表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/300

39 第5章第12話 ミッションクリア

「どうしたの? かぐやちゃん」

香子(かおるこ)はん~……グスッ……グスッ……あああ~ん~」

「え? 何泣いてんのよ~……うーん、ヨーシヨシヨシヨシ……」


 あれ? 今度はウチが、香子はんにヨシヨシされとるわー。


「ふん、どうせお前、あのシロっていう犬と別れられないとか言うんだろ?」

頑貝(かたがい)はん……よう、分かりますなあ……グスン」


「だってよ、お前のあの可愛がり方は普通じゃなかったぜ!」

「そうね、確かにシロは可愛かったけど、あいつ意外と人間に対して厳しいのよね」


「ま、それはあのシロの身の上を分かってしまえば、仕方のないことなんじゃないのかのお」

「うん……博士はん~……。ウチな、あのシロを見とったらな、思い出すねん」


「おや? 伽供夜(かぐや)ちゃんは、シロに似た動物でも飼っておったのか?」

「そうや、ペットやあらへんで、ラビちゃんはな、ウチの大切な友達やったんや!」



「「「「 ラビちゃん? 」」」」



「そうや、ウサギのラビちゃんや! ウチの暮らした月ではな、子供がおらへんのよ。それで、ウチはラビちゃんとばかり遊んどったんや……でも、そんな生活が詰まらんようになってな。それで地球に家出してしもうたんよ」


「なんだ伽供夜、それなら今は自分の好きな事やってんだし、周りには話し相手もいるから平気なんじゃないのか?」


「うん……それがな……最初は良かったんや。正直、ウチな、最初はラビちゃんのこと忘れとったんや。でもな、今回シロはんを見た途端、どうしてもラビちゃんに会いたなってな……」


 なんや、だんだんウチ、元気が無くなって来てしもうたわ。もうミッションは終わったし、これから『シャトル・シロ』で帰還なんやけど…………あ! シャトルを見たらまたシロはんを思い出すやんか。



「まあ、いいや。伽供夜は、出来るだけ楽しいことを考えてしばらく大人しくしてるんだな」

「……そうするわ……」



「あ、また、伽供夜さん泣き出したわよ。ダメじゃないの頑貝君。楽しいことって、今の伽供夜さんにとって楽しいことって、ラビちゃんのことなんだから。ホントに、気が利かないわね」

「ええ? 記誌瑠(きしる)まで、俺を責めるの?」


「もう、いいから(とおる)、早くシャトルを出して!」

「はい、はい、香子さま!……また、俺、怒られちゃったよ」


「あ! ちょっと頑貝ちゃん待ってくれる。……記誌瑠ちゃん、最終確認お願いしていいかな? ちゃんと『花咲かじいさん』になったか確認してから帰るとしような」



「あ、はい、水野博士。…………えっと、私は、歴史記録全集の『花咲かじいさん』のページ……ページっと。あ、奇麗な桜の花の下で、おじいさんとおばあさんと、それに犬のシロが、元気に走り回っている挿絵が描いてあるわ。大丈夫みたいね……文章の方は……」

 ~~~~

『……おじいさんは、臼を燃やしてできた灰を枯れ木に撒いて、とてもきれいな花を咲かせることができました。そんなおじいさんを見た村の人達は、みんな嬉しそうに……花咲かじいさん……と呼んでいましたとさ。めでたしめでたし』

 ~~~~


「博士、大丈夫みたいですね」

「よし、これでミッション完了じゃ。後は、頑貝ちゃん、頼んだよ!」



「了解、博士! ……シャトル・シロ……発進!……目標、異次元探偵社! 出発!!」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「よし、到着だ! 全員これで任務完了だ。お疲れ様! 後はもう自宅に帰っていいよ。社長には、ワシから報告しておくからな」


 博士はんは、気を利かせてウチらを解放してくれたんや。今回は、ちょっと長期戦になってみんなも疲れてると思うわ。ウチは、シロはんのこと忘れることができるやろかなあ?





 キュン、キュン、キューーーーン!





 あや? 何か聞こえるんやない! ここは、異次元シャトルの倉庫なのに。動物なんかはおらんはずや?





 キュン、キュン、キューーーーン!


「あれ! ラビちゃん?……ラビちゃんちゃうんか?」


 ウチ、夢でもみてるんか? ホンマにラビちゃんや! ウチは、夢中で走ったんや!




 キュン、キュン、キューーーーン!


「みんな、お帰り~」


「あ、社長、ただいま戻りましたよ」

「お疲れだったね、水野博士。よくやってくれたよ」

「いいえ、いいえ。みんなが、頑張ってくれたんですよ」




「しゃちょーーーうはーーーん! どうして? どうして、ラビちゃんを!」



 ラビちゃんは、社長はんに抱かれとったんや。ウチは、嬉しくて社長はんごとラビちゃんに抱き着いてしもうたんや。



「お! やあ、伽供夜君。ようやく帰って来てくれたね。この子がね、僕の言うことを聞いてくれなくて困っていたんだよ。……早く、君が預かってくれないかなあ~」


「フヘェ、ヒャイ……ありがとうございミャ――ス! グスッ……ズズズ……フェエエェエ~」


「おいおい、伽供夜君、泣かなくていいからね。これから、この子とは一緒だからね。……あ、香子君、この子もよろしくね」


「は、はー…………」



 社長はんは、ウチにラビちゃんを渡すと、軽くウィンクしてから何事もなかったようにいなくなったんや。

 とにかく、ウチは、嬉しくてラビちゃんを抱きしめたまま、急いで家に帰ったんや。




(第5章 完 ・ 物語はつづく)


 最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人が飼っている動物見ると、自分もペット恋しくなるというもの…シロは良い子でしたからねぇ ラビちゃんは可哀想に長い事忘れられてたみたいですけど、 飼い主に再開できて良かったですね… 花咲か爺さん編、お疲…
シロちゃん付いて来たのかと思ったら、ラビちゃん登場ですね〜。 かぐやちゃんもこれで寂しくない! いい感じにまとまって、次から新しい展開なのが楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ