第10話 ついにラック異世界伝説の幕開け? 俺は小学生以下かよ
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「女神ガチャに外れた俺が、運だけで異世界を成り上がる」第10話になります。
いよいよラックがマジョとともに初の冒険へと出かけます。
ラックの真価が発揮される? その前に、ラックはマジョの実験台にされてしまいます。
ぜひご一読ください。
俺たちはそのままギルドでパーティー登録した。
パーティー登録をすると、相手の能力を確認できるようになる。
すると、マジョのとんでもないステータスが映し出された。
マジョ(マジョルカ・マジョリティ) ハイウイッチ レベル30
HP300 MP600 力100 速さ300 技術200 魔力700 運100
レアスキル 『魔法探求』 『妨害特化』
おいおいマジかよ。
すんげぇレベル高いし能力値高いし。
しかもめっちゃ強そうなレアスキル2個持ちじゃん。
こいつと比べたら俺なんかミジンコだよ。
でも、こんなすげえ奴が俺の味方をしてくれるんだ。きっといつか、あの忌々しい女神にたどり着けるはずだ。
それからしばらくの間、俺はマジョのからの提案ですぐには冒険に行かず、毎日マジョの妨害魔法を受けていた。
「まずは私の実験に協力して、妨害耐性を上げておくと今後の冒険が安定するからねぇ」
とマジョはとてもうれしそうに言った。マジョは実験したくてウズウズしているようだ。
いやお前早く俺で実験したいだけだろうが。
出会って次の日からマジョの実験、もとい俺の妨害耐性上げ訓練が始まった。
マジョの妨害魔法は実に多彩で、どれもものすごい苦痛を伴うものだった。
ある時は、全身がしびれる「パラライズ」。
「ぐ、ぐわぁぁ。し、しびれるー! やめてくれー! や、め、て、ぐれぇぇぇぇぇ!!」
俺は地面をのたうち回った。地面がよだれでビッショリになっちまったじゃねえか。
ある時は、締め付けられ全く動けなくなる「バインド」。
「うごけねー。し、しまるー。か、快感に目覚めちまうだろ-。あ、ああん!」
俺は眠れるドMっ気っていう新たな属性を得てしまった。
ある時は、目が全く見えなくなり強烈に目がしみる「ブラインド」。
「な、なんも見えねー。目がしみるー。あああああああああ!!」
目に指をぐりぐり突っ込まれてるのと一緒だった。
ある時は魅了魔法の「チャーム」。
「マジョめっちゃスキー。ねぇチューしてチュー! ねぇチューしてよぉ~」
あれ俺マジョ好きだったっけ。マジョもまんざらでもなさそうじゃん。
しかし、どんなに強いマジョの妨害魔法も、1分ともたなかった。
俺の並外れた運の強さで、妨害魔法を解除してしまうためだ。
「はーっはっはっは! 君は本当に面白いねぇ。私の研究がとてもはかどるよ。これからも協力してくれたまえ、マウスちゃん」
俺はとうとうマジョから「マウスちゃん」というあだ名をつけられた。よっぽど気に入られたらしい。
まあ、実験台のモルモットと同じ扱いってことだろうな。
2週間もマジョの妨害魔法を受け続けていると、マジョの言ってた通り俺の状態異常魔法の耐性はどんどん高まり、ついにはどの妨害魔法も10秒以内に解除されるようになった。
宿屋に帰ると、マジョが俺の部屋に入ってきた。
マジョは最上級の部屋に泊まっている。さすがマジョリティ家のお嬢様と言ったところだ。
マジョは俺の座っているベッドの横に座った。
「君も強くなったようだねぇ。私の妨害魔法を毎日浴びて、妨害魔法の耐性が上がったようだ。君は本当に素晴らしい! これからはもっと、普通の人間ならショック死してしまうようなランクの高い妨害魔法を使っても大丈夫そうだねぇ。あ~楽しみで仕方がないねぇ」
気づけば俺は各種の妨害魔法の耐性は上昇していた。
具体的には、毒耐性+3、痺れ耐性+3、拘束耐性+3、暗闇耐性+3、とステータスボードに書かれてあった。
役に立つんだろうかこれ?
少なくともマジョの実験に役立っているのは間違いないだろうけど。
残念ながらレベルは上がっていない。やはり、魔物を倒さなくてはレベルは上がらないのだ。
「妨害魔法の耐性が上がったのはうれしいけど、俺やっぱレベルを上げたいわ」
「うむ。私は君との約束を果たさねばならない。ふむ、女神エレクトラへの復讐だったね? それならば、まずはレベル上げといこうじゃないか」
俺はようやく心の準備ができた。今こそ、女神を見返すための冒険に出発する時だ。
「よし。じゃあ、次の仲間はもう1回掲示板を待つとして、ダンジョンに出かけないか、マジョ」
マジョはにっこり笑った。
「毎日の妨害魔法を忘れなければ、私はいつまでも、どこへでも君について行くよ」
え、それどういう意味? と思いつつ、マジョからの信頼? を感じた俺は、高らかに宣言した。
「よし、それじゃあダンジョン攻略といこうか! 俺達の伝説の始まりだ!」
早速俺たちはギルドに行き、ダンジョン攻略の依頼を受ける。
ギルドの受付嬢アンは気まずそうに苦笑いをした。
「ラックさん。ラックさんが今行けるダンジョンは『初心の沼地』だけですよ。マジョさんは絶対大丈夫ですけど、ラックさんは死ぬ可能性が大いにありますから。死んだら2度と元の世界に戻れませんからね」
アンは冷静な顔で諭すように言う。
クエスト名は「初心の沼地の整備」とある。
「これって討伐クエストじゃないの?」
「いいえ、どちらかというと環境整備です。子供達が安心して行けるように時々駆け出しの冒険者の方に整備してもらっているんですよ」
初心の沼地って、この世界じゃ冒険者を目指す子供が行くとこって聞いてたけど、楽勝なんじゃないの?
これしかクエスト受けられないって、俺もしかしてなめられてるのか?
俺が迷って考えていると、マジョが優しく言った。
「マウスちゃん、いいじゃないか。最低辺から始まって、女神まで至る。これが私たちの旅路だよ。私は初心の沼地を幼稚園の遠足でクリアしたから、久々だねぇ。楽しみだよ」
よ、幼稚園の遠足でクリア? 俺って幼稚園児以下なの?
「それはマジョさんがすごすぎなんですよ。普通はこのダンジョンをみんな小学生でクリアしますからね」
いや、俺小学生以下だった。
すると、後ろから聞き慣れた声がする。
「やあ、ラック。そのクエスト、私たちも参加していいかな?」
振り返ると、冒険者派遣会社キャラバン代表のミッキー、そしてその用心棒のハイがいた。
「あ、ミッキー。今日もめっちゃかわいいね。え、でもいいの? 確か、君たちの雇用料かなり高いよね」
すると、ミッキーはニッコリ笑った。これは友人に対する笑顔だ。
「アハハ、ありがとラック。今日はラック達の初めての冒険でしょ? パーティーは4人いた方がいいから、私たちが手伝おうかなって。それに、私なら盗賊の手本を見せられるしね」
ミッキーは体の前で手を合わせる。その仕草も本当にかわいい。
確かに、盗賊の冒険の仕方を知りたいという思いは強くある。願ってもないことだ。
「今ラックのパーティーってスタードですごく話題になってるんだよ。マジョさんっていうとんでもなく強い人が来たからね。これから私の会社でいろいろお願いすることが出てきそうだから、今日はラックの初冒険を手伝わせて。お代も気にしなくていいよ」
俺は感動していた。ミッキーってなんていい子なんだ。
すると、ミッキーの後ろからまたあの陰気な声が聞こえてきた。
「……ミッキー、何で俺も手伝わなきゃいけないんだ? そもそも手伝う必要なんてあるのかこいつを」
「ハイ、このパーティーはこの後絶対すごくなるから。先行投資だよ」
「……」
おい、全部聞こえてますけど!
でも、今後絶対すごくなるとミッキーに言われて嬉しくなった。
「ふむ。今後の派遣のために我々と良好な関係を築いていきたいという意図か。よろしい。ミッキーとやら。ともに行こう」
「うん。私ミッキー。よろしくねマジョさん」
おお、なんかマジョとミッキーが通じ合ってるぞ。利害が一致したみたいだ。
30分ほど歩くと初心の沼地というダンジョンについた。ほんと幼稚園の遠足だな。
中を見ると、確かに暗くてべっとりとした沼地だ。だが何とか視認できる。
どうやら1階だけのダンジョンのようだ。中には明るくてゆっくりできる広場もあるらしい。
まさに遠足地ってことか。
敵としては、スライムやドブネズミが出てくるらしい。ド○ク○で最初の町の周囲をぐるぐるすると出てくる奴と大体同じってことか。
「いいかいマウスちゃん。私には攻撃手段がない。一応毒はあるが、それでは君の成長につながらないからねぇ。君には成長してもらわないと困る。私の実験のためにもねぇ」
マジョはにっこり笑う。怖いわー、こいつ。俺のことを実験対象としてしか見てないだろ。
「私とハイも補助するだけだからね。ラック頑張って」
ミッキーが優しく声をかけてくれる。マジ天使だわ~。
「マウスちゃん。あきらめず何度でも攻撃するんだよ。そうすればいずれ敵を倒せるからねぇ」
「わかった」
わかった、と言いながら、この時はマジョの言っている意味がまるで分かっていなかった、と後で知ることになる。
そうして俺たちはダンジョンの攻略を始めた。中は薄暗いが何とか進めそうな明るさだ。
ミッキーが先頭に立ち、索敵を始めた。ミッキーのお陰で安全に冒険できている。
これが盗賊の仕事ってわけか。勉強になるわ~。
しばらく進むと、スライムに遭遇した。イメージ通りの透明な水色で、丸っこくてかわいい。キューキューと鳴いている。
キタキタキタ! これこそ冒険の始まりだ。
マジョの妨害魔法、パラライズが発動する。
「キュ~……」
これでスライムは身動きがとれなくなった。
「今だよ、マウスちゃん」
「おう、任せとけ!」
よし! 俺の番だ、と俺は渾身の力で攻撃する。
ヒット!
よっしゃクリティカル!
一撃だ!。
「クリティカル! 5ダメージ」
……ん? 何の冗談だ?
俺はふと我に返る。
「は?」
おいおい、スライム相手にクリティカルでたったの5ダメージかよ。
スライムはまるで攻撃されたことがわからないかのように不思議そうにこちらを見ている。
俺スライムにもなめられてんじゃん。マジかよ……。
俺は右手の短剣を見て力なくつぶやく。
「絶望だわ……」
俺は戦闘中にもかかわらず、下を向いてしまう。
「マウスちゃん、何度でも攻撃するんだよ。君の攻撃は必ず当たるからねぇ」
そうだった。マジョに何度でも攻撃しろって言われてたんだった。
俺は意を決し、この! この! この! と8回連続クリティカル攻撃すると、スライムが息絶えほんのちょっとだけ経験値が入った。
「ハア、ハア、ハア」
なんかめっちゃ疲れた。
全部クリティカルなのに、俺の攻撃力が低すぎて敵を倒すのにものすごく長い時間がかかったからだ。
マジョの妨害魔法で魔物は動けないのに、俺のクリティカル攻撃が何度当たっても大したダメージが入らない。
俺はどうすりゃいいんだよ。
そう思いながら、何度も戦闘を重ねて4時間ほどたった。
ミッキーの索敵、マジョの妨害、ハイの回復によって、冒険はとても安全なものだった。
でも、体はヘトヘトだ。俺何百回攻撃したっけ。
さすがのマジョやミッキーも疲れている。ハイにいたってはあきれている。
「はあぁーマジで疲れた」
「さすがに、私も少し疲れたようだ。休憩しよう」
やっと休憩かー。しんどー。
これが冒険ってやつか~。何か思ってたのと違うな。
RPGみたいに、序盤の敵は圧倒できるんじゃなかったのか?
これもしかして元の世界の方が楽だったんじゃね?
もしかして、現実で何にも考えず授業テキトーに受けた方が気楽だったのか?
ほんと、俺はこれからどうすりゃいいんだ。誰か教えておくれよ。
第10話「伝説の幕開け! 俺は小学生以下かよ」を読んでいただきありがとうございました。
ラックが初めての冒険に出るわけですが、この世界の現実は甘くはありません。
ラックには最弱から最強? になってほしいのであえて厳しめ、だけどしんどくならないようにギャグありで書いています。
次は、ラックがマジョ達に厳しい宣告をされます。ですが、これこそが、ラックの冒険を変えるきっかけになるのです。よろしければ次もお願いいたします。




