表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/300

37 第5章第10話 思わぬ誤算

 花田のおじいはんは、まもなく臼を完成させたんやわ。さっすがお伽噺やね。特にスキル持ちでもないおじいはんが、自前で臼を作っちゃうんやから。


 まあ、ほんの少しの間やったけど、ウチがシロはんと戯れる時間は十分にあったんや。ウチは十分満足したんや。




 いよいよ今日が、餅つきやね。完成した臼を前に、おじいはんとおばあはんが、準備を始めたんや。


「じゃあ、ばあさん、行くぞ!」

「はいよ、合い取りはまかせてね!」


「ソーレ……」 バン!

「ウンショ……」


「ソーレ……」 ドン!

「ウンショ……」


「ソーレ……」 ガシャ!

「ウンショ……」


「ソーレ……」 ガチャ!


「おじいさん、おじいいさん……ちょっと待っておくれ……臼の中が、宝物でいっぱいになったよ!」

「ええ?……また、宝物かい?……せっかく餅が食べれると思ったのにのう~」

「いいじゃ、ありませんか。このお宝で、美味しいアンコ餅を買いましょうよ!」


「そうだのお~あははははあ…………」




 やっぱり、臼から宝物が出たんや。予定通りやね! さ、これからが、ウチらの出番やね。



「さあ、徹! また隣のイジワル(とおる)じいさん登場ヨ!」

「へいへい、行って来ますよ……」







 今度は、あの臼を借りて来るんやね。頑貝(かたがい)はん、いそいそと花咲家を訪問したわ。


「ううっん!……あ、あ、……おっほん、花田のじいさんは、いるかのお?」

「はい、ちょっとお待ちください……順番に対応しますから、しばらくお待ちくださいな」


「何?……順番とは?」




「はい、次の方どうぞ~」


「え? あ、はい……」

「いらっしゃいませ。ご用件は、臼の貸し出しでよろしいでしょうか?」

「は、はい……臼を貸してください……って、え? どうなってんの? なんで、花田のじいさん臼の貸し出しを商売にしてるの?」



 うっひょー、何や、花咲家に長蛇の列ができてるわ。次から次へとお客さんが来てるやん。みんなあの臼を借りてるんやね。


「え? 臼って、一つじゃないのか?」

「ああ、あの木ね、とっても太くて背丈も高かったんですよ。それで、ばあさんとも相談して、あの木で作れるだけ臼を作ったんです。そしたら、なんと500個以上も臼が出来ちゃいましてね。ましてや、あの臼で餅を搗くと宝物が出るじゃないですか! 借りたいという人が後を絶たないもので、臼の貸し出し屋を始めることにしたんですよ!」



「臼の貸し出し屋だって? そりゃあ、大変だ~!」

「あ、ああ、お客さ~ん…………」



 隣のイジワル頑貝じいはんは、慌てて花咲家からすっ飛んで帰ってきたんや。こんな、予想もしなかった状況になって、これは緊急会議やね。

 シャトルの会議室にみんなで集合したんや。


 あ、もちろんウチは、シロはんも連れて来たんや。



「なあ、どうすんだよ。あんなに臼がいっぱいあったら、困るんじゃないのか?」

「そうね、あれじゃ徹だけで、うまく処理するのは難しいわね」


「ほーら見ろ、香子の計画なんか上手くいくはず無いんだから!」

「煩いわね、これからどうするか考えればいいでしょ!」


「まったく、博士があんなに大きな木になるような成長促進剤を作るからだよ」

「あははは……すまんのう。あのおじいさんが、あんなにたくさんの臼を作るなんて思わんじゃろが、普通……」



「みなさん、それよりも恐ろしいことが起きるわ……」

記誌瑠(きしる)ちゃん、いったい何が起きるというんだい?」

「それは、花咲家以外の人があの臼を使うと、全部ゴミが出るということよ!」

「あ! そっか……」



『フン、欲深いことしたらあかんねん。宝物なんか、簡単に見つけたらあかんのや。だから、俺はおじいさんらに宝物の在りかを教えへんかったんや! どうするんや、お前ら?』



 シロはんに痛いところを突かれたような感じになって、ウチらはみんな黙ってしまったんや。せやけど、しばらくして考えてウチは宣言したんや。



「大丈夫や、シロはん。ウチらがちゃんとおじいはんを立派な『花咲かじいさん』にしてあげるわ。……博士はん、ここに大きな焼却炉を作ってもらえまへんか?」


「おー、そんなもんなら朝飯前じゃぞ!」


「ほな、ウチらは手分けして、花咲家が貸し出した臼をかき集めて、博士の焼却炉にぶち込みまひょ!」

「ま、仕方ないなあ。伽供夜の言う通りだ。ここは、人海戦術しかないな!」

「じゃあ、一つでも多くの臼を集めた物が、勝ってことにしましょうか?」


「お! よし、香子の案に乗った!……優勝は、俺がいただくぞ!」

「何、言っての。普段の鍛え方では、あたしだって負けないわよ!」


「ええ~? 私なんか自信ないわ~……あたしは計算機しか持ったこと無いのに!」

「大丈夫じゃ、記誌瑠ちゃん。あの臼は、ワシが成長させた木で作ったもんじゃ。だから、この探知機に反応するから、ある場所はバッチリ分かるんじゃ。それに、か弱い女の子にはこの重力調整シールをあげよう」


「博士、何、その重力調整シールって?」

「このシールを貼ると、その物体に掛かる重力を好きなように調整できるんだ。今回は、全てマイナス99%のシールを渡すぞ!」


「じゃあ、このシールを貼れば、臼を何個でも重ねて自由に持ち運びできるって訳なのね」

「そうじゃ、これで後藤ちゃんも百人力じゃ」


「よし、それじゃあみんな、急ぐわよ! 全員、位置に付いて、よーい、どーん!」




(つづく)



 最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そうか花田家限定で宝石が出る仕組みだったんですね 500個もの臼をクーリングオフとか大変そうだ… 誰に貸したか絶対忘れそう… っていうか木の規模が想像以上だったことに驚きでした 博士ぇ…有能過ぎや…
あーー確かに。木から作ったら大量に作れちゃいますよね。意外な盲点。 シロはめんこいですね〜! ツンツンしていた犬がデレると凄く可愛いですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ