41 第6章第2話 秘密の会話
「ねえ、ラビちゃん……」
ウチは、そうラビちゃんに話し掛けながら、両手で抱きかかえて、しみじみと顔を見つめたんや。
「ん? 何やこれ?」
ウチは、ラビちゃんの首輪に小さなポケットが付いているのを見つけた。そこには、小さく折りたたまれたお手紙が入っていたんや。
広げて見ると、それはお父様からのお手紙やったんや。短いけど、丁寧に書かれた文字は、まさしくお父様の文字やったわ。ウチは、慌てて目を通したんや。
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伽供夜へ。お前が居なくなってから、ラビの元気が無くなっての。社長に迎えに来てもらったんだ。ラビの面倒を頼むな。……それから……わしも寂しいなあ~ (王様より)
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あれ? やっぱりお父様、新畑社長はんと知り合いなんやね。……もう、お父様ったら、寂しいやなんて。探偵の仕事もようやく面白くなってきたんや。早う、一人前になれるように頑張るわ。そして、一人前になったら、あの月の世界に帰りますさかい、もう少し我慢しとくれやす。
やっぱりラビちゃんは、ウチがおらへんと寂しかったんやね。うーん、もう、ラビちゃんがお話しできれば、ウチも気持ちが伝えやすいのになあ~。
それに、社長はんが、ウチの月に迎えに行きはったなんて。ラビちゃんが喋れれば、社長はんの様子も、もっとよく分かるのに…………残念やわ。
「え? 何? どないしたん、ラビちゃん?」
ウチが、ベッドの上で、ラビちゃんの頭を撫でていると、ラビちゃんがもぞもぞと動き出し、ウチの手提げバッグの方に移動して行ったんや。そして、ラビちゃんの小さい手……ううん、前足ね……で、ウチのバッグをポンポンと叩いとるんや。
「何? バッグがどうしたんや?」
しばらく、その様子を見ていたら、ウチは『シャトル・シロ』を降りる時に、水野博士に呼び止めれられて渡された物を思い出したんや。みんなが居なくなったシャトルの中で、小さな四角い箱を渡されたんよ。
そして、その時は何の説明も無く、『自分の部屋に戻って、誰も居なくなってから開けなさい』とだけ言われたんや。
ウチは、ラビちゃんと早う遊びたくて、博士はんにもらった箱はすぐにバックに入れたんやけど、すっかり忘れとったわ。
「分かったわ、ラビちゃん。あれを出してみればええのね」
ウチは、すぐにバックに手を伸ばして、中から四角い箱を取り出したの。開けてみると、中には『可愛い首輪』と『ワイヤレスイヤホン』と『小さな手紙』が入っていたんや。
あ! また、お手紙ね。お父様といい、博士といい、あの年代の人は、お手紙が好きなのよね~。ウチは、小さく畳まれた博士からのお手紙を広げて見たんや。
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伽供夜ちゃんへ、これはラビちゃんとお話できる発明だよ。きっと必要になるはずだから、渡しておくね。ただし、他の人には内緒だよ。面倒くさいことになるからね。(博より)
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うっわー! やったー! やっぱり博士はんは凄いやー。ウチは、さっそくラビちゃんの首輪を取り換えたの。博士からもらった首輪は、ピンクできれいな花の模様がたくさん入っているわ。
「どうや? ラビちゃん、気に入ったか?」
ラビちゃんも嬉しそうにしてるわ。
今度は、ウチね。ウチは、片方の耳に小さなワイヤレスイヤホンを指したの。すると、イヤホンから、雑音のない可愛い音が聞こえたんや。
『ホントにもー、ねえ、カグちゃん、どこ行ってたの? どこにもカグちゃんが居なくて、ワタチ、めっちゃ寂しかったんだから!』
「え? 今のラビちゃん?」
『何、言っての! これで、ワタチもカグちゃんとおしゃべりできるのよ! 今度は、ワタチの話も聞いてよね!』
「う、うん……分かった……ほわーー~」
ラビちゃん、しゃべり方もなんて可愛いのかしら……おしゃまな小さい女の子みたいね!
(つづく)
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