93 第10章第8話 大掃除のミッションクリア
「終わったでー、香子はーーん! ウチら地下室の大掃除終了や!」
「あ、お疲れーー、かぐやちゃん、それに博士も。今年は早かったねー」
「なーに、伽供夜ちゃんが大きな物をさっさと動かしてくれたお陰さ」
「あたし達も3階の社長のお部屋、奇麗にしたもんね」
「えーっと、香子君? 僕の部屋、あんなに飾り付けしなくてもいいんだけど~」
「何言ってんの、社長。殺風景なお部屋だと、詰まらないじゃない! ちゃんと奇麗にしておかないと……ね!」
「でもね、ベッドにピンクのシーツとか、花柄の布団カバーとか、壁にはいっぱい絵も飾ったり……それに、どうして枕が2つなんだい?」
「え、そ、そりゃああ、あんなに大きなベッドですもん、枕が2つあってもいいじゃない、後で熊さんの縫いぐるみも持ってくるから枕と並べて置いてくださいね!」
「ええ? そんな物まで?」
「いいからいいから、あ、かぐやちゃん、今日の忘年会会場の食堂の飾りつけも終わったわよ、見て!」
「うわああーメンコイ飾りがぎょうさんあるやないですか……あれ? 頑貝はんどうしはった?」
見ると、事務所のソファーで、大の字になって伸びている頑貝はんを見つけたんや。全身気怠そうに半分目を閉じてるんや。
「何って?……俺は、もうダメだよ、疲れたー」
「何さ、ちょっと掃除したぐらいで、大げさなんだから。あんたは、体の鍛え方が足りないのよ」
「うっせーよ香子。お前は、いいよな~、なんだか社長と仲良く掃除ができて、上から楽しそうな笑い声が聞こえてきてたぜ~」
「ええ、楽しかったわよ~、ね、社長!」
「あ、いや、まー……それより徹君、そこどいてくれないかな~。そのソファーは僕の定位置なんだけど」
「いいじゃないですか社長、今日ぐらい。俺だっていっぱい働いたんだから……」
とうとう社長もソファーに腰かけたわ。でも、長い方の椅子には頑貝はんが延びてるんで、社長はんは1人掛けの小さい方にちょこんと座って休み出したんや。
『きゅるるる……(あーー、ワタチも疲れたわーー、一緒に座って休もーーっと!)』
ラビちゃんが、勢いよくソファーに飛び込んだんや。しかも、めいっぱいあちこち飛び回って、体中に綿埃をいっぱい引っ付けたままやん。
ばふっ! パタパタ……ぶおーん、ぶごーん、どんどんどん
ゴホッ、ゴホッ……フィックション、フィックション……ゲホッ、ゲホッ……
「こらっ、チビスケ、お前何やってんだよ」
『きゅるるる……(アタチだって、がんばったの! アタチもソファーで休むんだから!)』
「やめろって、お前、ゴミだらけじゃないか! あっち行けよー!」
「ああーー、徹ったら、酷いんだー! 一生懸命働いたラビちゃんをいじめるのー?」
「そうや、そうや、ラビちゃんだって頑張ったんや」
「うるせーなー。もー。俺だって褒めてくれてもいいじゃないかよー!」
ウチらは、冗談で頑貝はんを揶揄ったんやけど、頑貝頑貝はんちょっといじけてしもうたわ。そこに、記誌瑠はんがやって来てラビちゃんを抱き上げて、ニッコリ笑ってから、静かに言ったんや。
「はいはい、そこ迄! お腹空いたんでしょ、みんな。お料理ができたから、会場の食堂に運んでくださいね。ほら、徹君の大好きな唐揚げもいっぱい作ったから、機嫌直して運んで! それから、伽供夜さんはラビちゃんのブラッシングをお願いします。このままだったら食堂もホコリまみれになるからね」
記誌瑠はんの目が笑ろうてないことにみんなが気付いて、一瞬空気が引き締まった感じがしたんや。
「お、おお、そうだな。 か、唐揚げか、いいね! な! それじゃあ、みんなで運ぶぞ!」
「う、ウチも、ラビちゃんを奇麗にしてくるさかい、先に食べんといてな!」
「はいはい、それじゃあ、みなさん、お願いしますねー」
さすが、総務兼経理課長の記誌瑠はんや。会社のもめ事は一発解決やね。だって、記誌瑠はんに逆らったら、お給料もらえんかもしれへんし……。
(第10章 完 ・ 物語はつづく)
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