58 第7章第9話 ミッションクリア
「なんやあれは! 烏か? 鷲か? 鴨か? いや、違う! あれは………」
「あ! 兄ちゃん達だ! おーい、おーい!」
なんと5体のお地蔵はんが、空を飛んでこっちに向かって来たんや。六蔵さんが手を振って答えてはるわ。
あわわわわわ……みんな、ここに降りて来よったわ!
「いやあーみなさん、どうもすみません、弟がご迷惑をお掛けしたようで」
「何、言ってんの一蔵兄ちゃん。オイラは、ちょっと……」
「六蔵、俺達の使命を忘れたのか?」
「ニ蔵兄ちゃん、忘れちゃいないよ。オイラ達は、みんなの願いを叶えるのが……」
「そうだぞ六蔵、俺達は人々の心の支えなんだ!」
「そんなの分かってるよ三蔵兄ちゃん。だけど、オイラばっかり……」
「んーそうだよな、六蔵。お前には、いつも申し訳ないと思ってはいたんだよ」
「四蔵兄ちゃん、だったら何とかしてよ。オイラ、もう仲間はずれは嫌なんだよー」
「六蔵、安心しろ。俺達はさっき相談したんだよ。お前の並んでいる場所が悪いんだ」
「そうなんだよ、五蔵兄ちゃん。オイラが端っこにいるから、いっつも半端物しか当たらないんだ」
何んや? お地蔵はんの兄弟達が、加勢に来たんや? さすがに6対1じゃ、勝てないかも。今度は、厳しい戦いになるんやろか。……ん? なんか、みんなスッゴイ低姿勢やないか? 物言いも優しいわ。あのお地蔵はんが暴れたのを謝ってるし、何か解決策見つけたみたいやね。
いきなりお地蔵はんが勢ぞろいしたんで、ウチも、驚いてしもうたけど、たぶん大丈夫や!
「そうなんよ。ウチ、六蔵さんの話を聞いて思ったんよね。あんたら、六蔵さんのお兄さん達でっしゃろ?」
「ああ、俺達、一蔵から五蔵は、この六蔵の兄貴なんだ。そういうあなた達は?」
「申し遅れましたが、ウチらは異次元探偵社っていうもんで、このおじいはんとおばあはんをお地蔵はんの攻撃から守るために来たんや」
「おお、そうでしたか。それは、大変失礼いたしました。六蔵も可哀そうなんです」
「どうか、六蔵をお許しください」
「これからは、人を襲ったりしないように、よっく言い聞かせますから」
「俺達も、相談して、何とか六蔵ばかりに、嫌な思いはさせないようにしようって、思ってますから」
「え? 兄ちゃん達、俺を許してくれるの?」
「当たり前だろ? 俺達は、六体揃って六地蔵なんだよ。仲良くしてなきゃ、だれも拝んでなんかくれないだろ?」
「うん……グスッ……そうだね……ゴメン、オイラもう暴れたりしないよ!」
「よしよし、分かればいいんだ」
「ところで、並び場所のことで、何か解決策は出たんでっしゃろか?」
「ああ、そのことなんですが、俺達は時々場所を入れ替えることにしたんですよ。……な、六蔵、それでいいだろ?」
「そうすれば、お前だっていつも6番目じゃないんだから、ちゃんとした物をもらえるさ」
「うん……ありがとう、兄ちゃん達!」
「そんな簡単なことで? どうして今までそうしなかったんです?」
「あ、えっと、俺達はずっと動けないって思ってたんだ」
「でも、今回、六蔵の奴が、自分の場所から居なくなって、初めて俺達も頑張れば動けることが分かったんです」
「そうなんです、何でも根性で頑張ればできるってね!」
「それを教えてくれたのは、六蔵、お前なんだよ!」
「そんな、恥ずかしいな……オイラなんて、ただ、憂さ晴らしがしたかっただけなのに」
「いや、そんなことはあらへんよ。やろうと思えば何でもできるんや、根性や、ど根性が大切なんやと思うわ! な、ラビちゃん!」
『キュルルル……』
やったで、ラビちゃん。今回も上手く事件を解決できたんや。これで、ウチも正社員になれるかな~?
「水野博士、こないな解決策でええよね」
「うん、バッチリだと思うぞ、ようやったな、伽供夜ちゃん!」
「何だよ、もう解決か? これじゃ、ジゾウVの出番も終わりじゃん。結局、俺の見せ場も無かったし、また伽供夜にいいとこもっていかれたな」
「いいじゃないの、これであたし達も帰れるわよ!」
「みなさん、本当にいろいろご迷惑をお掛けしました。これ、ほんの気持ちですので……」
「なあ、いろいろ攻撃とかして、ゴメンよ。オイラも、これから心を入れ替えて、頑張るから、みんなも根性で頑張れよ」
「おおきに! こないな物もくれはって。あんたこそ、頑張れや!」
そして、あのお地蔵はん達は、ウチらにも宝物を渡すと、西の空へ飛んでいったんや。すると記誌瑠はんが、急に大きな声で叫んだんや。
「……あ!……そーだ! みんな、その宝物、一時、私が預かります!」
「え、なんでだよ。俺が貰ったんだぞ!」
「何、言っての頑貝君。あれだけ、ジゾウVの武器を使っておいて」
「武器たって、ミサイルに火薬も入って無かったんだぞ!」
「仕方ないじゃない。それに、ミサイル以外も結構作るのにお金かかってんの。今回、頂いた宝物は、そっちの補填に回させて頂きます。いいですね、博士?」
「ああ、まあ、……でも、少しくらいは……」
「博士?……いいんですか? これ、回さないと、研究費用も出なくなりますよ?」
「あ! そりゃいかんな! 回してくれ、宝物全部使っていいからな、記誌瑠ちゃん!」
「はーい。ありがとうございまーす!」
なんか、記誌瑠はんだけ嬉しそうやん。
「よし、じゃみんな、帰還しようかの。全員、シャトル・ジゾウVに搭乗じゃ」
ウチらは、シャトルに乗って発進準備にかかったんや。そして、最後の確認作業を記誌瑠はんがやってくれたんや。
「みんな、あのおじいさんとおばあさんがどうなったか、歴史記録全集で確かめてみるわね」
記誌瑠はんは、ページを捲って『笠地蔵』の最後を読んでくれたんや。
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お正月になっても、貧しかったおじいさんとおばあさんは、何もすることがなく夜を迎えた。すると、遠くから6体のお地蔵さんがやって来て、おじいさんとおばあさんに、お詫びとしてたくさんの宝物を置いていったとさ。めでたしめでたし。
なお、この事件をきっかけにして、6体のお地蔵さんは、願い事を叶える時には自分達でその場に出向くようになったとさ。(お終い)
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「えっと、ちょっと余計なことが加わっているけど……いいですよね、博士?」
「ま、大丈夫じゃろ? ダメなら、きっと社長が何とかしてるさ」
「ほっ……じゃあ、これで帰れるわね」
「あれ? 伽供夜、お前だけ何持ってんだよ?」
「うわあ、金の指輪じゃない。小さくてきれいね! どうしたのよ、それ?」
「あのな、あの六蔵さんが、お兄ちゃん達には内緒やでって、ウチにくれたんや」
「かぐやちゃん、あの六蔵さんの愚痴をいっぱい聞いてあげたもんね。きっと、六蔵さん、嬉しかったのよ。良かったじゃない」
「チェッ……まあ、今回伽供夜も根性出して頑張ったからな……じゃ帰るぞ!」
シャトル・ジゾウロボV……発進! ふゅんー!!
(第7章 完 ・ 物語はつづく)
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