87 第10章第2話 秘技ガラス磨き
「さっ、午前中はあたし達の家を大掃除するわよ!」
「なあ香子はん? 掃除ならいつもやってるやないですか? わざわざしなきゃダメなん?」
「何言ってんの。今日は、いつもは出来ないところをやるのが大掃除なの!」
「そうなんや、いつもは出来ないことをやんのね! よし! じゃあラビちゃんもウチから離れて大掃除を手伝うてちょうだいね」
『きゅるるる……(ええー? カグちゃんはペットにも掃除をさせるの? ワタチはウサギヨ~大掃除なんてできない~)』
「あれ? かぐやちゃん、ラビちゃんがなんか言ってない?」
「ああ、ラビちゃんな、大掃除が大好きみたいなんや! だから、いっぱい手伝いたいって言ってんやと思うわ!」
「へえええー、じゃあいっぱい頑張ってもらいましょうかあ!」
『きゅるるる……(もう、カグちゃんったら。ワタチ、そんなこと言って無いわよ! 他の人にはワタチの言ってることが分からないと思って、適当なこと言っちゃうし!)』
「はいはい、ラビちゃん、いい子やね~。ラビちゃんの丸くてフワフワなこの尻尾は、いろんなとこ磨くブラシに丁度ええんちゃうか?」
『きゅるるる……(イヤー! もう、ワタチの大切な尻尾、そんなことに使わせないわよ! ベーダ!)』
あははは、ラビちゃんが怒ってはるわ。なんか、そのせいで尻尾が毛羽立ってるやん。このままあちこち歩き回ったら結構ホコリが取れるんちゃうやろか?
「なあ、ラビちゃん、お部屋の天井に上ってみいへん? 下はウチらで掃除するやさかい、ラビちゃんは高いとこで、好きに遊んどいてええよ!」
『きゅるるる……』
「あれ? ラビちゃんったら、棚の上とか天井付近を喜んで行ったり来たりしてるのね」
「なんか、ラビちゃんったら、高いとこが好きみたいやわ」
「じゃあ、あたし達で1階のリビングやシャワールーム、2階のプライベートルームを掃除しましょ。午前中には終わらせるわよ!」
「はいな、香子はん……まずは、何をしたらええんですか?」
「そうね、あたしはいつも洗えないものを洗うわ。窓に掛かってるカーテンを全部持って来てもらえる?……その後、かぐやちゃんは窓を拭いてもらえるかしら?」
「窓ですね! ウチ、張り切って磨きますわ!」
「ああ、填め殺しの窓もあるから、できれば外からも磨いてね。でもね、高いところは無理をしなくても平気よ。手の届くところだけでいいからね!」
よっしゃ! ウチは、あちこちのカーテンを外して香子はんに預けてから、左手にガラスクリーナー、右手に拭き取り用のクロスを握りしめて準備したんや。
始めは、1階リビングの窓や。ここはベランダになっとるさかい、窓も大きいんやさかい、内側と外側両方を磨くのにちょっと時間が掛かってしもうたわ。
トイレや台所には小さな窓もあるけど、ここは開かんようになってるわ。これが填め殺しちゅうやつなんな。内側はええけど、外側は……あ、外へ出れば拭けるやん。
窓ガラスって面倒くさいな。内側と外側両方磨かんときれいになったかどうかわからへんし。
よし、今度は2階の部屋の窓磨きをしよか。2階は、ウチと香子はんの寝室や。それぞれの部屋の内側から窓を開けながらガラスを磨いたんや。でも、ここの部屋にも填め殺しの窓があったんや。
仕方ないので、ウチは外へ回ることにして部屋から出ようとしたら、香子はんがカーテンを持って上がってきたんや。
「あれ? 香子はん、もうカーテンの洗濯が終わったんか?」
「ちょうど、2階分が終わったから持って来たのよ」
「早いんやね~もう乾いたんけ?」
「ううん。まだ乾いてないわ。乾くまで仕上げると時間が掛かっちゃうじゃない。だから、もうカーテンをつるしちゃうの。そうすれば、皺にもならないし、しかもこの部屋で乾燥できるから部屋の保湿にも成っちゃうの。いいでしょ!」
「さすが、香子はんやね」
ウチは、そう言って部屋を後にしたんや。
その後、ウチが窓を拭き始めると、香子はんが妙な声をあげよったんや。
「うわあああーー、かぐやちゃん、何やってんのーーー???」
「え? ウチはな、――シュシュッ」
「窓の外を――キュキュッ」
「拭いとるだけや――キュキュッ」
「そんな窓の外って、ここは2階よ! 何やってんのよ!」
「何って、ウチはな――シュシュッ」
「2階は高いやさかい――キュキュッ」
「ジャンプしながら――キュキュッ」
「窓、拭いてんのや――キュキュッ」
「ええ? 確かにかぐやちゃんのジャンプ力なら楽勝だと思うけど、そこまでしなくても……」
「え? なんて? ――シュシュッ」
「これ、ちょうどええねん――キュキュッ」
「いつものトレーニングと――キュキュッ」
「同じやもんね――キュキュッ」
「あ、へー、そうなんだ。さすがかぐやちゃんだわ。……しかも、ガラスがスッゴイ奇麗になってるし、これ、会社の3階にも届くんじゃないかしら?」
(つづく)
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