31 第5章第4話 シロの本音
『まったく、何しとんねん! ワイは、束縛されんのが大嫌いやねん! 早う解放せんかい、オンどりゃ!』
「「「「……え?……」」」」
ウチもびっくりしたんやけど、みんなもとんでもなく驚いたみたいや。
「は、はい、ごめんなさい……」
ウチは、目が点になってしもうて、とっさにシロはんから手を離して謝ってしもうたわ。
『せっかく、昼寝しとったのに、お前何しとんねん。ワイを誘拐してどうするつもりやったんや?』
ウチが誘拐犯やて! ウチは刑事のつもりやったんやけど……。
「す、すんません。ウチ、ちょっと聞きたいことがあっただけなんです」
『ふん! それならそう言うて、誘拐なんかせんと、聞いてくれたらええんや』
なんや、シロはんって、ちょっと怖そうなんやけど、話せば分かる犬みたいねやね。言葉が分かるようになったんやから、ちゃんと話せばいいんやわ。
「あ、あのー、ほんまにシロはんて、宝物のありかがわかるんか?」
『なんや、そんなことか。……もちろん、ワイはどこにどんな物が埋まってるか知っとるんや。宝物だけやのうて、ゴミが埋まってるんも分かるんやで』
「じゃあ、やっぱりお前は、イジワルして花咲家のじいさんに宝物の埋まってるとこを教えてないんだな!」
うっわ、頑貝はん、シロはんに喧嘩売ってるわ!
『なにおー! いつワイがイジワルしたって言うねん。ワイは、花咲家のおじいさんとおばあさんにはめっちゃ世話になっとるんや。イジワルなんかする訳ないやろ!』
「だってよ、お前が【ここ掘れ、ワンワン】って言って、宝物を見つけさせないから、いつまでたっても、【花咲かじいさん】に成れないじゃないか!」
『そんなこと、ワイが知るかい。ワイは、ただ花咲家のみんなといつまでも幸せに暮らしたいだけやねん!』
「ちぇっ、何て平凡な野郎なんだ、お前はよ~。一発、宝物でも見つけて、大金持ちになりたくないのか?」
うーん、何や頑貝はんが、イジワルじいはんに見えて来よったで。シロはんは、何でもない普通の生活がしたいだけなんやわ。
「そうか、そうか。シロちゃんの言う事は、よっく分かったぞ。そうだよな~もし宝物なんか見つけたら、隣のイジワルじいさんに見つかって殺されちゃうんだもんな。今のままなら、イジワルな隣のじいさんも存在しないから、このまま幸せに暮らせるし……ただな、このままだと『花咲かじいさん』も存在しないから、いつかシロも花咲家もお話の世界に存在しなくなってしまうんだ」
「水野博士はん、それじゃあどっちみちシロはん達は、死んでしまうのと同じじゃないやろか?」
「困ったのー。何かいい方法は無いのかのー」
みんなは、頭を抱えて考え込んでしまったやないの。
「そっか! シロちゃんが死ななきゃいいのよね! あたしにいい考えがあるわ」
しばらくして、急に香子はんが、大きな声で叫んだんや。
「本当か? また、香子のとんでもない作戦なんじゃないのか?」
「ウッサイわね、徹は。あんたにもいい役をあげるから頑張ってもらうわよ……。じゃあ、作戦会議を開くわね」
何や香子はんは思いついたみたいやわ。シロはんに言葉が通じるようになったから、シロはんも入れてのミッションになったんやけど。本当に上手くいくんやろか?
(つづく)
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