8 第1章第7話 竜宮城の星になる
「……ワン・ツー・スリー・フォーーーー!」
♪ フィライング~フィッシュ 新鮮な~
いつでもどこでも 飛んでるわ~
フライング~フィッシュ 諦めない~
いつでもだれでも わ・た・し・の・ため~
は・り・き・る・わああああ~
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「……みんなはん~、どうですか? ウチの新曲ですえ~……」
『イイゾー ヒ・ラ・メ・子ちゃああああああん!』
「おおきにです! 今晩は、もっともっとギョウサン歌いますさかいに、楽しんで行っておくれやす!」
『うおおおおおおおおーーー!』
うっわーお客はんの反応がスゴーー! これで、ウチも正真正銘のアイドルやん! とことん行くでえええーー!
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「なんだああー、伽供夜君、テンション上がってるなあー」
「タコ社長、こりゃあもう行くとこまで行くしかないみたいですね~」
「そうだなイカ博士……それにしても、香子君があんな舞台袖で何やってんのかなあ」
「あ、あれはきっとマネージャーになったんですね。グラサン掛けて、手にバインダーとストップウォッチなんか持ってるから、間違いないですわ」
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「はあ、はあ、はあ……タイ江マネージャー! どうでした?」
「バッチリよ、ヒラちゃん。いい曲ももらったし、センターもとったけど、ここが終点じゃないわよ! このABCD44を世界一のグループにするのが、あなたの使命よ!」
「分かっとります! ウチだけやのうて、グループ全体の発展のためにきばるさかい、タイ江マネージャー、どうか力を貸しておくれやす!」
「よし、よく言ったわ、ヒラちゃん! 責任をもって、あたしが世界に連れていてあげる!……さあ、第2公演が始まるわよ」
「はいです! さあ、みなはん、一緒にきばりましょ!」
「「「オオオオオオオオーーーー!」」」
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「タコ社長、香子ちゃんのマネージャー姿が板について来ましたね。伽供夜ちゃんも力が入って、もうグループのリーダーになってますよ。このまま放っておいていいんですか?」
「イカ博士は心配性だなあ~。大丈夫だって……みんな一生懸命なんだよ。一生懸命やれば、なんでも上手くいくの!」
「そんなものですかね~」
「ほら、中央の桟敷席を見てご覧。あそこの浦島君ったら、伽供夜君にぞっこんだよ。さっき、自分でも『推しになる』とか言ってたから……これは楽しみだね」
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「やれやれ、社長が隣を見ながら微笑んでるわ。あの笑顔は、きっと何か企んでる顔ね。さ、さっきの続きね。私、城内を探検してご馳走も手に入れたけど、竜宮城の経理簿も見つけちゃったのよね……うふっ!」
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「ああああーいいなああああー、ヒラメ子ちゃん! 僕絶対、ヒラメ子ちゃんに会って話がしたいなあーー」
「あら、浦島太郎様。そんなにお気に入りですか?」
「ああ、乙姫様~、なんとかヒラメ子ちゃんに会えないかなあ~」
「そんなの簡単じゃありませんか。毎朝行っている『握手会』の列に並べばいいのですよ」
「そっか、その手があったか! 今までは、ただのお魚さんだったから、別に握手しなくてもいいと思ってたけど……よーし、明日の朝は握手会に並ぶぞ!」
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「はあ、はあ、はあ……タイ江マネージャー、やっと夜の第2公演目が終わりましたえ」
「よく頑張ったね、ヒラちゃん! お陰で噂が広がって、竜宮城の外にもお客さんの列ができたらしいわよ!」
「ええ? そうなんですか? それじゃあ、ウチ、次の夜の第3公演はもっと頑張らないとあきませんな!」
「そうよ! ここが、世界への分かれ目なの! いい、ヒラちゃん! ここで、アレを着るのよ!」
「アレですか?」
「そう、アレよ!」
「……う、はいです。ウチ、ここで逃げたらあきまへんな。やりますです!」
ウチは、とっておきの秘密兵器をカバンから取り出したんや。最初は、派手やなーと思って着るのがイヤやったんやけど、今はこれしかないと思うわ!
ブーーーーーーーーーーーーーー
いよいよ夜の第3公演目や! ウチ、ガンバルわ!
あ! ああああああああ!!!!
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「うっわあああ、伽供夜ちゃん、勝負に出たなあ。あの真っ赤なビキニ付けてるし! しかも、ボトムの両サイドは紐になっておるんじゃ、縛り目が蝶々に見えるわ」
「ふっ、これですべてが上手くいくなあ、なあイカ博士」
「そうですな、タコ社長!」
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なんか、会場の熱気がだんだん上がっている気がするわ。外に並んでたお客はんも全員入れたんやね。客席の通路もお客でいっぱいやわ。
会場に『ヒラメ子』コールがコダマしてるわ。『ヒラメ子』ってウチのことやね! わ! 客席のみんなが立ち上がってジャンプしてるわ。こ、これが、竜宮城名物『栄光のジャンプ』なんやね。最高やわ!
あ! 頑貝はんが、隣でジャンプしている浦島はんを押さえてるやん。もう、浦島はんもウチの虜やね! 目が血走っとるわ。失神せえへんか、心配やね。
◆後藤 記誌瑠のイメージイラストです。(竜宮城で今彼女は、紺色のワンピースでサイドに白ラインです〔スク水ちゃうん?〕)
(つづく)
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