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周(あまね)

 気付けば350ミリリットル缶はあっという間に空になっていた。

 昔の話を思い出して呑む酒は、後味が悪い。

 半袖の袖を更にまくり上げて昼飯をどうするか考えていたら、インターフォンが鳴った。


「どうぞ」


 玄関の扉をガチャリと開ける音が聞こえた。短い廊下をぺたぺたと歩いている。

 靴下が濡れているな、これは。


「雨と風のコンボ、マジで勘弁して欲しいんだけど」


 不機嫌さを隠さないで、甥の(あまね)が来た。


「じゃあ家で大人しくしとけよ」

「それは嫌」


 気持ち悪いと言いながら靴下を脱ぐ。しばらく手に持ったかと思うと、こちらに投げて寄越してきた。


「何すんだよ」

「葉くん、洗ってよ」

「何でだよ、持って帰って家でやれ」

「今から洗濯して乾燥に回したら、僕が帰る時にまた履けるでしょ」

「お前、洗濯機回すのにも金かかんだぞ。洗剤代とか電気代とかさ」

「儲けてる癖に」

「過去の資産を食い潰してるだけの生活だっつーの」


 などと言いつつも、湿った靴下を洗濯機に入れてスイッチを入れてやる俺の優しさよ。


「昼、食ったのか」

「まだ。何か作るの?」


 周は棚からタオルを引っ張り出し、濡れた肩や髪を拭きながら冷蔵庫を開けて中を覗き込んだ。


「レタス、トマト、きゅうり、卵、豚ロース、もやし」

「適当に野菜のっけてぶっかけそうめんでもするか」

「げー。腹たまらなそ」

「30過ぎたらもうこれで十分なんだよ。嫌なら食うな」

「腹にたまらなそうなだけで嫌とは言ってないし、食うよ」


 俺が野菜を切っている間、周は鍋でそうめんを茹で、豚ロースに火を通し、錦糸卵を作る。


「相変わらず手際がいいな」

「父子家庭歴長かったし。昔やってたことはあんま忘れないよ」

「6年前はお前にとっちゃ昔なのか……」


 周は俺の姉の子どもだ。

 ただし、姉と周に血の繋がりはない。

 周は姉の夫となった男性と前妻との間に生まれた子どもであり、姉家族はいわゆるステップファミリーだった。

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