40 第6章第1話 ウチのなかよし!
====登場人物====
新畑 懐……社長
風見 香子……情報課長(酔うと寝る)
頑貝 徹……営業課長
後藤 記誌瑠……総務・経理課長
水野 博……研究開発課長〔博士〕(タイムトラベラー)
小野宮 伽供夜……アルバイト〔営業課〕(かぐや姫)
ラビちゃん……ウサギ(かぐやのペット)
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「ラビちゃ~ん、うふん~。会いたかったですえ~」
「キューーン……キュン、キュン」
「そうか、そうか、ラビちゃんも会いたかったんですなあ~」
今、ウチの部屋でラビちゃんとおるんや。
もう、会えへんのやないかと思ってたラビちゃん。とっても嬉しゅうて、ずーーーっと、ラビちゃんを抱き締めながら可愛がってるんや。
今日は、『花咲かじいさん』のミッションが終わって帰って来たばかり。今までなら、ミッションの疲れもあり、香子はんとすぐ銭湯に出掛けてたんや。でも、今回は違うねん。ウチは、ラビちゃんと遊びたくて、すぐに自分の部屋に籠ってしもうたんや。
もちろん香子はんには、ちゃんと説明して出かけるのを断ったんやけど。香子はんは、少し残念がっとったわな。「ラビちゃんと仲良くね」って、笑顔でいってくれはったやわ。
ウチは、こっちの世界でも仲間に恵まれてるなあって、しみじみ思うたんや。
ウチはラビちゃんと遊び続けていたんや。香子はんが、銭湯から帰ってきた時も、ウチはラビちゃんから離れられへんくて、まともに「お帰りなさい」も言えへんかったわ。
香子はんは、銭湯の後、いつもやったらウチとお酒も飲みに行くんやけど、今日は一人やさかいすぐに帰ってきたんやね。
何だか悪いことしたなあ。今度は、ちゃんとお酒にも付き合わなあきまへんな。
その後も、ウチは夜中までラビちゃんと遊んでたんや。それだけ、ウチはラビちゃんのことが大好きやったんや。
ラビちゃんは、ウチが生活していた月の野生生物なの。月には、たくさんのウサギがおるけど、人間にはあまり懐かんもんな。
ところが、ある日、お父様がね……あ、月の世界の王様ね……一羽のウサギをウチに預けてくれはったの。ウチは、『ラビ』という名前を付けて、とっても可愛がったんや。幸い、ラビちゃんも最初からウチに懐いてくれて、嬉しかったのを覚えているわ。
それからしばらくたって、ウチはお父様に聞いてみたんや。
「なんで急にウサギを預けてくれはったん?」
そしたら、お父様は、ちょっと困った顔をしながら、恥ずかしそうに教えてくれはったんや。
「だってお前、最近浮かない顔をしていることが多いんだ。この前も、何時間も黙って地球を眺めてたじゃないか。お父さんは、とっても心配したんだよ」
そうやったんか。ウチが、月の生活に飽きてしもうて、家出を考えてた時やったさかい、少しドキドキしてしもうたんや。それに、お父様はウチに期待もしてはったみたいやったんや。
「お前には、元気に何にでも挑戦して欲しいんだ。ゆくゆくは、この月のプリンセスとして、宇宙の平和のために頑張って欲しいからな。あんな無気力な顔で、ボーっとしているところを見ると、心配でな」
え? ウチ、そんなに心配かけてたんや? でも、何やろな宇宙の平和って。ゆくゆくか……ま、その時頑張ればええかな?
とりあえず、ウチはラビちゃんに巡り会うて、月の生活にも少しは張り合いが出たさかい、我慢したんやけど。……でも、またすぐに飽きてしもうて、地球に家出してしもうたんよね。
あー、そっか、今思い返すと、お父様って、ウチが無気力なのを心配してはったんやね。だから、何かに打ち込んだり、挑戦したりすることには、賛成だったんだ。むしろ、そんな事を望んでいたんやね。
だから、この世界の『異次元探偵社』で働きたいというウチの願いも聞き入れられたのかな?
ん? ひょっとして、新畑社長ってウチのお父様と知り合いなんやろか? あの時も、社長はんが確認して了解もろうたとか言ってはったような気がするわ。お父様に了解もろたんやろか?
それに、今回のラビちゃんだって、どうして社長はんが一緒に居たんやろか……何だか、社長はんって謎が多いんやわ。
「ねえ、ラビちゃん……」
ウチは、そうラビちゃんに話し掛けながら、両手で抱きかかえて、しみじみと顔を見つめたんや。
(つづく)
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