71 第9章第2話 事件はどこで起きてる?
「ふっふぁーーー……まいったなぁー」
社長はんが、大きな欠伸をして頭を掻きながら、メール受信室から出てきはったの。いつものこととはいえ、まったく緊張の欠片も感じられへんやん。
「社長! どんな内容だったんですか?」
それに比べて、記誌瑠はんや頑貝はんは、なんや緊張感駄々洩れやし。あ、いや頑貝はんは、緊張感やのうてただ目がギラギラしてるから、何か事件に興奮してるんやろか?
「あ、う、まあー、そんなに慌てることも無いんだけど……誰か博士を呼んでくれるか?」
すぐに、記誌瑠はんが電話したんや。しばらくして、博士はんも事務所に揃うと、新畑社長は頭を掻きながら説明を始めはった。
「みんな、すまんな。緊急……と、いっても期限が決まっているというだけのことで、内容はいつもとそう変りは無いんだが、人類委員会からの依頼が入ったんだ」
「社長! それで、今回はどんなお伽噺なんですか? 暴れられますか?」
あー、やっぱり頑貝はんは、それを期待してはるんやね。確かに、戦闘シーンは痺れるもんね。お伽噺やから、ウチらの文明の力は絶対なところがあるから、そりゃ楽しいやもんね。
「まあ、待て徹君。これから人類委員会からの依頼メールを読むから、聞いてくれ……」
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異次元探偵社の諸君、ご機嫌いかがかな? 今回は、緊急メールで依頼しなければならなくなったことをお詫びする。実は、以下の期日に開かれる会議に極秘で参加し、その採択宣言を破棄に追い込んでほしいのだ。会議の名称は、『鬼のサミット』だ! それでは、検討を祈る。なお、『鬼サミット』の詳細については、添付資料にて送る。
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「まあ、こんな感じだ」
「社長……私、いつものように『地球歴史記録全集』を調べてみましたが、『鬼サミット』なんていうお伽噺もありませんし、用語索引にも載っていませんでした」
「ええ、じゃあ、今回はお伽噺の世界じゃないのか?」
そうやね、事件はお伽噺でばかり起こってるわけやありまへん! 事件は、現場で起こってるんですわ! なんてね!
おっと、これは言わんとこ! 先週見たアレおもろかったなあ~。ウチの刑事魂に火が付いたような気がしたわ。 刑事じゃあらへんけど……、なんてな!
「ん? かぐやちゃん、何1人でクスクス笑ってるの? あーまた変な番組思い出してんでしょ? ダメよ、夜のアーカイブテレビばっかり見てると、睡眠不足になって美容の敵よ」
「そんなんやありまへん!……ただ、ちょっと今回は、謎やなあ~って思って」
『きゅるるる……(うそ、おっしゃい、カグちゃん。また、テレビのヒーローになれるって思ってんでしょ!)』
「そ、そんなこと、あらへんよ!」
「ん? 伽供夜君、どうした? そう、伽供夜君の言う通りなんだ。やっぱり今回もお伽噺の世界に行かなくっちゃならんのだよ」
「へ? 社長はん、『鬼のサミット』ちゅうお伽噺があんのか?」
「今回は、お伽噺の世界の鬼が集まって会議を開くそうなんだ。どうも、その議題がお伽噺の中にあるようなんだなあ~」
「分かったぞ、社長。ワシらは、そのお伽噺には実際にはない『鬼のサミット』をお伽噺の世界へ行って、無かったことにしてこなきゃならんのだな!」
「おお、さすが水野博士だね。その通りだよ。それが今回の任務なんだ」
「じゃあ、俺達は『鬼のサミットをぶち壊す』ってのが、ミッションなんだな!」
「もう、徹ったら、そんな危ない言い方して。下手に鬼にかかわってなみさい、大変なことになるわよ。だって、お伽噺の世界の鬼が集まるんでしょ。鬼ヨ! 危険の代名詞になるくらいなんだから、今回の任務はとっても危険なのよ!」
「ホントに香子は、臆病だな。平気だよ、鬼なんか俺がやっつけてやるから!」
「うっわー、また、頑貝はんのパンチが見れるんですか。ウチ、楽しみやなあ。できれば、香子はんのキックも見たいなあ~。ウチ、歓迎会の時、肝心の“香子キーック”を見逃してしもうたんですよ」
「そういえば、あたしも最後のキックが命中したのを覚えてないのよね。徹に命中したんでしょ?」
「ん? あ? そーだっけ? ……俺も、あんまり覚えてないなあ~」
「まあ、いいじゃないか。終わったことだって。それより、今回のミッションクリアに全力を掛けようじゃないか、なあ」
「そ、そうよ! キックは、鬼にすればいいのよ。博士のいうように、今回に集中しましょ!」
「じゃあ、いいかなみんな。鬼のサミットは、明日から3日間の予定で開催されるそうだ。場所は、鬼ヶ島だ。今日は、そのための準備をする。鬼のサミットに潜り込まなきゃならないので、全員鬼に変装だ! 博士は、目立たないシャトルを頼む!」
「よし、じゃあ女性陣は変装衣装の買い出し、俺は博士のシャトル改造を手伝う、みんな鬼に負けるなよ!」
「「「「「 おーー! 」」」」」
なんだか、おかしなノリになってるけど、大丈夫かいな?
(つづく)
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