59 第8章第1話 無礼講?
====登場人物====
新畑 懐……社長
風見 香子……情報課長(酔うと寝る)
頑貝 徹……営業課長
後藤 記誌瑠……総務・経理課長
水野 博……研究開発課長〔博士〕
小野宮 伽供夜……アルバイト〔営業課〕(かぐや姫)
ラビちゃん……かぐやのペット(かぐやとだけ話せる)
============
「みんなー聞いてくれ。急ですまないが、明日夕方5時から恒例の懇親会をやるから。えっと、今回の幹事は……」
「社長、幹事はワシと記誌瑠ちゃんじゃよ」
「ああ、そうだったな。頼むよ博士、記誌瑠君」
「ええ、任せてください。今回は、ちょっと遅くなったけど、伽供夜さんの歓迎会も兼ねるから。みんな、いつもの準備よろしくね!」
「おう! 任せとけ! おい伽供夜、楽しみにしてろ!」
「え、ええ……よろしゅう頼みます。………………なあ、ラビちゃん、懇親会ってなんやの? それに、ウチの歓迎会って?」
『きゅるるる……(カグちゃん、みんなのいる前で、話し掛けないでよ! ワタチ、つい大声で返事しちゃうじゃない)』
「え? でもラビちゃんの言葉が分かるのは、このイヤホンしてるウチだけやないの?」
『まあ、そのイヤホンではっきり分かるんだけど、ワタチも首輪付けてるじゃない。そうすると、口の動きが日本語になっちゃうみたいなの。だから、気を付けて見ると、唇読まれちゃうのよ』
「へーそうなん。……じゃあ、グローブで口押さえてしゃべろうか?」
『何、言っての? カグちゃん。グローブって何?……それに、ウサギのワタチがグローブ填められるわけないじゃない!』
「そないなことあらへんよー。ラビちゃん、あないに箸を上手に使えるんやから、グローブなんか手を入れるだけよ」
『そりゃ、できないことないけど、ウサギがグローブ填めてたら、おかしいでしょ! まったく、カグちゃん、今度はどんなアーカイブ放送を見てるの?』
「あのなあ、昔、地球で流行ってた『野球』とかいうスポーツの試合や。結構、おもろいで~。大きなフライを頭で受けたり、取れるやんって思った内野ゴロをエラーしたりしてな、そのたびに選手がおもろいこと呟くんや」
『……え?……ひょっとして、それ『珍プレー』とか言ってなかった?』
「うーん……なんか、そないなことゆうてたかもしらへんな。いいねん、おもしろけりゃ」
『ま、そういうことだったら、しゃべってもいいけど、人に見られんようにな。小さい声で、頼むね』
「はいはい……気いつけるさかいに」
とにかく、今回はウチの歓迎会なんやて。いったい何をすんのやろ? 幹事って、いったい何をすんのやろ? さっきから、記誌瑠はんと博士はんが、何やら仲ようしゃべっとるわ。
「ね、博士!」
「ん? なんじゃ、記誌瑠ちゃん?」
「あ、えっと、幹事頑張りましょうね!」
「そうじゃな、2ヶ月に1回の我が社の懇親会も大切な仕事だしな。ワシも秘密兵器を持って行くからな!」
「うん! 期待してるからね!」
「ねえ、ところで、懇親会とか歓迎会って、なんやねん?」
『これはね、大人が仕事を上手くやっていくために、みんなで本心を語り合うものなのよ。会社内での立場に関係なく、親しくなって楽しむものよ。ご馳走やお酒を飲みながらね』
「へーそうなん。何を言ってもいいんやろか?」
『そうね、そういうのを無礼講っていうのよ』
「そうなんね。無礼講かあ~。覚えておかなあかんね」
『そうね、明日が楽しみだわ』
「おや? 記誌瑠ちゃん、どうしたんだい? そんな嬉しそうな顔して?」
「あ、……あ、はい、水野博士と一緒に幹事がんばりますよ~!」
「?」
(つづく)
最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




