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飯の旨さなんて

 敷地内の案内板で場所を確認し、(あまね)の手を引いてやってきたレストランは、おしゃれさとは全く無縁の至ってシンプルな内装だった。


 入口にはいつ作られたのかわからないメニューのサンプルが並んでいる。


(よう)くん、もう決めた?」

「カレーかな。お前はどうする」

「そうだなぁ」


 上から下まで一品ずつサンプルをチェックした末に周が指差したのは、醤油ラーメンとおにぎりのセットだった。


「若いんだから普通のを頼むなよ。あ、これとかどうだ? 『夏季限定冷やしカツ丼 あったかうどん付き』」

「何その意味不明な組み合わせ。絶対イヤだ」

「目玉メニューを作ろうとして迷走した感じが伝わるわ」


 こんな企画しか出てこないから客足が遠のいてテコ入れすることになったんだろうな……などと思っていると、周が俺の肩に手を置いた。


「このラーメンとおにぎりのセット、葉くんが言うほど普通じゃないと思うよ」

「どの辺が」

「このおにぎり、中の具が何か書いてないんだよね」

「どうせ梅とかおかかとかだろ」

「ノーマルなヤツと見せ掛けて、とんでもないものが入ってるかも」

「はいはい。食券買うぞ」

「あ、流した」


 千円札を2枚入れ、それぞれのメニューの名前が書かれたボタンを押す。


「ほい。麺類コーナーはあっちな」


 レストランとは名ばかりで、注文の仕組みはフードコートとほぼ同じだ。ラーメンセットの食券を周に渡し、俺たちはそれぞれ注文するメニューに該当するカウンターへ食券を差し出す。厨房はかなり余裕があるのか、俺が頼んだカレーはすぐ手渡された。


 窓際のテーブルに座って待っていると、周がトレイを手にやって来た。


「お待たせ」

「お、なんかベタな醤油ラーメンって感じだな」

「チャーシュー3枚入ってるし、煮卵も付いてる。サンプルに煮卵ってのってたっけ」

「覚えてないな。まぁいいじゃん、ラッキーてことで」


 向かい合い、それぞれ両手を合わせる。


「いただきます」


 スプーンを手にカレーをひとすくいして口に運ぶ。


「どう?」

「旨いよ」

「え、普通のカレーっぽいのに。ね、一口頂戴」


 周はラーメンについてきたレンゲでカレーをすくうと、パクリと食べた。


「……辛くもなく甘くもなく、どこかで食べたことのあるような、よくあるカレーの味だけど。そんなに美味しいかな」


 俺は皿の上に視線を落とし、二口目をスプーンでまとめながら答える。


「アホだな、お前」

「何で」

「飯の旨さなんてものは、相手次第なの。だから、俺にとってお前と食う飯はふりかけご飯だろうと素うどんだろうと全部旨いってこと」


 そこまで言って顔を上げると、周は泣きそうな顔をしていた。


「え、どうした」

「葉くん、気付いてる?」

「何が」

「それってもう、僕のこと好きって言ってるようなもんじゃん」

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