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91 第10章第6話 分岐点は万博で

「ワシも、この世界の人間じゃないって、この前話したけど覚えてるなかな?」


 博士はんが、片付け終わった倉庫で、工具箱に座り直してゆっくり話し出したんや。ウチも傍にあった大きな古タイヤに腰掛けたんやけど、倉庫のうすぼんやりした明かりだけでもなんや眩しく感じたわ。


「うん、覚えとるよ。水野博士(みずのはかせ)は、初めて大阪で万博が開かれる時に間違ってこっちの世界に跳ばされたんよね。今から約250年前やったかな?」

「そうなんだ。……まあ、こっちの世界っていうか、時間を跳んでしまったんだよ。だって、今の世界はワシの居た世界と時間は繋がっていると思うんだ」

「それが、タイムトラベルっちゅうもんなのかなあ?」


「ワシはな、そのタイムトラベルを自由にできる研究をしておったんじゃ。……でも、失敗したんじゃがな……」

「せやかて、博士はんの研究があったから、ウチらは異次元シャトルが使えるんやし、この異次元探偵社があるんやろ?」


「不思議なもので、ワシはこっちの世界に来てから調べて分かったんだが、2回目の大阪万博が開かれたっていうんだ。いや、予定といった方がいいかな。ワシがタイムトラベルに失敗した大阪万博から55年後だったらしい。そして、人類が地球を脱出したのがその年なんだそうだ」

「そう言えば、社長が言うとったわ。地球脱出して今年で200年やって」




 なんか博士はん、少し元気が無くなってきたんよ。よっぽどタイムトラベルちゅうのを研究してはったんよね。ウチ、博士はんが可哀そうになってきたわ。




「ワシがこの世界に跳ばされて初めて出会ったのが、新畑社長(あらはたしゃちょう)なんだ。その頃は、まだ会社なんてやってなかったけど、どうも1人でいろんなことを調査してたらしいんだ。ゆくゆくは、探偵をやるつもりだったみたいなんだ」

「へーそうなんやね。いったい、社長はんは何を調べてはったの?」


「それが、主に調べてたのは『赤い地球』についてなんだ」

「え? 社長はんが1人で?」


「うん、そうみたいだね。…………実は、『どうして地球が赤くなったか?』とか、『今、地球の状態はどうなのか?』とかいうことは、まったく公にはされていないんだ」

「どういうことなん? でも、みんな地球は住めなくなったから脱出したとか、赤くなったから人間が住めなくなったってゆうとったよ。香子はんも、頑貝はんもいうとった。これって、みんなが『赤い地球』について知ってるんとちゃうの?」



「やっぱり、伽供夜(かぐや)ちゃんもそう思うよね。社長もそう言ってたんだ。もう社長がこの月で生まれた時は、地球は赤く見えたし、地球に人間は住んでいなかったって。……みんながそう言ってたって……」


「それじゃあ、誰もホンマのことを知らんのに、噂だけやったんか?」



「いや……噂じゃないんだ……全部、人類委員会からの情報だと社長は言っていた。現に地球は赤く見えるし、地球脱出を計画して人類を救ったのは人類委員会なんだ。誰だって、人類委員会の言うことは信用したんだと思う」


「そうなんや……でも、社長はんは自分で調べてたってことは、……」

「うん、社長は自分の目で見たことや聞いたことじゃないと信用できなかったんだと思う」

「考えられへんなあ、あのチャランポランな社長はんを見ておったら……」


「まあ、それも何か考えがあるんじゃないかな? そこは、ワシにも分からんのだよ」




「せやかて、なんで『赤い地球』と『お伽噺』が関係あんね? ウチは、そこがよう分からんの」

「こっから先は、ワシも社長に聞いたことしか分からんのだけど……」



 いよいよ、ウチの知りたいことが、教えてもらえるんや。なんか、ワクワクしてきたわ。




(つづく)


 最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
そういや万博ってもうすぐですね〜。 赤い地球と御伽話の関係性は、全く予想出来ないので、次話以降の答え合わせが楽しみです。
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