56 第7章第7話 爆発の恐怖?
「ん? オカシイな? 爆発の音がしないぞ!」
どうしたんや? ミサイル打ったのに、爆発せえへんわ! おや? 記誌瑠はんだけ、なんも反応しよらんね。
「頑貝ちゃん? ミサイル、爆発しなかったね」
「はい、博士……俺、ちゃんとミサイル発射しましたよね」
「徹ったら、また、寝ぼけてたんじゃないの?」
「煩いよ、香子。現にミサイルが奴に当たった音は聞こえただろう?」
「はいな、『ドッカン』ってゆうてはりましたなあ~……それより、頑貝はん、白い煙が晴れて来ましたな」
「あ、石地蔵が小さくなってるわ」
「元の大きさに戻ったんやね」
「しかも、何か大きな声出して……泣いてる?……泣いてるよ、あのお地蔵さん」
「よし、みんな、ロボットから降りて傍に行って見よう」
とにかくウチらは、訳も分からず、泣いているお地蔵はんの傍に行ったんや。お地蔵はんは、全身石なんやけど、どうも目から大粒の涙が出てるみたいや。しかも、両手を自分の目の辺りに持ち上げ、丁度小さい子が泣きじゃくるような感じに見えるやん。
どう見ても、ウチらがいじめたみたいになってるんやないの? たまらず、ウチは、お地蔵はんの頭を撫でながら、慰めたてみたんや。
「なあ、なあ、泣かんとくれやす……ミサイルが当たって、びっくりしたんか?」
「うん……」
お地蔵はんは、泣きながら、小さく首を縦に振ったんや。
したら、記誌瑠はんが、近寄ってきて、お地蔵はんに寄り添いながらおかしなことをいい出したんや。
「大丈夫よ! あのミサイルは、危険なモノじゃないからね。……ちょっとぶつかると、痛いかもしれないけど…………たぶん、あなたの体の方が丈夫だからね!」
「えっと、記誌瑠ちゃん? ミサイルが危険じゃないって? どういうこと?」
「あ、水野博士……えっと、実は、ミサイルの火薬を注文されたんだけど……ちょっと予算が……」
「予算がって……火薬入れなかったの?」
「だ、大丈夫ですよ! 火薬買えなかったけど、ちゃんと、代わりのもの入れておきましたから」
「あのーー記誌瑠はん? 代わりの物って……この白い粉のことでしゃろか?」
「う、うん……まあ、そうね……」
ウチは、その粉を嘗めてみたんや!
「ああああ、かぐやちゃん、変なもの嘗めない方がいいよ、爆発したらどうすんの?」
「大丈夫やわ、香子はん、これ……小麦粉ですわ」
「確かに、火薬に比べたら安いけどね」
「お、俺が撃ったミサイルが、小麦粉だったの? ええ、じゃあ、爆発はしない?」
「いやああ、上手くいけば、粉塵爆発するかなって……あははははは」
「記誌瑠ちゃーん、粉塵爆発って、ここは外だよ。着火源も見当たらないし……ダメだよね~」
「いいえ、博士はん。着火源なら、ぎょうさんあるやないですか? ショットガンとか打てばええんです。何だったら、ウチの機体のパルスレーザー弾撃ちまひょか?」
「いやいや、かぐやちゃん、もういいから止めてね。もう戦わなくても大丈夫だと思うから」
「そうですか~? 香子はんがそう言うなら、ウチ、もう止めるけど…………ラビちゃん、もうええんだって、せっかく携帯ショットガンを持ってきたけどね~」
『キュルル、キュルケルルル……(もう、カグちゃんったら、どこからそんな物騒な物もって来たのよ。携帯するなら、もっと小さいデリンジャーぐらいにしておいたら?)』
「そうやね、あれなら、フジコちゃんみたく、スカートの中に隠せるもんね」
ウチは、おたくやあらへんよ。ただ、ちょっとだけ、細かいことが気になるだけや。だって、その細かさがやっぱり主役への道やないかと思うねん。
それよりも、記誌瑠はんがこっちを見て、笑って……いや、怪しい笑みを浮かべてるねん。きっと、今度は最初から爆薬買わんと、小麦粉で予算計上するつもりやわ。
「なあー、ところで、お地蔵はん? なんで、泣いとんの? もう、痛いことあらへんやろ?」
「うう、うっ、うっ……だって……だって……オイラだけ……」
(つづく)
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