90 第10章第5話 ウチの知りたいこと
「カ、カ、カグヤ君! な、何してんの、君は!」
「社長―……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「気にせんといてください……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「ウチ、香子はんの……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「お家で……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「慣れたさかいに……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「このくらいの……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「窓なら……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「すぐですさかいに……シュシュシュ、キュキュキュキュ、スーーーー」
「はい、これで終わりですやん!」
「へえ……す、すごいなあー伽供夜君・・・・/¯(+_+)?」
「かぐやちゃん、ホントに凄いわ。窓ふき、もう終わっちゃったじゃない!」
「へい、今度は、博士はんの手伝いに行ってきますさかいに……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「博士はん~手伝いに来たで~」
「おお、伽供夜ちゃん、早かったなあ」
「そうけ? 窓ふきなんて大したことあらへんわ!」
「ふふふ……さすが伽供夜ちゃんじゃな。上手いこと重力調整器を使いこなしてくれてるようじゃのお」
「あれー? 博士はんはお見通しなんやね。そや、アレとっても重宝してますさかいに」
「いやいや、こっちこそだわ。ワシの発明品を上手いこと使ってくれて嬉しい限りじゃ」
「それじゃあ、ウチの力持ちの秘密もバレバレやね。あはははは」
「ああ、その通りじゃ。あははははは」
博士はんとは、前にスナック味平で2人だけで話をしたことがあるさかい、いろんなことを教えてもろたし、ヒミツ道具ももろてるんよ。あん時は、香子はんもいたけど、すぐに寝てしもうたからな。なんや博士はんとウチ、お互い特別な秘密を共有する同士みたいなとこも感じてるんやねん。
だから、ウチは博士はんとだったら、気兼ねなくいろんなことを聞けるねん。
「なあ、博士はん? ウチ、教えて欲しいことがあるねん」
「ん? 何だい、伽供夜ちゃん?」
「この間、鬼はん達といろんな話をした時、あの『赤い地球』をなんとかするために、乱れたお伽噺の世界を修正するみたいなことゆうてたと思うんやけど、ウチ、さっぱり意味が分からんのよ」
ウチは、こっちの月も大好きやし、異次元探偵社のみんなも大好きや。だから、みんなでお伽噺の世界に行って、いろんなミッションするのもホンマに楽しいんや。
せやかて、この間の鬼はん達の話は、えらい深刻そうに聞こえたんや。社長かて、なんや会社がしてる仕事が、あの『赤い地球を救う』とか言ってはったし…………何より、社長はんが、……あのいつも楽しそうな社長はんが、真面目な顔してはったんよね。
「そっか、伽供夜ちゃん、そんなことも考えてたんか。……やっぱり、お姫さんだからお伽噺の世界のことは気になるんだねえ」
「うーん、えっとな、お伽噺の世界ちゅうか、ウチな……ウチはやっぱり『青い地球』の方がええねん。もしも、あの『赤い地球』をもとに戻せるんなら、ウチ何でもしようと思たんよ」
「……………………………………」
博士はんな、しばらく黙ってしもうた。黙ったまま……ううん、何か考えながら倉庫のシャトルや整備道具を片付けてたんよ。
きっと、ウチが聞いたことは、難しいことなんやろな思うて、ウチも黙ってたんや。
でも、ちゃんと体は動かしたんやで。あちこちに置いてある異次元シャトルを持ち上げてはきちんと並べ直したり、今まで博士はんが発明品したものを片付けたりしたんや。中には、金庫みたいな厳重で重たそうな戸棚もあったんやけど、ウチは重力調整器をパパっと使って簡単に移動して片付けたんや。
そんなことをやってるうちに、博士はんの方からウチに声を掛けてきたんや。
「なあ、伽供夜ちゃん。さっきの話だけど……分からんことがまだたくさんあるけどな……ワシが知ってることだけなら教えられると思う……それでいいかい?」
あのいつもニコニコしていた博士はんが、妙に真面目な顔で、そないなことを言ったんや。
片付けの間もきっと博士はんはいろいろ考えていたんやないかと思うねん。きっと、そうやって真面目にいろいろ考えてくれはって、ウチの質問に解答をくれるんやと思ったんや。
「お願いします。ウチ、知ってた方が、もっと頑張れるような気がするんよ。それにな、今ならウチと水野博士はんしかおらへん。あのおしゃべりなラビちゃんも居ないさかいに、どんな秘密でも守るさかいに」
ウチは、真っすぐ博士はんの方を見て、真剣に頼んだんや。
(つづく)
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