57 第7章第8話 六蔵の悩み
泣きじゃくっているお地蔵はんに、事情を聞いてみたんや。
「なあーってば、泣いとっても分からへんよ。どうしたん?」
「うっ、うっ……オイラ、六蔵って言うんだ。末っ子なんだよ……だから、オイラが立ってる場所は、一番端っこなんだ」
「へーそうなん。兄弟が6人おんのけ?」
「うん……だから、お参りの人達は、道端に並んでいるオイラ達を順番に拝んでいくんだ」
「けっ、いい身分じゃないか? 黙って立ってるだけで、拝まれるんだぜ!」
「ウッせーや! オイラ達だって、黙って立ってるだけじゃねえんだい! ちゃんと拝んでもらった後は、宝物をあげたり、運気をあげたりして、それなりのことをしてるんだ!」
「へーやっぱりお地蔵さんはご利益があるのね。……ほら、徹ったら、あんたは余計なこと言わないの。ただでさえ、気が立ってるみたいんなんだから、ちょっと黙ってなさい!」
「ほんで、どうして、そない腹立ててるんや? 嫌なことでもあったんか?」
「……オイラだけ、仲間外れなんだよ……」
「仲間外れ? 他の兄弟と仲悪いの?」
「そんなことはないんだ! みんなオイラには優しくしてくれるんだ! でも……でも、オイラだけ、違うのは嫌なんだよ!」
なんか、お地蔵さん、また機嫌が悪くなってきたみたいや。ぷんすか怒り出しよった。
「なあ、ラビちゃん、どうしよ? ウチじゃどうにもならんかもしれんわ」
『キュルルル……(何言ってんの! あなたが諦めたらどうするの! このお地蔵さんを救えるのはカグちゃんだけよ! 出来なと思ったら終わりよ! 信じるの! 自分を信じて、周りを信じるの! 根性出しなさい!)……キュルルル』
「……うん、分かったよ、ラビちゃん。ウチ、頑張ってみる! ウチならできるんや! 根性や!」
ウチ、また、ラビちゃんに励まされとるなあ。そやな、諦めたらダメなんや!
ウチ、立ち上がってお地蔵さんの肩に手を回したんや。そして、背中をポンポン叩きながら話してやったわ。
「ようわかったで、お地蔵はん! ウチに何でも話してみいや! 何でも聞いてやる! 解決できるもんは、ウチが何とかしてやる! 根性や! 根性があれば何でもできるもんや!」
そや! 根性や。根性、根性、○根性や! カエルだって、頑張っとるんや。
「……あのね……オイラだけ、お供えの皿が葉っぱなんだ」
「へ? 葉っぱ?」
「そう、他の兄弟は、ちゃんとした陶器の皿なのに、オイラのとこだけその辺に落ちてた木の葉っぱなの」
「……そ、そっか……」
「それにね……オイラの水だけ、雨水なんだ……」
「そやね~雨水なんね~」
「お供え物なんかも、オイラの番になったら無くなってしまうの。もし、あっても、余った物や欠けた物ばっかりなの」
「ああ、これは分かるわ! 最後だけ、割れた煎餅になるんやろ?」
「そうなの……昨日なんかね、他のみんなは、ちゃんと笠を被せてもらってるのに、オイラだけ手拭だったの」
「あ! それで、怒ったんか? そやな……それは、どうして自分だけって思うてしまうわなあ」
「なあ、何とかしてよ……じゃないと、オイラいつまでたっても仲間外れだよーー!」
「そうやなあ~……困ったなあ~……ウチが何とかしちゃるって、言ったけど……どうしたらええかなあ~」
うーん、上手くお地蔵はんの気持ちを聞き出したんやけど、こりゃ解決は難しいなあ。ウチ、どうしたらええやろか。……お地蔵はん、また泣きそうになってるし……。
『……おーい……おーい……おーい……おーい……おーい』
何んや? 遠くから声が聞こえるわ。誰かを呼んでいるみたいや。
「なんやあれは! 烏か? 鷲か? 鴨か? いや、違う! あれは………」
(つづく)
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