46 第6章第7話 高級デートスポット?
「うっわーーーー、スッゴイおすねーーーー!」
『なんだ、カグちゃん、せっかく月に住んでて、高松島ドームに来たことなかったのね。ダメね~、そんなんじゃ流行に乗れないわよ!』
「ううーーっ……だって、ウチ、まだこっちの月に来たばっかりやし……会社の仕事もあるし……それに、香子はんはあんまり買い物とか好きやあらへんみたいやし…………あのね、お酒飲むとこやったらぎょうさん知ってるよ!」
『どうせ、スナックとか居酒屋でしょ……そんなとこでお酒を飲んでたって、若い人来ないわよ』
「ええ?……だって、お料理だって美味しいし、静かな雰囲気やし、……それに、香子はんが奢ってくれるから……」
『もーー、そんなだから、彼氏もできないのよ!』
「そ、そんなことあらへんもん!……大丈夫やもん!……香子はんだって、記誌瑠はんだって、彼氏おらへんし……」
『へええー、そうかな?……ホントに彼氏いないのかなあ?……香子さんって、今日お出かけなんでしょ? デートって、言ってなかった?』
「…………い、言うてへんよーー。……たぶん……買い物して、食事するだけって、言うてたもん!」
『ま、とにかく高松島ドームに入りましょ! さすがに動く歩道とはいえ、1時間半は疲れたわね』
「何言うてんの、歩道に立ってたんはウチやで。ラビちゃんはウチの腕の中で居眠りしてたやん」
『えっと……この高松島ドームは……』
「あ! ウチの話、無視したああーー」
『……オッホン! この高松島ドームは、全てがショッピングセンターになっていて、1つの階がとっても広いの。大昔の東京ドームより広いらいいの。このドームは一つの建物になっていて、全部で3階まであるの』
「ホンマ、入り口に入っただけで、広さは分かるわね。だって、向こうの端が見えへんやもんね」
『1階は、家具売り場が中心ね。その他に高級フルーツの専門店もたくさんあるみたい。それに何といっても入り口付近にある宝飾店と化粧品店は別格ね』
「値段がすごうて、絶対に宝石なんか買えへんって、香子はんは言ってたわ」
『ま、そうかもしれないけど、隣の化粧品店では店頭の無料お化粧サービスもやってるの。フリーメイキングサロンって言って、安い化粧品でも買うと、しっかりフルメイクのデモンストレーションをやってくれるのよ』
「へえー、ウチも後で、やってもらおうかな?」
『2階は、全て衣料品関係なの。男性用、女性用のすべての高級衣料が揃ってるわ。着物なんかも売ってるのよ』
「ウチ、昔はお城で着物着たから、懐かしいわ」
『3階は、本・文具・レコード・家電なんかを売ってるわ。それから、この高松島ドームで、誰もが一度は訪れる高松島食堂があるのよ。ここは、洋食から中華やフランス料理もあるの。それから、人気なのは御寿司ね。品質の割には値段が安いって評判よ』
「ウチらも、お昼はここで食べへん? ね、いいでしょ?」
『もちろんよ、ここまで来て、食堂へ行かないなんて、どうかしてるわ!……それから、絶対に行きたい場所がもう1つあるの』
「え? どこなの? 確か3階建てやった筈よね。もう行くとこ、あらへんのやない?」
『ところが、ここ高松島ドームには、屋上があるのよ。もちろん、ドームの中に納まってるから、宇宙服とか着なくても大丈夫よ。屋上はね遊園地になってるの。コーヒーカップ、メリーゴーランド、小型モノレールなど、いっぱい乗り物があるわ。後は、広い場所を生かして人工芝のパットゴルフ場もあるのよ』
「なに~? この屋上だけで、1日過ごせるやん!……あ! だからここがデートスポットになってるのか!」
『忘れちゃならないのが、屋上でしか味わえない極上濃厚バニラソフトクリームよ。スリルある乗り物の後に、ベンチに座って食べるソフトクリームの美味しいことと言ったら……』
「うわあーーーー、早よ、屋上へ行きまひょ! ラビちゃん、まず、屋上よね!」
『ワタチは…………いいんだけど……カグちゃん、目的は何だったかしら……?』
「うっ、……そっか……探さなあかんやった……」
ウチは、すっごく美味しいご馳走を目の前に置かれているのに、お預けをされたワンちゃんのように、舌が乾いて来てしもたんや。
仕方なしに、ウチらは入り口から入り、建物の中を探すことにことにしたの。ところが、1分もしないうちに、ウチらはターゲットを発見してしもうたの。なんと、新畑社長はんは、入り口のすぐのところにある女性用化粧品売り場で、何かを見ながらただ突っ立ていたの。
「社長はん、何見てはんのやろう? まさか、自分で化粧品使うわけあらへんやろな?」
(つづく)
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