとやそっとで直るもんでもないだろ。
「よし、そこまでだよパワー君。攻撃をやめるんだ」
すると、パワーは少し残念そうにしながらも素直に攻撃をやめた。
「マウスちゃん、私があのスライムに妨害魔法を何重にもかけるから、君は隙を見て『運影縫い』をかけくれるかい」
「分かった」
返事をした瞬間、マジョが一気に複数の妨害魔法を唱え始めた。しかも無詠唱だぞ。
元女神候補のミドリですら詠唱時間が結構あったのに、どんだけすごいんだコイツは。
「バインド」「パラライズ」「ブラインド」「スロー」「スリープ」
その瞬間、スライムはピクリとも動かなかった。
これ全部食らったら、俺なんかショック死するんじゃないか。
何とか影が見えたため、俺は指定されたスライムの後ろに回り、「運影縫い」を放つ。
スライムは相変わらず動かない。効いてんのかこれ?
「パワー君、『ためる』を限界まで使うんだ。いいかい、ゆっくりでいいからねぇ」
「わかったぁ!」
パワーが『ためる』を始めた。すると、パワーの周りにほんのりオーラのようなものが見え始める。
これはただの戦士の『ためる』じゃないはずだ。レアスキル由来の上位版だな、きっと。
パワーの周りのオーラが薄赤色から青白くなった時、マジョは告げた。
「今だよ、パワー君。君の攻撃を放つんだ。」
すると、今まで『ためる』でひたすら力をためていたパワーが巨大な木のこん棒を両手で持ち、スライムに攻撃した。
ズゴォォォォォン!!!
一瞬、地震でも起きたのかと思うくらいの衝撃が、地面に響いた。
パワーが地面を叩いた音が、ダンジョン中にこだましている。
これがパワーのフルパワー攻撃か。なんつー威力だ。
しかし、パワーの渾身の攻撃は当然のように当たらない。おいおい、止まってる敵にすら当たらないのかよ。
「パワー君、当たるまで何度でも叩くんだ」
マジョのその声を聞いたパワーは、力の限り地面を叩き続ける。そのたびに地面が揺れる。しばらくは『ためる』の効果が続くようだ。
そして、5回目だった。パワーのこん棒がスライムに直撃した。
『3500ダメージ』
「は?」
何なんだこの半端ない攻撃は。地面までえぐれてんじゃねーか。
クロのパーティーで見たアカの攻撃なんて比じゃないぞ。
「やったぁ、やったぞぉ! おらの攻撃が当たったぁ! おらが敵を倒したぞぉ!」
パワーはまるで初めて敵を倒したかのように嬉しがっている。もしかしてこれが最初なのか?
「つーか、今の攻撃何なんだよ。これスタード1どころか、アンカールド1のダメージが出せるんじゃないかパワーは」
俺なんかクリティカルで5ダメージだぞ。マジで嫌になるよな。
「どうだい、マウスちゃん。これがパワー君の真の力だよ。要は、どんな能力やレアスキルも、うまく組み合わせて使えばいいってことさ。これでこのパーティーの戦士は決定でいいかい?」
マジョの表情は確信に満ちている。
そうだ、俺とパワーは単体じゃ役に立たないけど、組み合わせれば最強になれるってことだ。
俺は力強くマジョに頷く。そして、パワーの方を向いた。
「ああ。パワーお前マジですげぇな。俺たちが一緒にいればきっとすごいことができる。俺のパーティーに正式に加入してくれ。手に入れたものの分け前は3等分だ。改めてよろしくな」
パワーは目を輝かせている。
「ほんとぉ? いいのぉ? ありがとぉ~!!」
ガシッ。ググゥ~。
「わかったから抱きつくなって! 痛いって!」
しばらくパワーに絞められた後、気になっていたことをマジョに聞いてみた。
「なあマジョ、この階ってスライムしか出てこないみたいだけど、地下3階に降りればメタリンってのに出会えるのか? そもそも俺とパワーの攻撃がメタリンに通用すると思えないんだけど」
いや、パワーの攻撃が当たれば通用するだろうけど、当たればね。
マジョはふふんと目を見開いた。
「マウスちゃん、まさにそこだよ。まず、普通の冒険者がこのダンジョンに来てもスライムしか出現しない。ごく限られた幸運の持ち主がいない限り、そもそもメタリンには出会えないのさ。そして、万一メタリンに出会えたとしても、普通の冒険者の攻撃は通さないしそもそも当たらない。そして、逃げ足が速すぎてとても狩れたもんじゃないんだ。だから狩れればレベリングの効率は最高なのに誰も来ないのさ。でも」
マジョは嬉しそうだ。
「マウスちゃんとパワー君と私。この3人ならきっとメタリンを狩れるはずさ。うまくいけば君たちも一気に上級冒険者の仲間入り、となるだろうねぇ」
すごいなマジョって。最近マジョに感心してばかりだわ。どこから来るんだこの情熱は。
マジョはうれしそうにニヤニヤしている。
「そして、マウスちゃんのレベルが上がれば、私の研究が更に進むというわけさ。ふっふっふ」
やっぱ、研究のための情熱じゃねぇか。
その後、俺たちはスライムをうまくいなしながら、地下へと潜っていき、マジョの手引きで地下三階の一番奥の広間に来た。
「メタルンはここで必ず現れる。マウスちゃんの幸運のおかげさ。現れたらマウスちゃんは運影縫い、パワー君はためるだよ。いいかい」
俺とパワーはうんと頷いた。その時だった。
岩の影からぬめっとした鈍色の金属スライム、メタリンが現れたのは。
「じゃあ行くよ」
と言った瞬間、マジョは複数の妨害魔法を無詠唱でメタリンにかけた、それまでぴょんぴょん跳びはねていたメタリンの動きが鈍くなる。
すかさず俺はメタルンの裏に回り、『運影縫い』を放つ。メタリンの動きが止まった。
その間、パワーはひたすら『ためる』を繰り返している。
メタルンが止まっている時間はそんなに長くないはずだ。
「マウスちゃん、パワー君がためている間攻撃するんだよ。君ならメタルン相手でも確実に攻撃が当たるし、確実にクリティカルを出せるはずだからね」
そう言われた俺は、短剣をメタルンに差し込んだ。
『クリティカル 5ダメージ』
当然のように命中、当然のようにクリティカルだ。
「続けるんだよ、マウスちゃん」
そういうマジョの声を聞いて、俺は何度もメタルンに短剣を突き刺す。
クリティカル。クリティカル。クリティカル。クリティカル。手応えで分かる。
「食らえ!」
そして、最後の1撃でメタリンが溶けてなくなった。
「っしゃあああ!」
この俺が、冒険者が誰も倒せないメタルンを倒した?
冗談だよなおい。この世界に来てからずっと弱い、雑魚だと馬鹿にされていた俺が?
うれしさよりも、驚きの気持ちが大きかった。
すると、体の中でシステム音が鳴り響く。
『レベルアップ レベル11 レベルアップ レベル12 レベルアップ レベル13 レベルアップ レベル14 レベルアップ レベル15』
「はあ?」
驚きの上に驚きで、俺は変な声を出すことしかできない。
パワーは力をためながら叫んだ。
「おらレベル15になっただぁ!」
「私は30から32だねぇ。ざっと10000経験値と言ったところか」
俺は一瞬意識が飛びそうになった。
「い、10000だと? おれが、メタルンを倒して10000経験値? もしかして俺って本当にすげーのか?」
高レベルのパーティーで1ヶ月荷物持ちをしてやっとのことためた経験値が、たった1体の魔物で得られるのかよ。バグだろマジで。
「その通りだよ、マウスちゃん。君は本当にすごいんだよ。要は、君のすごさを周りが分かっていないだけなのさ。まあ、私だけは分かっていたがねぇ」
この間もパワーはずっとためるを使っている。
「パワー君、大変だろうけどためるをずっと使うんだよ。次は君の出番だからねぇ」
「わかったぁ!」
パワーの体の周りに青白いオーラが出てきた。『ためる』がたまっている証拠だ。
普通の戦士の「ためる」はためる時間が長い割にせいぜい攻撃力1.5倍ぐらいで、レベルが上がった戦士はほとんど使わない。でも、パワーの『ためる』はレアスキル由来だから限界がないようだ。
10分ほどたった後、また岩の間がらヌラっとメタルンが現れた。
「本当にマウスちゃんの運はすごいねぇ。マウスちゃん、さっきと同じように私たちで妨害を仕掛けるんだよ。その後は、パワー君の攻撃の出番さ」
マジョは逃げようとするメタルン目がけて無詠唱で妨害魔法を何重にもかけた。
そして、動きが鈍くなったメタルンの後ろに俺が回り、『運影縫い』を放つ。
「さあ、いこうかパワー君」
その時、ためるが最高潮のパワーはメタルン目がけてこん棒を振り抜いた。
ズゴォォォン!!
当然のように当たらない。メタルンから離れた地面をぶったたいていた。
でも、パワーは諦めない。攻撃できるのが楽しくて仕方なさそうだ。外れても気にしない性格はいいよな。
そして、10回目。そろそろマジョの妨害魔法とパワーの『ためる』が切れかかるときだった。
『1000ダメージ』
「やったぁ! メタルン倒したぁ!」
パワーは大喜びだ。
「だろうとは思ってたけど、こいつは通常攻撃でメタルン倒せるんかよ」
その時だった。
ゴトッ
ん? 何かのドロップ?
メタルンがいた場所に、金属の板が落ちていた。
「なあマジョ、このドロップ品何なんだ? ただの金属に見えるんだけど」
「はっはっは。こんなに早く出るとはねぇ。やはり君の運はものすごいよマウスちゃん」
マジョは金属を手に取った。結構重そうだな。
「なあ、これってすごいもんなの? もしかしてレアドロップとか?」
「これはメタルインゴットだよ。メタルンからしか出ない、しかも滅多に出ないレアドロップ品だよ」
俺は思わず、マジョが持っていたメタルインゴットってのを持ってみた。めっちゃ重たいなこれ。
「滅多に出ないレアドロップ? え、これいくらすんだよ」
「そうだねぇ。メタルインゴットは高レベル冒険者の装備強化には欠かせない素材だからねぇ。ヴェネッツの商人にでも売れば、500万イェンは下らないはずだよ」
聞いた瞬間、俺は後ろ向けにばったり倒れた。
「ご、500万? これ1つで? 嘘だろ」
今までスタードで強い冒険者について行ったときもせいぜい1日辺り1人5万イェンが上限だったはずだ。安全な場所で手堅くやってるからそうなんだろうけど、500万て。マジで現実味がねぇ。日本でいきなり高校生が500万渡されたらびっくりするのと同じで、すぐに受け入れることができない。
「500万……。わかんねぇけどぉ、うまいもの腹いっぱい食べられるなぁ……」
パワーは別の意味でうっとりしている。こいつこんな時も自分の力と食うことしか興味ないのかよ。
「君たち、これくらいで浸っている場合じゃあないよ。君たちのレアスキルを生かせば、これはごく当たり前のことなんだ。私たちの目的はまだこの先にあるはずだよねぇ。さあ、次のメタルンが来るよ」
マジョの言葉を聞いて、俺は我に返り立ち上がった。
「マジョの言う通りだ。俺たちにとってここは通過点に過ぎない。女神エレクトラへの復讐に向けて、最短距離で強くなるぞ俺は」
「おらも、もっと強くなってご飯いっぱい食べるぞぉ~」
こんな調子で、俺たちはメタルン狩りに明け暮れた。
その後、夕方に10匹目のメタルンを倒したところで、俺たちの今日の冒険は終わった。
パワーの攻撃は相変わらずすごくて、全然当たらないけど当たったらメタルンを一撃で殺していた。
こいつの「ためる」の攻撃なら、めっちゃ強いって噂の天竜にもダメージが入るんじゃないか? って思うぐらいすごいわ。
パワーは何百回も地面を全力で叩いたから、疲れているはずなんだけど、攻撃が当たって活躍できたからか、ものすごく上機嫌だった。
「おらのパワーは最強だぁ。おら、このパーティーに入ってよかったぁ。今までどのパーティーでも荷物持ちだったから、おらを戦士として大事にしていくれるラック達には感謝だぁ」
いいこと言うじゃねぇか。
マジョは毎回全力で妨害魔法をかけ続けたせいか、MPが底をつきかけていた。相当疲れている様子だ。
マジョの妨害魔法がなかったらメタルンなんて狩れるわけないからな。
「パワー君、君は最強なんだよ。君がいて良かった。とはいえ、少々疲れたねぇ」
俺は運パリィを基本にしつつも、運影縫いで動きを止めたり、パワーがためている途中に攻撃したりした。
疲れたけど興奮してるからか疲れを感じない。
だって、ドロップ品がものすごかったから。
俺たちはおよそ20匹のメタルンに遭遇し、10匹を倒すことができた。
その中の全てから『メタリンの核』をドロップした。これが1つ20万イェンらしい。もはや驚きもしないな。
そして、5匹から『メタルインゴット』をドロップした。これで合計2500万イェンだ。
でも、本当のやばかったのは最後にドロップした一冊の本だった。
最後のメタルンを倒すと、メタルンが居たところに銀色の小さな紙が落ちる。何だろこれ。
「なあ、メタルンから紙が出てきたんだけど、これ何なんだ?」
マジョは心底嬉しそうに笑って言う。
「ふっふっふ、やはりマウスちゃんの運はとてつもないと言ったところだろうかねぇ。これはスキルブックさ。スキルブックはどの魔物からでも手に入るのだけど、ドロップ率が超低確率でねぇ。闇市じゃあ高く売られていんだるよ」
これってスキルブックなのか。そんな貴重なんだな。
開いてみてみると、『逃げ足の心得』と書いてある。
「おい、『逃げ足の心得』って書いてあるけど、これ絶対しょぼいだろ。『逃げる確率が大幅に上がる』って、ただ逃げるだけじゃねぇかよ」
だって逃げるだけだしな。誰でもできるだろ。
でも、俺の思い込みが間違いだとマジョが教えてくれた。
「とんでもない。『逃げ足の心得』はスキルブックの中でも最も入手が困難と言われているものの1つさ。どんな強敵からでもほぼ確実に、かつ安全に逃げられるようになるんだ。命が1つしかないこの世界の冒険者なら、だれもがほしがるものだよ。それに、」
と、マジョは一息つく。そして笑った。
「マウスちゃんの運とこのスキルブックが合わされば、たとえ天竜や魔王からでも逃げ出せるさ。君にとって最強のアイテムなんだよ。さあ、習得したまえ」
そんなすごいアイテムなのか。ん? 待てよ?
「ちょっと待った。習得するのはいいんだけど、その前に聞いておきたい。この『逃げ足の心得』は、売ったらいくらくらいするんだ」
「そうだねぇ。本当に貴重なものだから、ヴェネッツの商人なら5000万イェン出してでも買うだろうねぇ」
「ええええ!!」
5000万イェンって……。メタルインゴットの比じゃないじゃねぇか。売ったらずっと遊んで暮らせるじゃん。
でも、俺の目的はこの世界でのんびり暮らすことじゃない。それは目的を達成してからやればいいことだ。
「わかった。ちょっとビビるけど、マジョ、お前が言うなら間違いないと俺は信じる。使うぞ」
そう思った瞬間、スキルブックは消えて俺の中に入ってくる。スキルに『逃げ足の心得』が追加された。
本来なら『逃げ足の心得』のドロップは絶対にあり得ないぐらいの低い確率らしいけど、俺の運が最強ってことだな。
「ふむ、スキルブック以外はざっと2600万イェンといったところか。山分けにするにしてもちょっとした地方貴族並だねぇ。マウスちゃん、これは全部売るのかい?」
貴族並だって? とんでもねえな。
館でも作って3人で豊かに暮らすのもありっちゃありだけど、俺の目標はあくまで女神エレクトラへの復讐だ。
「ある程度は売ってこれからの路銀にする。でも、俺とパワーのレベルも上がったことだし、装備を整えないとな。できればメタルインゴットを武器と防具に使いたい。パワーのこん棒もボロボロだしな」
俺とパワーは1日にしてレベル10から30になり、マジョは30から40になっていた。
本当な何年もかけてたどり着くはずだけど、俺たちは1日で達成したんだ。 レベルだけ見たら一流冒険者の仲間入りだな。
それにしてもマジョってすげぇなあ。
パワーを勧誘したときから、これを見据えていたわけだろ。
どうやったらこんなこと思いつくんだよ。やっぱり研究のためなのか。
「そうだねぇ。それじゃあ、今日はこのままヴェネッツに向かって、ヴェネッツの宿に泊まろうか。ヴェネッツの宿屋や食事はスタードとは比べものにならないくらい高いけど、今の私たちには問題ないことだからねぇ」
「そんな豪華なのか、ヴェネッツって。楽しみだな」
「おらもおいしい食事が楽しみだぁ!」
食事も宿も楽しみだけど、夜こっそり宿を抜け出してムフフな店を探しに行かなくちゃな!
「あと、これで私たちもちょっとした大金持ちだ。ということは、盗賊や悪い冒険者から狙われることになるねぇ。対人戦が待っているよ。ああ、マウスちゃん以外の人間にも妨害魔法をかけられるかと思うと楽しみで仕方がないねぇ。早く襲ってこないかねぇ」
やっぱこいつやべーわ。でも、対人戦か。覚悟しないとな。
そうして俺たちは、ヴェネッツの方へ歩き出した。
星が見え始めているけど、ほんとにきれいに見えるな。俺たちの晴れ晴れとした気持ちを表しているみたいだ。
第15話「パワーの本領発揮? さあ、メタルン狩りに行こう!」を読んでいただきありがとうございました。
マジョがパワーをパーティーに勧誘した理由が分かるようになっています。
マジョも言っていますが、使えないと思われている能力やレアスキルも、組み合わせ次第で活躍するということを表現したかったのです。
9月7日(日)加筆修正しました。
メタルンからの超レアドロップを書き忘れていました。今後にもつながる内容なので、許してください。
大きく成長したラック一行ですが、ヴェネッツでは新たな出会いが待っています。
どうぞお楽しみに。




