32 第5章第5話 作戦実行
『ホンマにこんな作戦でうまくいくんか?』
やっぱりそう思うんやね。シロはんが、疑うのも無理はないと思うんやけど。
「ぜーったい大丈夫だって! すべてあたしに任せてね」
「そやね、香子はん! それでウチは何をしたらええんやろ?」
「決まってるわ、かぐやちゃんはシロちゃんのボディーガードよ。万が一にもシロちゃんに危害が加わらないようにしっかりお守りするのよ!」
「ほな、早速着替えてきますやん」
「え? ああ……、別に着替えなくても……。ま、いいっか! じゃ、作戦決行ヨ!」
「「「 おー! 」」」
みんはん、配置完了や。香子はんが、花咲家のおじいはんとおばあはんの様子を掴んで、決行場所を決めはったわ。
家からそんなに離れていない空き地の草原やね。
あそこへシロはんが、おじいはんを案内して宝物を掘らせればいいやんね。
「シロはん、頼んます。おじいはんを案内して来て、うまいこと宝物を見つけさせてや……ヨーシヨシヨシ、ええ子やー」
どや? この全身真っ黒の衣装。これはな、あの女忍者はんが着とった衣装や。ウチは、くノ一やし。「よーし、よしよし……」
『な? あ? う! それ、やめろってー。ええ加減にしてくれや。苦しいんやで!』
「え? シロはん嬉しくないん? テレビではみんな嬉しそうに舌出して喜んではったのに……。なあ、ええやんか、シロはん! ウチは、あんたのボディーガードやさかい。ほーら、ヨシヨシヨシ……ううんんっ! ぶちゅっ!」
『わっ、お前、何しとんねん! 吸いつくんやないわい、やめろや!』
「えーー? ええやんか、これから大事なお仕事なんよ。その前に、気合入れなあかんわ! ううん、ぶちゅっ! ヨシヨシヨシヨシ、ヨーシヨーシ……」
『ああ、わかった、わかったから、その【ヨシヨシ】だけは許したるけど、吸い付くんやめろや! なんか生きる気力まで吸われる気がするわ!』
「うーん、残念やけど仕方ないな。……ほな……ヨーシヨーシ、ヨシヨシヨシ……頑張ってや」
別にいいやんかな、減るもんやないし。この後、ウチは大きな木の陰に隠れてシロはんを見守ったんや。敵が現れたら、いつでも助けに行けるように準備しとかんとな。
って、敵なんておらんかもしれんけど、くノ一は万が一にも備えるんが基本なんや!
あ、シロはんが、おじいはんを連れて来たわ!
『ワンワンワン……ココホレワンワン……ココホレワンワン……ワンワン』
「お? どうしたシロ? ん? そっか、ここを掘ってほしいのか? じゃあ、シロの言うことだからちゃんと聞いてやらんといけないからのー…………おや、困ったの~、何も掘る道具がないわ」
シロはんが掘れって言ったんは、草原に生えている大きな木の根元なんや。あんだけ大きな木やと、絶対根元には何かが埋まってるんは間違いないんや。
おじいはんが、キョロキョロして何か探してるみたいや。あ、ここで風見はんが登場やね。村人Aやわ。
「おや、おじいさん、何か探しているのですか?」
「ああ、ちょっとシロがここを掘って欲しいらしいんだけど、掘る道具がなくてな~」
「それならこれを使ってくださいな。この金のシャベルをあなたにあげますから大切に使ってくださいな」
「おお、ありがとうございます。でも、ワシが使いたいのは木のシャベルなんだがのう」
「わかりましたわ。それじゃあ、この木のシャベルを使ってくださいな」
なんや、香子はん、違うお伽噺になっとらんか? シャベルなんか、何でもええやん。
ホンマに香子はんったら、あちこちからすぐ出てくる女神様みたいなこと言ってるけど、どう見ても冴えない村人Aなんやねん。ウチの持ってる女神の衣装を貸せば良かったかな?
ま、せやけど、おじいはん、香子はんから受け取った木のシャベルで土を掘り出したんやわ。
カッキーン! ガシャ、ガシャ……
「うわあーーー、凄いぞ、シロ! 宝物がたくさん出てきたぞ!」
ワンワンワン……ワンワンワン……
「そーか、そーか、シロも喜んでくれるかー。早く持って帰って、ばあさんにも見せるとしようかの~」
よっしゃー、これで上手くいったんや。後、シロはんをいっぱい褒めてやらんといかんな。
「よしよし、これで第一段階は上手くいったわ……徹! 次はあなたの出番よ!」
「ふふふ、よーし、ようやく俺の活躍する場面だな!」
「何言っての、徹が活躍しちゃダメなの! 活躍しないようにちゃんとやるのよ!」
「はいはい、分かってますよ、香子」
「それより、変装は大丈夫なの? あくまでも隣のおじいさんなんだからね!」
「はいはい、大丈夫だよ。ほら、これでおじいさんに見えるだろ?」
さ、ここからが大事なところやね。イジワルな隣のおじいはんが登場なんやけど、それを本物じゃなくて頑貝はんにやらせようっていうんだから、香子はん、冴えてるやん。
頑貝はんのイジワルじいはん、花咲家に近づいて行きよったわ!
「ごめんくださいな。花田のじいさんはいるかの~」
「ああ、お隣のおじいさん、何か用かのう?」
「おめえさん、すごい宝物を見つけたそうじゃないか?」
「おお、よく分かったの~まあ、偶然なんだと思うけどなあ~」
「なあ~花田のじいさんよ~。ワシもお宝が欲しいんじゃ、どうじゃ、それをワシに貸してくれんかの~」
「ああ、これか?……これさえあれば、宝物を見つけることができるかもしれんしの~」
頑貝はんめ、よくもシロはんを……ってあれ? あ、そっか、シロはんを借りるんやなくて、あの木のシャベルをかりるんやったね。ウチ、あやうく頑貝はんを手裏剣で狙うとこやったわ。そういえば、さっき打合せしたんやったわ。うっかりや!
それにしても、花咲家のおじいはんは本当にいい人やね。すぐに貸しちゃったやん。
(つづく)
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