72 第9章第3話 鬼に変身、トラ軍団!
ウチらは、いろいろな準備を済ませて、夕方また事務所に集まったんや。ウチは、香子はんや記誌瑠はんと鬼に変装するための衣装や小道具を買ってきたんやけど、いろいろ迷ってしもうて大変やったわ。
なんせ、社員全員の衣装やさかいね~。女子の分は、いいんや。コンセプトも決まっとったしな。でもなー、男子はなー。幾ら考えてもおもろないねん!
「えーー? 俺達の衣装って、これだけか?」
「仕方ないやん、男の鬼って、ただ厳ついだけやし!」
「そうそう、特に徹なんかは、自慢の筋肉が見えればいいんでしょ?」
「いやーまー、下はトラガラのトランクス型のボクサーパンツで、上はやっぱりトラ柄のランニングシャツか?……なんかぱっとしないよなあ」
「いいじゃない、肩は右肩だけで左は大きく切り込みが入っているから、左の大胸筋はよく見えるし」
「まあ、いいっか……うんっ!」
頑貝はん、両腕の拳をお腹のところで丸太を抱えるように抱え力を込めはった。おお、やっぱり肩の筋肉と上腕二頭筋と大胸筋がピクピクしてるはる。
『きゅるるる……(あー、カグちゃん、あれ、美味しそうやね~)』
「もー、ラビちゃんたら、肉食系女子なんだから……って、これ、肉食の意味ちゃうか?」
「なー、ワシらもこれ着るのか?」
「何、言ってんです、博士! みんなで変装しないと、ダメじゃないですか! 似合ってますよ、特にポッコリしたお腹が、最高!」
なんだか記誌瑠はん、ヨダレが出てるような気が……ん? 香子はんも視線が動かんようになっとるけど……あ~社長はんに釘付けみたいやわ。
「えっと……ところで、君達女子はどんな変装をするのかな?」
「社長はん、少々待ってえなあ~……今、1人ずつお見せするからに」
「それでは、まず、記誌瑠はんです!……どうぞ! コンセプトは可愛い鬼娘や!」
「「「 おおおーー! 」」」
「記誌瑠君は、トラジマのミニスカワンピースなのかい。いいねえ、ピッタリだよ。トラジマのハイソックスもいいコーディネートだね」
「し、しゃ、ちょうー。ホントですか? こんな、ミニスカート、恥ずかしいです!」
「記誌瑠はん、くるっと1回転、お願いや!」
「え? ええ? ……はい……(くるっ)きゃっ!」
「「「 おおおおおおおおー! 」」」
「どうや? 細かいところにも拘ったんよ! もちろん、見せパンやけど、ええやろ?」
「伽供夜君、いい仕事するようになったね~」
「おおきに、社長はん!」
「お次に控えとるのは、戦う美女、香子はんや。コンセプトは、強拳の鬼娘!」
女子は衣装の上からガウンを羽織っているさかいに、紹介と同時にお披露目や。香子はんもガウンを外すと、一斉に男性社員が一歩近づいてきよった。
「「「 うっおおおおおーーーーーー! 」」」
「香子君、君、決まってるよ!」
「凄い強そうにみえるなあー」
「そのトラジマのトランクスパンツもいいけど、上半身の体に吸い付くようなノースリーブのトレーニングシャツ、抜群じゃないか!」
「どうお、徹? 1発食らってみる?」
香子はんは、スレンダーながら、メリハリのあるボディーを上下に動かし、頑貝はんの正面から真横に回し蹴りをお見舞い……っと、耳から一ミリで寸止めや、切れは最高やな。
おやおや、ぶつかっておらんのに、頑貝はん鼻血を出してしゃがみ込んでしもうたわ!
「ん? 徹、何やってんの? ただの威嚇だよ?」
「お、おお! 凄い効果だ! こんな威嚇なら何度食らってもいいかもな!」
ウチは、頑貝はんに近づいて、小声で説明をしておいたの。
「あのな、トランクスパンツは余裕があるさかい、ちゃんとインナーもトラジマにしてあんのや。……あんさん、見たな~」
その後、頑貝はんはもう1度、鼻血を出してしもうたが、ウチは内緒にしといたわ。
「最後は、ウチや。トラジマゆうたら、もうこれしかない思うて……(ばさっ)……コンセプトは宇宙一の鬼娘や」
「「「 きゃっほーーーーーーー! ○○ちゃーーん! 」」」
「ウチ、カグヤ○っちゃ!」
「お、お、おまえ! トラジマのビキニに、トラジマのハイソックスブーツ、……うーー、もう完璧じゃないか!」
「伽供夜君、ど、ど、どうして、君はその格好を知ってるんだ……今じゃ、マニアの間でしか知る者もいない、伝説の○○ちゃーん!」
「ふふふ、社長はんも、ひょっとしてマニアなんけ?」
「あーー、もちろんだ! 僕もマニアの端くれ、深夜のアーカイブ放送は欠かしたことが無いんだよ!」
「ウチも見とったでー。絶対、いつかは役に立つ思うて、密かに練習もしてたんや……これでも食らえーー電撃やーー(ビッビビビイビーーー)」
ま、ホンマもんの電撃は使えんさかい、骨董屋で見つけたスタンガンなんやけどなあ。
もちろん、鬼に変装やから、男子も女子も頭に小さな鬼の角を付けたんや。
「よし、じゃあみんな変装も揃ったので、シャトルに乗り込んでくれるかな?」
「博士はん? 今度のシャトルはこれけ?」
「どうじゃ、大型シャトル『トラバス』じゃ……頑貝ちゃんにも手伝ってもらったんだ」
確かに大きいんやけど、前から見ると何かに似てる……あ! これ、あのバスじゃない? 全体はバスやのに、椅子も外層もとてもフカフカした動物の毛皮なのね。今回の『トラバス』は、全部縞々のトラガラなの。黄色と黒がよく映えてるわ。
「博士、このバスに乗ってると、優勝パレードが出来そうだな?」
「お、頑貝ちゃんは、あの野球チームを知ってるのかのー」
「もちろんさ、伝説のトラ軍団なんだ……俺だって、アーカイブテレビの昔の野球中継録画はよく見てるのさ!」
「ま、そんなとこじゃな、これに乗ってれば、怖いもんはないんだぞ!」
「記誌瑠君、お弁当はいいかな? 今回は3日間っていう長期ミッションだ。腹ごしらえをしっかりとな」
「お任せください、3日分の食料はもう積み込んでますし、……それに、今回は、この極秘黍団子をたくさん作ってきました」
「さすが、記誌瑠君。よくやった、それじゃ、明日はみんなよろしく頼むぞ!」
なんや? 黍団子って。あの桃太郎が持ってたやつなんとちゃうか? なんやよう分からんけど、ウチらもこれでトラ軍団になったんかな? これで、鬼に勝てるやろうか? どこからか知らんけど、なんかの応援歌が聞こえてきたわ。
(つづく)
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