過去の記憶。
そこに、映し出されていたのは……
子供達が楽しく——はしゃぎながら池で遊ぶ姿であった。
「何これ……? 子供しか映ってないじゃない」
「あ……間違えた。
それは、俺が産まれたばかりのオタマジャクシだった頃の映像だ。
見せたいのは、もっと——前の映像で……」
「いや、ちょっと待って……」
オタマジャクシより前の映像って、ただの卵じゃない。
そんなの見ても、つまらないだけ……
それより——何でコイツがこんなに強いのかその秘密が隠されているかも知れないわ。
「ちょっと、この頃の映像を見せてよ」
「この頃の映像って言っても、そんなに面白いものは映ってないぞ……」
「良いから、見せなさいよ!」
「分かったケロから……そんなに、怒るなケロよ」
そうして、フロックはオタマジャクシだった頃の映像を続けて流すと……
子供達が楽しそうに池で遊んでいる映像は、ちゃんと見ると……
池にいる大きなオタマジャクシを串刺しにして遊んでいる映像であった。
子供達の槍の先には、刺されて串刺しとなったオタマジャクシが団子の様に連なっていた。
「この時は……
産まれたばかりで、何も分からない俺達を人間の子供達が楽しそうに串刺にしていたなぁ……」
「…………」
「この時だけで、半分以上の兄弟達がヤられたっけなぁ〜……懐かしい……」
フロックは、少し悲しそうな顔をしていた。
「…………でも、ほら……生き残った兄弟達も居るんだし……ね……」
「まぁな……
半分以上が1日目で、そのまた半分が2日目で……そのまた半分が3日目……」
「分かった!!!
でも、その中で——あなたは逃げ延びたじゃない。
それって、とても凄い事よ!」
「まぁな……でも、その後の事を考えると
この時、串刺しになっていた方が良かったと思えるくらいに……」
「……何が、あったのよ」
「実はな……串刺しには、されなかったが——俺も、あいつらに捕まった事があったんだ……」
「…………」
そして、映像が進むと……
1匹の大きなオタマジャクシが、子供達に捕獲されていた。
*
「ボス……このオタマジャクシどうしますか?」
「そうだな……池のオタマジャクシも、もう少なくなって来たからな。
大事に、使ってやらねーとな。ギャハハッ——」
「さすが、ボスです! ハハハハハハッ……」
子分達が、ボスより愛想笑いを長く笑っていると……ボスは、子分達を殴り出した。
「お前ら、俺をバカにしてるのか!?」
「いえ、そんな事は……」
「僕たちが、ボスをバカにするなんて死んでもありません!!!」
怯える子分達に、ボスは——。
「なら良いけど……あんまり舐めた事をしていると、このオタマジャクシみたいにしてやるからな——! 覚えておけよ」
「「「「「は……はい………!!!」」」」」
その時、捕まったオタマジャクシのフロックは……
逃げられないように檻に入れられて、炎天下の太陽の下で、ボスが考えた乾燥地獄の刑が行われていた。
そして、その時のフロックの体は乾いてパリパリとなり口をパクパクさせて命乞いをしていた。
「……パク……パクパク…………パクパク………………」
しかし、この時のフロックは人間の言葉が話せなかった為に——ボスが何かの優しさで池に逃してくれる事を祈るしか出来なかった。
「おい! オタマジャクシ——喉乾いたか? 喉乾いただろ? どうだ、水が欲しいだろ?」
(……下さい…………水を……下さい…………)
「おい。このオタマジャクシ口をパクパクさせてるぞ! 可哀想だから、誰かションベンでもかけてやれ!!!」
「…………」
「おい! どうした……?
何だ、お前ら……痛い目に合いたいのか!?」
「……違います。ボス……
皆んな恥ずかしいので……」
「お前らの小さいチンコなんて見られたって大した問題じゃねぇーだろ。気にすんな!!!」
「……いや、でも……」
「俺に、逆らうつもりか——ッ!」
「ひぃ〜〜ごめんなさい。ボス——」
そこへ、2人組の美少年達が現れた。
「弱いものイジメは、止めるんだ!!!」
「そうだ! そのオタマジャクシも池に返せ——ッ!」
「何だ?
また、お前らか——性懲りも無く……また、ボロ雑巾にされに来たのか!?」
「違う! 僕達は、ボスの悪行を止めに来たんだ!!!」
「あっそ……なら、暇だから相手してやるよ。
まとめて、かかって来い!」
そして、美少年2人とボスの戦いが始まった。
周りで見ていた者もボスが負けるのを願ったが……ものの数分で美少年の2人は——ボロ雑巾にされてしまった。
ボスは、そんな美少年2人の上に座り込むと……
「なぁ……お前ら、何で弱いのに
いつも逆らってくるんだ!?」
「ボスが、いつも弱いものイジメをしているからじゃないか……」
「そうだ……オタマジャクシを池に返してやれ!」
「ならよ。バカな——お前らに、一つだけ良い事を教えてやるよ。
このオタマジャクシは、魔物なんだぞ。分かるか? 今は、オタマジャクシでも成長すれば大ガエルになる。
そこからジャイアントフロックにでもなれば、子供なんて丸呑みにされちまうんだぜ!
だから、これはイジメじやなくて——駆除だよ。駆除、分かるか?
俺は、いい事をしているんだ! お前達に文句を言われる筋合いはないんだよ」
「ジャイアントフロックになるのは、稀だ!
普通は、大ガエルか他に進化する」
「そした、僕達の食事や薬の材料にもなる。
この子達は、遊び半分で殺していいモンスターじゃない!!!」
「ゴタゴタうるせ〜なぁ〜……」
「今だ! 逃げろ——ッ。オタマジャクシ……」
美少年2人は、ボスの隙を見てオタマジャクシを逃した。
しかし、その行動に怒ったボスは——その後、美少年達を失神するまで殴り続けた。
「おいコラ! テメー……何勝手に、逃してやがる!!! あのオタマジャクシの代わりに、お前達を殺してやる——!」
*
「……凄い貫禄ね。このボスって子供……
子供なのに、おっさんみたいな顔をしてるし。
この年で、子分を従えてるなんて——相当腕も立つようだし……あんたも無事で、良かったわね。
あの美少年2人に、ちゃんと感謝しなきゃダメよ」
「お前に、言われなくても感謝しているケロ」
「それもそうね。
この後は、ボスからのイジメは大丈夫だったの?」
「この後も、何度か捕まったけど……その度に、この2人が助けてくれたかな。
まぁ、一度3人でボスのペットになった時は——本当に、終わったかと思ったけど……
三人で、ボスに首輪をつけられて散歩された時は……」
(こんな事が、あったからコイツは子供が嫌いになったのか……)
「そっか〜……そんな辛い事が、あったんだ。
でも、アンタにも味方は居たじゃない。いつもアンタを助けてくれていた——この美少年の2人は、今頃——どうしてるんだろうね。
さぞイケメンに、成長したんでしょうね」
「あ!? 何言ってるケロ……
お前、この前——冒険者ギルドで、この2人に会ってるじゃねーかッ」
「こんな美少年達に、会ってないわよ!?」
「ほら、お前が初めて冒険者ギルドに入った時に、俺がデーブルを拭いて酒を持っていた2人——あれ、コイツらだぞ!」
「はぁ!? あの盗賊みたいなゴリゴリの筋肉ダルマ達が、この美少年達……
一体、そうなるまでに何があったって言うのよ……」
「皆んな……ボスに、鍛えられたからな……」
「そのボスは、今——何やってるのよ!」
「何って、冒険者ギルドの受付やってるじゃねぇかよ!」
「冒険者ギルドの受付……? 誰!?
私、会った事ある?」
「有るだろが、リサさんだよ!!!」
「…………はぁ!? リサさんって……あの、リサさん? そんな訳ないでしょ。
見た目とか全然違うし……しかも、リサさんは女じゃない」
「お前こそ、何言ってるんだ?
リサさんは、ボスだし——ボスは、女だぞ」
「いや、待って! それは、嘘よ」
「いや、だから——俺にションベンをかけろと命令された子分達が、恥ずかしがっていただろが……」
「いや、ないない……」
しかし、その後——他の冒険者に確認をすると、リサさんがボスと言う事が確認をとれると、エリアルは、固まり。
次の日から、皆んなと同じ様に——リサさんに敬語を使うようになった。