54 第7章第5話 雪原の老夫婦
「こりゃ、みなさん、ありがとうございました。お陰で、儂ら助かりました」
分離した戦闘ロボ・ジゾウVの各パーツから降りたウチらを迎えてくれたおじいはんとおばあはんは、とっても丁寧にお礼を言ってくれたんや。
「いやいや、ワシらも仕事だからのおー。なんとか、あんたらを守りますから、安心してください」
「はあああー。本当に助かりました。あんさん達は、まさに神様みたいな人達だあ。なあ、ばあさんや」
「本当に、おじいさん。あんなお地蔵さんに、脅かされるなんて、今まで無かったのに、びっくりしたわー」
ウチらは、そんなおじいはんとおばあはんにお礼を言われて、家に案内されたんや。貧しいおじいはん達は、家だって小さいものやったわ。それでも、囲炉裏だけは薪を燃やして温めてくれたんや。
「すまんのう、お正月なのに、お茶もないんよ。薪だけは、裏山から拾ってこれるので、体だけは温めて、休んでくださいね」
「ええよん、ウチらはね、戦うのが仕事やから、構わんくても」
「え? かぐやちゃん? あたしらの仕事は、戦うことなの?」
「いや、香子、俺らは、戦わなきゃいかん! 伽供夜の言う通りだ!」
「まあまあ、ワシらは、あの石地蔵さんの正体を突き止めないとな……」
今回、ウチは戦闘モードやから、とにかく頑張って戦うんや。それにしても、水野博士はんは、見た目もおじいはん達と似とるさかいに、話も合うんかな。
「ああ、申し遅れましたが、儂ゃ、笠尾売造っていいますじゃ。ばあさんは、編子いいます」
「ありがとうございます。ワシは水野博と申します。……あと、こっちは、その他大勢ってことで。ところで、売造さん達はあの石地蔵に襲われる心当たりはありますか?」
「特になあ、ばあさんや。……儂らは、何もしとらんがのおー」
「そうですよね、おじいさんは、お地蔵さんに自分の笠をあげたぐらいなんだから」
「そうや、香子はんの言う通りや……笠をもらった挙句に、おじいさん達に攻撃をしかけて来るやなんて、ウチ、絶対許さへんから!」
「まあまあ、伽供夜ちゃん、そんなに事を荒げないでくださいね……おじいさんは、夕べ、大晦日の晩にお地蔵さんに笠をあげたんですよね」
「まあ、売れ残りの笠じゃったけど、道に立ってるお地蔵さんに被せてあげたんだわ…………ああ、そう言えば、儂の持っていた笠は1つ足りなかったんよ。それで、6体のうち1体には、笠じゃなくて手拭だけを被せてきたんじゃがなあ」
「うーん、ひょっとして、それが原因かなあー」
「えええ? 博士。そんなことで、お地蔵さんが攻撃してくる?」
「そうやね、そんなけっちくさいことで、腹立てるお地蔵さんなんか、えらいイケズやわあ」
「ふふふ、そうと分かれば、そんなお地蔵さんは、この俺が、このジゾウVで木っ端微塵にしてくれるわ! わっははははははは」
「だ、ダメですよ、頑貝君! そんな無暗に破壊したら、後で損害賠償でも請求されたらどうするんですか? 経費赤字になっちゃいます!」
「あははは……大丈夫だよ記誌瑠ちゃん。このワシが、何とかするから。頑貝ちゃんさえ、無茶しないように押さえれば、後は大丈夫だと思うから」
「ホントですか?……じゃあ、頼みましたよ博士」
そんな話をしながら、周りは雪だらけの場所で、体だけは温めていると、突然にジゾウVの非常ベルが響き渡ったんや。
…………ブッブー、ブッブー、ブッブー……
「いかん! また、奴が攻めて来たのかもしれない!」
「みなはん、外に出てみまひょ!」
ウチらは、声も出せないほど驚いたんや。遥か向こう、雪原の中に石地蔵がゆっくりとこちらに歩いて来るのが見えたんや。ただ、その大きさが、みんなの度肝を抜いとった。
「あ、あ、あれは……」
『きゅるるるるるるる』
「そやね、らびちゃん。なんで、あないに、なってしもうたんやろか?」
「大きい……さっき戦った時は、普通の石地蔵だったのに」
「だ、大丈夫だ。ふっ、あの大きさなら、うちのジゾウVと互角だ。小回りは出来ないだろう、これはチャンスなんだ!」
「チャンスって、いってもなあー」
『ギュルルルルルルル』
「ラビちゃんも、燃えるって? ほなら、ウチらでまたがんばりまひょか?」
「ふふ、博士、今回は巨大ミサイルを搭載してんだろ?」
「だ、ダメだからね! 絶対ミサイルは使わないでね。あれ、スッゴク高いんだから! 使ったら、頑貝君の給料から引くからね!」
なんか、記誌瑠はんが、偉い怒っとる。
今度は、ビル2階建てぐらいの大きさになった石地蔵が、またしてもこちらに向かって来ていたんや。あれは、さっきの仇を取りにきたんやわ。こりゃ、やっぱりミサイル使わなあきまへんなー。
ウチが、思いっきりぶっ放してやるわ。
(つづく)
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