61 第8章第3話 お決まりのスタート
「それではみなさん、これから『小野宮伽供夜さん』の歓迎会 兼 我が異次元探偵社恒例の懇親会をはじめまーす!」
パチパチパチ……ヒューヒュー……パチパチ……
あ、ここで拍手するんやね……人数は少ないけど、えらい大きな拍手の音が響くわ。頑貝はん、口笛なんぞ吹いてはる! これが、【宴会】ちゅうもんやの?
『きゅるるる……(そうよ! カグちゃんも、乗り遅れたらダメよ!)』
ウチ、頑張るさかい!
「お! いいね、伽供夜。その調子で盛り上げろよ!」
いつも怒ってばかりいる頑貝はんに褒められてもうたわ。
「あ、みなさん、ありがとうございます…………では、初めに新畑社長にご挨拶を頂きます。社長、お願いいたします」
記誌瑠はんが司会なのね。今度は、記誌瑠はんが座って、社長はんが立ち上がったわ。
『シッ! カグちゃん、社長さんのお話は、黙って聞くのよ!』
ええ! ラビちゃん、すっごい集中してるやん。ひょっとしてラビちゃんは、宴会の達人なんとちゃうか?
あれ、社長はん、いつマイク持ったん? こないな狭い場所で、マイクなんかいらへんのに?
ガンッ ワオウ~ン……
「「「「……わはははは、……ぎゃははは、……」」」」
え? どうしたん、社長はん! 何で、マイク、おでこに当ててるん?
『きゅるるる……(うっわはは、面白いね、社長さん! 最高だわ!)』
みんなも笑ってる。でも、社長はんだけ、真面目な顔してはる。あ、しゃべり出したわ!
「えーみなさん、久しぶりの新入社員、といってもまだアルバイトですが、ま、アルバイトを雇うのも初めてですが、……この小野宮伽供夜君は、実によく頑張ってくれてます。どうか、みなさん、仲よくしてあげてくださいね。あ、そうそう、一緒にいるラビちゃんもね。彼女もウチの社員なんでよろしく。……えっと、伽供夜君、君からも一言どうですか?」
「あ? は、はい。小野宮伽供夜です。どうぞ、よろしゅうお願いいたします」
「ん? それだけでいいの? あ、そう……いいね、挨拶が短くて! じゃ僕もこの辺で……あんまり長い挨拶は、ビールが冷めるからね、あははは」
え? 社長はん、また、何言うてんの?
「よ! しゃちょー! ビールは、もうこれ以上冷めませーーーん!」
わはははははは…………
あれー? また、会場は大爆笑になったわ。頑貝はん、社長はんにあんなこと言うてからに。
『どうしたの? カグちゃん。おかしくないの? ここで、笑わんかったら、ダメよ! ほら、ほら……』
あ・は・は・は・は・・・・・・・?
そうか、これが無礼講なんやね! ここにいるのは、もう社長はんでも、先輩でもあらへんのやわ。友達やと思って、仲ようなればいいんやわ!
「いいわよ! 社長はーん。最高やったよー! あはははは」
「いいねえ、伽供夜。だんだん、乗ってきたね~」
頑貝はんにまた褒められたわ! ん? 頑貝はんのコップ、もう濡れとるわ、何か飲んだ?
『きゅるるる……(あーあ、カタガイちゃんは、もうビールの練習したんだわ……だから、さっきから勢い付いてると思った。慣れるとね、偉い人の挨拶なんか素面じゃ聞いてられないものなのよ!)』
「どういうこと? ラビちゃんのゆうてること、分からへんわ?」
『大丈夫よ、カグちゃんもそのうち分かるから……あははははは』
ひょっとして、ラビちゃんも飲んではる?
「ではみなさん、乾杯をしたいと思います。乾杯の音頭は、風見香子さん、どうぞよろしくお願いいたします……さあ、みなさん、コップにビールを入れてくださいね」
やっと飲めるやん。やっぱり最初は、ビールなんね。
「えっと、次、俺は焼酎もらおうかなあ~」
やっぱり頑貝はん、【次】ゆうてはる! さっき、こそっとビール飲んだんだわ!
「ええーー? あたしも、ビール欲しい。あたしが、乾杯の音頭を取るのよ! そのあたしがビール飲まないでどうするのよ~」
「ダメですよ、香子さん。香子さんが、ビール飲んじゃったらすぐ寝ちゃうじゃないですか?」
「いいんだもーーん。ここなら、みんながいるから、寝ても平気だもーーン!」
「もーそんなこと言わないでくださいよ」
「まあまあ、香子君。今、寝ちゃったら、この美味しいご馳走が食べられなくなるよ!」
「んー? ご馳走ね~……社長、今日の料理は奮発したんですか?」
「まあね。カニ鍋だぞ! カニだよ、香子君……いいのかなあ~食べられなくても」
「そ、そうよね。これは、絶対食べないと……じゃあ、お酒は、お料理を食べてからにするわ。その代わり、社長絶対あたしを忘れて置いてけぼりにしないでね!」
「はいはい、分かってますよ。ちゃんと面倒みますからね」
「よし! じゃあ、あたしはジュースで乾杯するわ!……みんな、準備はいい?」
おおおーーー!
「いいわね、徹、元気があって! じゃ、新入社員の小野宮伽供夜ちゃんと見習いのラビちゃんにカンパ―――い!」
カンパーイ! 立ち上がったみんなとコップをぶつけて歩いたわ。なんやとっても楽しい宴会の予感がしたの。
(つづく)
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